ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
131部分:風の勇者その三
風の勇者その三
マンスター城南門目掛けトラキア軍げ攻め寄せて来る。空からは竜騎士団、陸からは騎士団と歩兵部隊が迫り来る。
「来たな」
セティは城門の上で一人で身構えていた。マギ団の兵士達も城壁の上で剣や槍を手に身構えている。
「私がまず魔法を放つ。皆それから一斉に攻撃に移ってくれ」
「はい」
トラキア軍が迫る。今まさに攻撃を仕掛けんとするその時セティが動いた。
流れる様な動きで下から球を投げる様に滑らかな動きで左手から魔法を放った。それは幾千幾万もの大型の鎌ィ足だった。
「フォルセティ!」
「何ィッ!」
竜騎士団の先頭を駆っていたマーロックが無数の鎌ィ足の直撃を受けて即死する。続いて多くのトラキアの将兵達がズタズタになり地に落ちる。
マギ団が一斉攻撃を開始した。フォルセティにより満身創痍となったトラキア軍に追い討ちをかける。
「くっ、あれがフォルセティか。何という凄まじい威力だ」
伝説の神器の威力を見せ付けられたコルータは思わず息を飲んだ。
「だがここで進撃を止めてはマンスター占領はおぼつかぬぞ。さもなければ・・・・・・」
ルーメイが言いかけようとしたその時兵士の一人が北の方を指差して叫んだ。
「来たか・・・・・・」
空と陸から解放軍の軍勢が押し寄せて来る。青地に白い剣の旗、シアルフィの旗だった。ホークが思いきり大きく手を振る。マギ団が喜びで沸き返る。トラキア軍から憎悪の念が沸き起こる。
「トラキアの司令官はいるか!」
青い馬に乗ったセリスがマンスター城の前に出て来た。周りをオイフェ、シャナン等解放軍の諸将が固めている。
「私だ」
アルテナが竜に乗りセリス達の前に現われた。
「ターラでお会いして以来ですね、セリス公子。今回はどの様な御用件で来られたのです?」
「マンスターはフリージ家から解放されレンスターの民の手に帰しました。マンスター侵攻を停止し本国までご帰還願いたいのですが」
「面妖な事を。マンスターの民は我がトラキアの対し侵略を企てた。それを成敗するのは当然ではないですか」
「それならばその者達のみを成敗すれば良い事でしょう、老人や女子供といった武器を持たぬ者達まで手にかけるというのは一体どういう道理ですか」
「我等トラキアに刃向かうからこそ制裁を加えたまで、これはトラキアの問題であり貴方達の問題ではありません」
「マンスターはレンスター領、レンスターの者が決める事、トラキアの者が介入するのは筋違いでしょう。今貴方達の行なっているのは侵略ではないのですか!」
「ならばマンスターのいるマギ団と称する反逆者とその巣窟であるマンスターを我等の統治下に置かせて頂こう。そうすれば我等は兵を退く」
「我等はマギ団とマンスターの民衆の要請を受けこのマンスターに来た。退くわけにはいかない!」
「ならば力づくでも渡してもらおう!」
「断る!」
セリスは毅然として言った。
「その言葉、宣戦布告と受け取れるがそれで良いのか!?」
「無論!我等解放軍はマギ団とマンスターの民衆を侵略者トラキア王国から護る為解放軍盟主セリスの名においてトラキア王国に対し宣戦を布告する!」
セリスは腰の剣を抜き剣の先をアルテナに向け昂然と言い放った。
「面白い、受けて立とう!」
アルテナも言った。だがセリスのそれとは違い何処か力無い。
「行け!」
両者は攻撃命令を下した。一斉に攻撃を開始する。
戦闘はすぐに幕を閉じた。圧倒的な兵力を誇る解放軍がトラキア軍を寄せ付けずルーメイがフィーに討ち取られトラキア軍はミーズ城へと撤退した。
戦闘を終え解放軍はマンスター城へ入城した。マギ団の者達が歓呼の声で迎える。
セリスはセティと手を握り合わせた。両者共力強い握りだった。
「有り難うございます、セリス公子。貴方のおかげでマンスターは救われました」
「いえ、私はただ貴方達の言葉に従いこのマンスターに来ただけです。勇者セティ、貴方こそマンスターの救世主です」
だがセティはその言葉に表情を暗くした。
「・・・・・・私はそんな立派な人間ではありません。トラキアの魔の手から誰一人救う事が出来なかったのですから・・・・・・」
セリスはセティの言葉に首を横に振った。
「それは違います。貴方が今マンスターにたからこそトラキア軍を退ける事が出来、多くの人達の命が救われたのです。セティ、貴方は真の勇者です」
「セリス公子・・・・・・」
セティは暫し俯いて考えた。そして晴れやかな表情で顔を上げた。
「セリス公子、私とマギ団を解放軍に参加させて下さい。帝国の圧政下に苦しむ民衆を救いたいのです」
「こちらからお誘いしようと思ってました。喜んで歓迎致します」
「公子・・・・・・」
両者は両手を強く握り合った。また新たな星がセリスの下に参じたのだ。
ページ上へ戻る