Three Roses
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第三十一話 論戦その七
「葡萄酒も飲みましょう」
「お酒もですか」
「そちらも」
「主の口はこうした時にこそ飲むものです」
まさにというのだ。
「ですから」
「ここは、ですか」
「疲れを感じている時こそ」
「口にすべきですか」
「葡萄酒よ」
「酔わない程度にです」
あくまで節度を守ってというのだ。
「飲みましょう、そして」
「そして?」
「そしてとは」
「夜はです」
論戦が一先ず終わってからというのだ。
「気を晴らす為に多く飲むのもいいでしょう」
「夜はですね」
「その時は」
「はい、そしてお酒が残っていれば」
二日酔いの時はというと。
「水浴びをされて下さい」
「酔いを醒ます為に」
「それをせよというのですか」
「そうです、寒いのでしたらお風呂を用意します」
その場合はというのだ。
「そうしてです」
「お酒を抜き」
「そのうえで、ですか」
「再び論戦に挑む」
「そうすべきですね」
「そうです、気は必要ですが」
だがそれでもというのだ。
「酔ってはなりません」
「論戦の時は」
「それは慎むべきですね」
「気は確かに持ち」
「そのうえで、ですね」
「論戦に挑むべきです」
これがいいというのだ。
「いいですね」
「わかりました」
側近達も学者達もマリーのその言葉に頷いた、そしてだった。
マリーは実際に赤い葡萄酒を飲んだ、その中にはいつも通り三色の薔薇の花びら達がある。その花びら達も口の中に入れてだった。
飲んでからだ、こう言ったのだった。
「絆は。ここでも」
確かな顔で言ってだ、そうして論戦に向かうのだった。
マイラも今は葡萄酒を飲んでいた、だがそれはごく普通の葡萄酒だ。中には何も入っていない。そしてその葡萄酒を飲んでだ。
傍に控える彼女の侍女達にだ、こう言った。
「では再びです」
「論戦にですね」
「挑まれますね」
「これより」
「そうされますか」
「はい」
まさにという口調での返事だった。
「そうします」
「わかりました」
侍女達はマイラに応えた、そうしてだった。
マイラは論戦が行われる王の間に向かう、侍女達は王の間の前までは彼女に従っていたが。
彼女達だけになるとだ、眉を曇らせて話をした。
「せめてお食事の時だけでも」
「どなたかとおられれば」
「太子もおられるのだし」
「ご一緒に食事を摂られれば」
「それだけでもかなり違うのに」
「どうしてあの方は」
「あの様にされているのか」
孤独のままでいるのかというのだ。
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