真田十勇士
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巻ノ七十七 七将その一
巻ノ七十七 七将
前田家が家康につくのを身て多くの家が彼の下に集まる様になった、その中には伊達家や最上家といった権勢を持つ家もあった。
その流れを見てだ、幸村は都において十勇士達に話した。
「これは大きな流れじゃ」
「ですな、天下はです」
「徳川家に大きく流れています」
「前田家がついてから」
「それが顕著になっていますな」
「うむ、このままいくとな」
まさにとだ、幸村は十勇士達にさらに話した。
「天下はほぼ確実にじゃ」
「徳川家ですな」
「内府殿のものになりますな」
「そうなる、どうも奇麗な方法ばかりではないが」
家康の打つ手についてもだ、幸村は言った。
「的確にじゃ」
「はい、そうですな」
「内府殿は天下人になる手を打っておられますな」
「一つ一つ」
「確かに」
「今宇喜多家が揉めておるが」
このことも言うのだった。
「これがどうなるかじゃな」
「五大老の一つのですな」
「宇喜多家で、ですな」
「内輪揉めが起こり」
「日増しに激しくなっておりますな」
「下手をすれば合戦になる」
宇喜多家の中でとだ、幸村は言った。
「だからな」
「これがどうなるか」
「それも内府殿に関わってきますか」
「殿はそう見ておられますか」
「何か妙じゃ」
こう言うのだった、ここで。
「拙者が見るにな」
「そういえば」
「我等近頃宇喜多家を見ていませんでしたが」
「何かです」
「周りから人が入っていて」
「出入りが見られます」
「それじゃ」
まさにとだ、幸村は十勇士達に言った。
「御主達のその話を聞いてそれでじゃ」
「宇喜多家のこの騒動はですか」
「何かあると」
「うむ」
そうだというのだ。
「そう思う」
「ではまさか」
「内府殿が」
「そうだと」
「そうやもな、しかし内府殿のことじゃ」
家康の資質、老練なそれを知っての言葉だ。
「既に足跡は消しておられよう」
「では、ですか」
「これから何をしてもですか」
「内府殿の仕込みとはわからぬ」
「そうであると」
「おそらくな、そして宇喜多家の後はじゃ」
この家に限らずというのだ。
「毛利家やもな」
「五大老のうちのですか」
「あの家ですか」
「前田家を無理に引き入れ宇喜多家を弱め」
そしてというのだ。
「毛利家にも何かすればな」
「実に大きいですな」
「天下に近付きますな」
「相手を弱め自分達に引き込む」
「そうしていけば」
「おのずと天下は徳川家のものとなる」
幸村は十勇士達に淡々と述べた。
「その様にな、後は大坂を手に入れればじゃ」
「徳川家の天下は安泰」
「そうなりますか」
「おそらくな、戦もなくな」
幸村の言葉は淡々としたままだった。
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