ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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164部分:聖斧その二
聖斧その二
「どうする?ここは退くか?」
ブリアンが硬質の低い声でムーサに対し問うた。ムーサは何やら考え込んでいたがやがて口を開いた。
「ここで退いても兵達の離反を招くだけだ。戦おう」
「やはりな」
微かに笑ったように見えた。だがそれは一瞬であった。
「だがどうする?兵力は敵軍が優勢、そのうえ既に布陣し終えているぞ」
「ならば一気に中央突破を図るか・・・・・・」
ブリアンはその言葉にスワンチカを握り締めた。突撃を仕掛けるならば自分が先陣を務めるつもりであった。その時だった。
解放軍の方から四騎かけてきた。そして自軍と帝国軍の中間で馬を止めた。
「帝国軍の騎士達よ、我が名はグレイド。さあ参られい!」
四騎のなかで最も年配の騎士が名乗った。
「解放軍の聖騎士カリオン、貴殿等に一騎打ちを申し込む!」
若い茶の髪の騎士が言った。
「同じく槍騎士ケイン、夜の国へ旅立たんとする者は来い!」
槍を手にする若い騎士が叫ぶ。
「今叫んだ奴の連れでアルバってんだ。まあよろしく頼むな」
青い髪の騎士が飄々とした感じで言った。四人共相当な手練であることが彼等が発している気からもわかる。だがそれにも関わらず帝国軍から四人の騎士が出て来た。
「シレジア近衛隊ピツァロ、参る!」
「同じくフォスカリ、行くぞ!」
「シレジア突撃隊バンクォー、その申し入れ謹んでお受けいたそう!」
「シレジア第一軍団イズマイーレ、かかって参られい!」
帝国軍の方から四騎の騎士が馬を駆って出て来た。ピツァロがグレイドに、フォスカリがカリオンに、バンクォーがケインに、イズマイーレがアルバにそれぞれ向かって行く。
「大丈夫か?相手はどれも大陸に知られる騎士、容易な相手ではないぞ」
ブリアンは斬り結ぶ八騎の男達に目をやりながらムーサに言った。ムーサはそれに対して冷静に言った。
「心配御無用、あの者達は我が軍の仲でも指折りの強者だ」
そう言い終わった時だった。帝国軍の四騎士は解放軍の騎士達の槍に胸を貫かれ地に倒れた。地響きのような勝ち鬨が解放軍のほうからあがった。
「くっ、あの四人をああも簡単に倒してしまうとは・・・・・・」
呻く間も無く解放軍から二騎出て来た。一人は剣を手にした金髪の若者でもう一人は剣の若者より年長の斧騎士であった。
「あれは・・・・・・フェルグスとブライトンか。先の四人と同じく手強いぞ。どうする?」
「答えは決まっている。行けっ、ガルベス、マルティネス!」
「はっ!」
ムーサが名を呼ぶと同時に彼の後ろから二人の騎士が飛び出て来た。ガルベスは剣を抜きフェルグスと、マルティネスは斧を振りかざしブライトンと斬り合った。だが数合程で二人共斬り倒されてしまった。
「どうする?敵は完全に勢い付いてしまったぞ」
ブリアンはまたもや歓声あがる敵軍を斜めに見ながらムーサに言った。
ムーサも流石に狼狽を隠せない。細い目は充血し顔は蒼白となっている。額を汗が伝った。
「・・・・・・わかっている。次は私が行こう。その間の指揮を頼む」
「わかった」
ムーサは馬を駆り前に出て行った。ブリアンはムーサの後ろ姿を見て何か思ったようだが口には出さなかった。
「我が名はムーサ、私と剣を交えんとする者は前に出られよ!」
名乗りをあげた。解放軍から一人の騎士が出て来た。
「我が名はコノモール、受けて立とう!」
二騎は互いに答礼すると剣を交えた。
先の闘いとは違い激しい撃ち合いとなった。コノモールの熟練の剣技に対してムーサは剣に風の魔法を織り交ぜて対抗した。
鎌ィ足が飛び剣が銀の光を放ち一騎打ちは続く。剣を斜めに振り下ろしたコノモールの態勢がわずかに崩れた。ムーサはそれを好機、と見た。
(今だ!)
右手に持つ剣を放り捨てた。そして右手をそのまま下から上へ振り上げようとした。
それを見たコノモールは咄嗟に左手に持つ手綱を左に引いた。馬が跳んだ。
馬のすぐ脇を竜巻が突き抜けていった。コノモールは瞬時に手綱を引き戻した。そして剣を横薙ぎに払った。
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