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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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-シレーナの封じた過去編- 3

(-ルシアside-)











暗い-







暗い-







真っ暗で何も見えない-







何もない-







音も人もいない-







ここはどこ-









僕はだれだ-








自分の呼吸音も-









心臓の音も-







聞こえない-







体を動かそうとしても-








激痛が走りまったく動かない-








僕は死んだのか-








だからここにいるのか-









ならもうすべてを諦めてここで永遠の眠りについていいのかな-






-もう終わりにする







-まだ、諦めない















--いやっ諦めてたまるかっ!まだ終わるのは、許されないっ。
僕には……僕には……ヨナを……ヨナを……助けに行かないといけないんだっ!
こんな訳のわからない場所で意味もなく消えるのはおかしい。
行かないと…。痛くても恐くても、行かないと。前へ進まないと…。
だって…だって……ヨナが助けを求めているんだからっ!!


「その魂ちょ~~~っと、待った!暫く、暫くぅ!
何処の誰とかぜーんぜん存じませんが、その慟哭、その頑張り。他の神様が聞き逃しても、私の耳にピンときました!
宇迦之御魂神もご照覧あれ!この人を冥府に落とすのはまだ早すぎ。だってこのイケメン魂、きっと素敵な人ですから! ちょっと私に下さいな♪」

ガラスが砕ける音がして、共にこの空間に光がともった。僕はどうやらうつ伏せの状態ではっていたみたいだ。
軋む体をどうにか起こして、頭痛に耐えながら辺りを眺める。
空間の中央にはいつの間にか、ぼうっと何かが浮かび上がりつつあった。
その姿は――


外見はほとんど普通の人と変わらない。だけど違う。明らかに。
ここへ来るまでに出会った敵などとは比べ物にならないほどの、人を超越した力。
触れただけで蒸発してしまいそうな、圧倒的なまでの力の滾り。
それが彼女の体の内に渦巻いているのが、嫌でも感じ取れる。

「謂われはなくとも即参上、軒轅陵墓から、良妻妖精のデリバリーにやってきました!」

青紫色髪のツインテールで妖精みたいなキラキラした羽を生やした女の子がビシッと決めポーズを決めて何か言っているみたいだけど…正直、何言ってるのかわからない……。

「あ、なんかドン引きしてません?えーと、貴方が私のご主人様……でいいんですよね?」

「えぇ!?ちっ、違います!」

心配そうな顔で言っている彼女には悪いけど、僕にはご主人様なんて呼ばれたい趣味はない。

「……あの~もしかしてマスターから何も聞いていらしゃらないのですか?」

「ま、ますたー……?」

「はい。ランファさまです。あのデスピル病の根源を倒しにいらっしゃったんですよね?」

「……………」

何も聞いてない…。そうだった…だんだん頭がハッキリしてきたぞ。
そう急にランファが綺麗な薄水色の石……精霊石だったかな?それを僕に近づけて…それから精霊石に体が吸い込まれて……そうだ!こんな訳の分からない所へ来てしまったんだった!

「(あのマセガキ~~~面倒な事は全部、私に押しつけやがって~~~!! 絶対、今回の仕事を最後に契約解除してやるぅ~~~!!)」

僕の今置かれている状況を察してくれたのか、彼女は地面を蹴ってジタバタした後クルリと回って自己紹介をして笑顔でここの説明をしてくれた。
彼女の名前はパピコさんと言うらしい…。こういっちゃなんだけど、ランファとは別の意味でめんどくさそうな人だ…。

「ここはプリンセシナの…ロビー的な場所でございます」

「……ぷりんせしな?」

「はい。人の記憶や心が形になった世界。人の心が創りだした迷宮とでもいいましょうか」

「人の心が創りだした迷宮……プリンセシナ」

「プリンセシナは最大十階まである巨大迷宮。デスピル病は、このプリンセシナに魔物を拡散させて最下層にあるといわれる、本能とすべて感情が眠る場所と呼ばれるシークレットガーデンを目指し徘徊し、人の記憶を栄養分として成長しそして!最終的には人を穢れに変えるのです」

「穢れ…」

説明を聞いているとヨナの事を思い出す。あれからもう数週間…ヨナも遅かれ早かれあの穢れと呼ばれる化け物に……残された時間はあまりないはずだ。

「ですが焦ってもいけません」

「え? どうして?」

「デスピル病は心の病。治す事は患者の心、誰にも見せたくない封じた過去を闇をさらけ出さないといけないんです」

「そうか……」

「下の階へ行けばいくほど闇は濃くなりなります。患者との絆の深さで行ける階層も違います」

「じゃあ、最下層のシークレットガーデンで行くには僕とシレーナが深い絆で結ばれていないといけないんだ」

シレーナとの絆の深さか……。

「はい♪ですからまずは気長に私との絆を深めて愛の巣を作ってから、また来ましょう?」

「……シレーナとの絆か」

「あの~ご主人様?」

「ねぇ、今僕とシレーナの絆度だったらどこまで行けるか調べられない?」

「えぇ~出来るは出来ますけど、まずは私との絆を~」

「お願いします!」

「ぅ~む、仕方ないですね」

パピコさんはめんどくさそうだったけど渋々、空気上に画面のようなものをだしてそれをタッチしながら操作している。
すごい…こんなのみたことない…他国ではこんなすごい技術があるんだ…。
(今現在の技術力ではタッチパネルのモニターなど到底不可能)

「え…嘘!? なんなんですかー!これー!?」

「ど、どうしたの…?」

「どうしたもこうしたもないです!ヒドイです、ご主人様!このパピコちゃんを差し置いて、他の女性と絆度Maxなんてっ!!」

「絆度Maxってことは……シークレットガーデンに行けるんだねっ!?」

「え…? ま、まぁそうですけど…それよりも!」

「ありがとう! パピコさんっ。僕行ってくるよ」

「えっ?行くってどこに?ってえぇぇぇ、待ってくださいー置いてかないでーーご主人様~~」


プリンセシナ第一階層と書かれた扉の前に立つ。慌てて追いかけて来てくれたパピコさんも僕の横にぜーぜー言いながら立つ。…すみません。
ここをくぐった先はシレーナの心の世界。…誰にも知られたくない事が封じられた場所。
ごめんね、シレーナ。あとでどんなに怒られても殴られても構わないから、君の封じた誰にも見られたくなかったであろう闇の過去を盗み見るね。
扉に手をかざすと音もなく小さな光を発して僕たちを包み込む。
この先にはいったいどんな世界が広がっているんだろう…。


 
 

 
後書き

【プリンセシナ案内人】

名前:パピコ 
年齢:不明 
性別:女
種族:不明
職業:ナビゲーター
 
容姿:青紫色のツインテール。
   キョロキョロとした大きな瞳と美しい大きな妖精のような羽が特徴的。
 

出身国:不明
詳細:精霊石に組み込まれたチップ(AI)でプリンセシナの案内役。
   惚れっぽくルシアに一目惚れし「ご主人様」と呼んで敬愛と崇拝している。
   だがご主人様との恋路に障害と判断したモノはすべて破壊する呪い系。
 
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