提督はBarにいる。
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目出度い鯛でお祝いを・2
お次は真鯛じゃなく金目鯛と行こう。真鯛よりも脂のノリが良い金目鯛は、12~2月の真冬が旬だ。既に2月の今頃じゃあちと時期から外れかけてるが、それでもまだ他の時期に比べれば味はいい。刺身や薄造りにしてしゃぶしゃぶ……なんてのもいいが、何と言っても煮付けやソテーといった熱を加えた物が最高だ。今回はちょっと風変わりな煮付けを作ってみるとしよう。
《おろしでサッパリ!金目鯛のみぞれ煮》※分量2人前
・金目鯛:2切れ(200g)
・生姜(薄切り):2枚(10g)
・酒:大さじ3
・醤油:大さじ1
・砂糖:小さじ2
・水:200cc
・昆布茶:小さじ1/3
・大根おろし:150g
さて、作っていこう。大根おろしはそのままだと水っぽいのでザルにあけて水気を切っておく。鍋に酒、醤油、砂糖、生姜の薄切りを入れて火にかける。沸騰したら水、昆布茶を加えて再び一煮立ちさせて煮汁を作る。
煮汁が出来たら金目鯛を入れ、落し蓋をして10~12分煮る。仕上げに水気を切った大根おろしを加えて、もう一煮立ちさせたら生姜を取り除き、器に盛り付ければ完成だ。
「はいよ、お次は金目鯛。『金目鯛のみぞれ煮』だよ。身も美味いが、脂の溶け出した煮汁も最高だぞ?」
そう言って皿に盛り付けた煮付けにレンゲも付けてやる。流石に皿に口を付けて啜れってのは、不恰好過ぎるからな。大根おろしの酵素の働きもあって、ホロホロに煮込まれた金目鯛の身と、脂と出汁を吸った大根おろしの相性たるや、長年連れ添った夫婦の様に絶妙だ。それを綺麗に洗い流す、端正なキレが売りの『浦霞』……最高のマッチングだ。
「金目鯛のみぞれ煮とは初めて食したが……流石じゃのぅ提督」
「とっても美味しいです!」
2人とも美味そうに食うもんだ。美味い物ってのは、食っても幸せだがそれを眺めてるだけでも幸せを分けてくれるモンだからな。おっと、そんな姿に見とれて無いで、お次のメニューを仕込みましょう。
《2種のソースで食べる!鯛の唐揚げ》
・真鯛(皮付き):半身
・塩コショウ:少々
・片栗粉:適量
・薄力粉:適量
※薄力粉と片栗粉は同量
(醤油マスタードソース)
・醤油:小さじ2/3
・粒マスタード:小さじ1
・サラダ油:小さじ2/3
・オリーブオイル:小さじ2/3
(中華風黒酢ソース)
・長ネギ:1/4本
・生姜:1片
・パセリ:1枝
・陳皮(あれば):5g
・胡麻油:小さじ1/2
・塩コショウ:適量
・オイスターソース:大さじ1
・中国醤油(無ければ普通のでOK):小さじ2
・黒酢:大さじ1
・砂糖:大さじ1
・紹興酒(あれば):大さじ1
・日本酒:大さじ1
※紹興酒が無い場合は日本酒を大さじ2に!
さぁて、作っていこう。まずは鯛の下拵え。鱗を取って3枚に捌いた鯛の半身を、一口大の大きさにカット。キッチンペーパー等で水気を取っておく。塩コショウで味を付け、薄力粉と片栗粉を同量混ぜた衣をまぶす。鯛の味を殺したくないから、味付けと衣は薄目にな。
揚げる前に、今度はソースを作っておく。醤油マスタードソースは全ての材料を混ぜればOK、黒酢ソースの方は長ネギ、生姜、パセリ、陳皮を細かく刻んでフライパンで炒め、香りが立ってきたら塩コショウと胡麻油以外の調味料を入れて煮詰める。ソースにとろみが出てきたら、塩コショウで味を整え、胡麻油で風味を付ける。
後は衣をまぶした鯛の身を、180℃の油で揚げて油を気ったら盛り付け、ソースを添えれば出来上がりだ。
「はいよ、お次は揚げ物だ。『真鯛の唐揚げ』……一応味は付いてるが、こっちのタレを付けて食った方が美味いぜ」
「ほぅ、鯛の唐揚げとな?確か家康公が鯛の唐揚げを食べて亡くなったという話があったのぅ」
初春が無遠慮にそんな事を言うと、初霜が伸ばしていた箸を引っ込めた。
「……お前なぁ、今から食おうとしてる料理が食べにくくなるような話をするかね?普通」
「安心せい、初霜や。提督の腕前ならば食中毒等無縁であろう……うむ、美味い」
悪戯っぽく笑った初春は、唐揚げを一切れ摘まんで黒酢ソースにとぷりと付けて、口に放り込んだ。その姿を見て安心したのか、初霜もマスタード醤油にちょいと付けてサクリとかじる。
「大体、徳川家康の死因は今じゃあ胃ガンってのが定説だっつの」
「そうなのかや?」
「おうよ。大体、食中りになって3ヶ月も経ってからくたばるかっての。くたばるなら食ってから数時間から半日……もっても2、3日がいいとこだろうな」
まぁ、実は関ヶ原で本物の家康は死んでる、なんて話もあるんだけどな。そんな雑学もいいが、そろそろお次の料理に取り掛かろうか。
《ご飯ツヤツヤ!金目鯛めし》
・金目鯛:200g
・ごぼう:50g(1/3本くらい)
・油揚げ:1枚
・生姜:30g(1/2片くらい)
・酒:大さじ1
・塩:小さじ1
・昆布だし:200cc
・薄口醤油:大さじ1
・みりん:大さじ1
・米:3合
・水:適量
・三つ葉:お好みで
真鯛を1匹炊き込んだ鯛めしは、見た目も豪華だしいかにもご馳走ってメニューだ。だが、俺個人としては金目鯛の炊き込みご飯……金目鯛めしをオススメしたいね。脂の旨味がご飯に染みて、最高なんだなぁコレが。てなワケで作っていこう。
金目鯛は鱗を落として三枚下ろしにした物を使用。ごぼうはささがきにして水にさらして灰汁抜き、油揚げは油抜きをしてから細かく刻んでおく。生姜は3枚程スライスしたら、残りはすりおろして絞り汁を作っておく。
メインの金目鯛は大きめの角切りにして酒と半分の塩を振って10分程置いて臭みを抜いておく。金目鯛の準備が出来たら、炊き込みご飯の具を作っていくぞ。鍋に昆布だし、醤油、みりん、塩、スライスした生姜を入れて、煮立ってきたらごぼう、油揚げ、金目鯛を入れて中火で2~3分程煮る。金目鯛の身が白っぽくなってきたら目安だな。
ボウルにザルを乗せて煮汁と具材に分ける。研いだ米と煮汁を炊飯器の釜にセットし、通常のご飯を炊く水加減で水を足して炊飯スタート。炊き上がり10分前になったら炊飯器の蓋を開け、具材を炊飯器の中に放り込んで蓋を閉める。炊き上がったら生姜の絞り汁を全体に振り掛け、茶碗によそって三つ葉をお好みで散らせば完成だ。
「はいよ、お次はご飯物だ……『特製金目鯛めし』。真鯛の鯛めしよりも脂がちとキツいが、味は保証する」
ふわりと香る生姜の匂いに釣られて、初霜がパクリ。その美味しさに顔を綻ばせ、クネクネと悶絶している。
「流石に気色が悪いぞ、初霜や」
「ご、ごめんなさい。あんまり美味しくってつい……」
「まぁまぁ、良いじゃねぇか。美味しく飯が食えるってのは、それだけで幸せなこった」
俺はそんなやり取りをしながら、グツグツと煮立つ鍋の様子を確認する。中身は鯛のアラ。頭やら骨がグツグツと煮込まれている。
「提督よ……もしやそれは、『アラ汁』かえ?」
「違ぇよ。こいつはあくまでも出汁だ……これで俺の賄い作ってんだよ」
「提督の賄い……興味あります!」
「やらんぞ?鯛ラーメンは俺も惜しい」
ラーメン、という言葉に過敏に反応する2人。美味い肴で酒を楽しみ、〆にラーメン。飲み方としては最高だろう。
「提督よ、貴様卑怯じゃぞ!何故妾達にもラーメンを出さん!?」
「バカ言え、コイツは俺だってまだ研究中のメニューなんだ。客に半端な物出せるかよ」
どうしても、と頼まれれば吝かでも無いのだが、そこは俺の拘りというかプライドが許さない部分だ。鯛ラーメンのレシピを教えろって?完成して、機会があったらその内にな。
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