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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第二章 Lost Heros
  ある一日


鬱蒼とした森の中。

二人の男が剣を握って向かいあう。




「オレが最後の「EARTH」メンバーになってしまった・・・・」

「・・・・・・」

「だから・・・・オレがお前を倒す!!!」

「御託はいい!!お前、オレを倒したいんだろ?えェ!?」




そういって、男二人が睨みあい。





その剣がぶつかり合って最期の闘いが始まった。
















その数ヶ月前―――――――――






------------------------------------------------------------







ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・・・





「EARTH」宿舎の一室で、甲高い電子音を鳴らしながら、目覚まし時計が鳴っている。
結構うるさい。



しばらくしてから、そのデジタル時計の頭を、ベッドで眠る男の掌が叩く。



この男こそ、この部屋の主、蒔風舜である。



だが、人間これだけで起きれるなら、国語辞書に「遅刻」などという項目はない。



叩いたては力なくそこから離れ、布団の中に戻っていく。
もぞもぞとしながら頭を掛け布団に潜らせ、抱き枕を手足で探ってたぐりよせ、ベストポジションで抱き直す。
ちなみに彼のために言っておくが、これはいたって普通の抱き枕であって、変なプリントはされていない。



そうして彼は再びまどろみの中に戻っていくが、五分もしないうちにもう一度、目覚まし時計が持ち主を起こそうと鳴り始めた。
繰り返しアラームが鳴るタイプのようだ。


だが、それをさっきと同じ動作で消す蒔風。
そして、同じように鳴る目覚まし。



そうこうしているうちに、ついに蒔風が時計を掴み、アラーム機能そのものを切ってしまった。




これで彼の安眠を妨げる者はいない。





だが




ベッドで眠る蒔風に、一人分の小さな影が歩み寄る。
蒔風はまったく気が付いていないようだ。


それをみて、その人物の口元がニヤリと上がり・・・・・



「どーーーん!!!」



飛びこんだ。
そりゃもう飛びこんだ。

人体の中心ともいえる「水月(鳩尾のこと)」に頭から突っ込んだ。



「グホゥッッ!?」

「起きたー?」



今、一瞬目覚めて、一瞬でオチました。


蒔風の腹の上で、ヴィヴィオが馬乗りになってポンポン跳ねている。
見た目は可愛い光景だが、下にいる人間が気絶していることを考えると結構怖い。






ガタガタガタッ、バタンッ!!!



「ああ!?や、やられた!?」

「ふふふ、よくやったよ!!ヴィヴィオ!!」

「いえーい!」



と、そこでけたたましい音を鳴らしながら、蒔風の寝室に倒れ込んできたのは、組み合って地面に転がるなのはと星だ。

どうやらなのはが星を押さえている間にヴィヴィオが蒔風の元に向かうという作戦だったらしく、この様子ではかなりうまく行ったようである。




「舜君は!?」

「まだ寝てるよ?」

「ならばっ!!まだ私にも勝機があるッ!!!」



部屋の主を差し置いて、その部屋でギャーギャー騒ぎまくる少女二人。
そんな争いしてんだったら朝飯でも作ってやればいいのに、という事は考えちゃいけない。


なお、それを聞いたなのはの親友Fさんは(はた)かれた後に「朝起きて、最初に見たのが私だった方がいいでしょう!?」と言われたそうだ。
ちなみにそのとき、Fさんのお姉さんはそれを見てケタケタ笑っていた。助けてやれよ。





「くっ・・・だがさすがだな、なのは殿・・・よもや私と同じことを考えるとは!!」

「それはこっちの台詞ですよ。でも、こっから先は通さないから!!」



認めながらも、戦う定め。
ああ、なんと悲しい世界なのか。



「これが・・・戦いなんだね・・・・」


それを見て、ベッドから降りていた高町ヴィヴィオは何かを悟っていた。
君が知るには、あの世界は少しディープすぎるよ?




「ん・・・・・んあ?」



と、そこで蒔風が目を覚ます。

なんだか普通の目覚めよりも身体が重く感じたのは、きっと気のせいではないだろう。



「「舜(君)!!おはよう!!!」」


「・・・・・・え?」



「「おはy「なんでいるんだぁぁああああああああああああ!!!????」朝の挨拶!!!」」


蒔風の叫びに、元気よく答える二人。
それを聞いてからの蒔風の行動は早かった。




バサッ!!ドスドスドス・・・・ガチャッ、ポーーーイ





朝起きて 目の前にいた 侵入者 布団にくるんで 廊下に捨てた 字余り





『(モゴモゴ)だ、出してーーーー!!』

『むぅ・・・・ハッ!?こ、これは舜の匂いが!!』

『ホントだ!!』



「ホ ン ト だ じゃ ねェ」






『うう・・・なんでこんなことするのー?』

『そうか・・・わかりましたぞ、なのは殿』

『どういうことなの!?』

『舜も男子。きっと朝の処理を・・・・』



「よし、お前らそのまま浴場に放り込んできてやる」




『『そ、それは先にシャワー浴びてこいよ的な!!??』』




「そう じゃ ねぇ」






そうして、蒔風が部屋に戻る。





ちなみにヴィヴィオは布団にくるまった二人を引きずって部屋に戻っていっていた。
逞しい子である。






「ったく・・・・なんであいつら朝からミッドナイトなんだよ・・・・・」

そう言いながら、蒔風が身体を伸ばす。

ここからの蒔風の行動はいつも通りだ。
洗面台に向かって歯を磨き、顔を洗い、炭酸を少しだけ飲み、朝ごはんを食べて、着替えて部屋を出る。


そして、蒔風はこれから学校の方に行くのであろう一刀や愛紗たちとすれ違いながら(星は愛紗に簀巻きにされていた)会釈し、自分の事務室に入った。




「あ、来ましたか」

「お前が「来なかったら毎晩見る夢を悪夢にしますよ?」とか言うからじゃねェか・・・・・」

「どうでしたか?」

「二度とすんな・・・・・」



蒔風がその日の事を思い出して疲れた声を出す。

相手は、部屋の中ですでに仕事の準備を終えていたアリスだ。
そう、蒔風がサボって仕事から逃げたある日の晩、アリスは宣告通りに蒔風の夢を悪夢にしてしまったのだ。



それはもう・・・・うなされまくって次の日に蒔風がアリスにすがるほどだった、と言えば、どれだけのものだったかの想像はできるだろう。






「ってか!!形だけでいい、って言われたからここにいんのに!!なんでおもっくそポジションつけられてんの!?」

「ですから!!すべての世界を回ったのはあなただけなんですから、あなたじゃないとわからないことが多いからですよ!!」

「あんたでもいいじゃないの!!もういや!!私こんなの耐えられない!!!」

「なんでカマ臭くなってんですか。気持ち悪いです」

「キモイゆーな!!傷つくのは俺なんだぞ!!」





そんなことをギャーギャー言いながらも、蒔風は椅子に座り、その右手は書類を次々と回していっていた。
器用な男である。



「終わった!!」

「じゃあ次」

「オレ逃げるよ!?」





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「お・・・・終わった・・・・・」



そう言って蒔風が倒れ込んだのは食堂のテーブル。時間はもう昼飯時だ。


あの後、なんだかんだで今日の書類仕事はすべてこなした蒔風。
まあ、アリス曰く「この後もまだ書類来るかもですよ?」だそうだから気は重いが。



「どうしたんですか?蒔風さん。元気ないですよ~?」

「いやぁ・・・・・朝っぱらから疲れて・・・・」

「何かあったんですか?」

「いや・・・説明したくない・・・・・」



ぐったりしている蒔風に話しかけてきたのはこの「AGITΩ食堂」を取り仕切るシェフ、津上翔一だ。
どうやら一番忙しい時は抜けだしたようで、彼も昼食を取りに来たようだ。



「津上さ~ん。今日は何がいいですかぁ~?」

「ありゃ、疲れて眠そうですね?水泳なんかいいんじゃないですか?スイミング!!芦原さんがインストラクターやってるみたいだし、行ってみたら!スイミング~」

「・・・・」

「あ、今のは「睡眠、グ~」と「スイミング」を・・・」

「いや、それはわかってるから」




説明の入ったボケほど悲しい物はない。







「お待たせしましたー。はい、蒔風君」

「おう、サンキューだ。って、泉か」

「うん。ここでバイトしてんだよね~~」


津上と蒔風が注文してから数分後、頼んだものを持ってきたのはこなただった。
彼女いわく、ここの方がバイトしやすいらしいのだ。


「時給も蒔風君に泣きつけば上げてもらえそうだしね~~」

「をい」





そう言いながら皿を置いて仕事に戻るこなた。
頼んだものは、蒔風がマーボー豆腐。津上がオムライスだ。



「(もぐもぐ)うまいなァ、やっぱ!!」

「それ、蒔風さんのために作っておいたものですから」

「まじで!?ありがとー」





腹が満たされ、元気が出たのか蒔風の声が弾む。
津上もそれによかったよかったと頷きながら、厨房に戻った。




蒔風も食べるのはちゃっちゃと済ます人なので、食い終わってからはぶらつくだけだ。
アリスから新しい仕事が来なければだが。





「お、舜!!」

「一刀」




蒔風が廊下を歩いていると、一刀が声をかけてきた。
どうやらこれから鍛錬のようで、後ろには武器を持った愛紗と翠がいた。



「ガッコは?・・・ああ、午前だけか」

「そ、土曜だからな。で、俺はこれから愛紗たちと模擬戦すんだけど・・・蒔風も来るか?」



一刀からの提案。
その提案に、蒔風が顎に手を当てながら首をコキコキ鳴らして考えだした。



「ふぅむ・・・・・最近体動かしてないしなぁ・・・・」

「じゃあ行こうぜ!!舜とも模擬戦したいから!!」

「そうだ・・・な。よし、やるか!!ためさないといけないこともあるしな」






そう言って向かうは地下の大訓練場。


そこにはすでに使用者がいた。
いたどころか、思いっきり模擬戦をしていた。







「ハアアアアッ!!!」



「良太郎!!そこでヒュッ、とかわしてバーンと反撃だ!!」

「先輩、その説明は無茶でしょ!?」




「リョウタロウ!!」

「クッ・・・剣技でここまで押されるとは・・・・」

「負けちまったあたしらが何言ってもしょーがねーけどなー」

「ふぅ・・・・・さすがは翼人、だな」



戦ってるのは、クラウド・ストライフ。
訓練場の脇にはすでに挑んで負けたセイバー、草壁美鈴、ヴィータ、ハクオロが座り込んでいる。




「にしても今んとこ五人目だろ?」

「それでまだあんだけ勝てんだからすげーよなァ・・・・」



そういってそのわきに立つのは士にユウスケだ。
その奥のベンチにはエルルゥとアルルゥが見学をしていた。




「おー、クラウドやってんなぁ・・・・」

「舜じゃないか」

「よ。今は・・・開いてないねぇ・・・・」



と、一同が蒔風に気付く。
更にその後からひょこりと一刀たちまで出てきて、会話に入る。



「なに?クラウドに勝ち抜き戦?」

「らしいな。オレが来た時にはもう始まってたぞ?」



どうやら、最初にクラウドを見つけたヴィータが戦いを挑んで、そこからギャラリーがどんどん挑んでいって今に至っているそうだ。



「クラウドはなにしに来たんだ?」

「さあ?なんか小包持ってたけど?」

「宅配ついでか・・・・不運な・・・・」










「電車斬り!!!」

「凶斬りッ!!」




ガゴォッ!!!!!




と、そんなことを話していると、どうやら決着がついたようだ。
電王ライナーフォームと、クラウドの技がぶつかり合い、飛ばされたのは良太郎だった。



「五人抜きかー」

「やっぱやるなぁ・・・・」


蒔風が感心して呟く。
そうしていると、クラウドも疲れたのか良太郎と一緒にこちらに向かってきた。



「やるなぁ、クラウド」

「シュンか・・・・見てたのか」

「五人抜き、おめでとう!」

「たいしたことじゃない」




そんなことを話し合っている彼らを見て、アルルゥがふと思ったことを言葉にした。





「おねーちゃん、マイカゼーとクラウドーは、どっちが強いの?」

「え?」

「「「「「え?」」」」」

「「「「ゑ?」」」」



その言葉に、皆が振り返る。
そして、面白そうだという顔をして士が言った。



「確かに。蒔風がどれだけ強いかは知ってるが、そっちが蒔風に並ぶくらい強いのか、俺らは知らないしなぁ」

「失礼だぞ!!士!!」

「ユウスケだって正直思ってんだろ?」

「う・・・・」



それを聞いて、蒔風とクラウドはどうしようかという状態だ。



「どうする?」

「さあ?」



「戦ってみりゃーいーじゃねえか」

「そうだな。私も、興味がある」


そこにヴィータとハクオロの賛成票。
ここまで来てしまえば、やらないのもなんだという事だが・・・・


「でもクラウド疲れてんだろ?」

「だったら後日だな」

「よし!!こっちで日程合わせるから、みんな呼ぶか!!」



「え?」



「と、なると全員分の飲み物と食べ物を・・・・」



「完全に見世物じゃねーか」












こうして、決まってしまった蒔風対クラウド。


勝つのはどっちなんだろうか?











to be continued
 
 

 
後書き
第一話がこんなんでいいのか、と不安な不安な作者です。
始まりました、第二章!!!


ここから数話は日常編です。
なんとか書いていきませう!!


事件が起こるのはそれから・・・・


ふふふふふふふふ!!


 
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