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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  the days ~必ず救う・必ず食う~


街を歩く一団。
どうやらさっきまで騒いでいたテンションが尾を引いて、いまだに騒がしい。

だが、その騒がしさも街の喧騒の前には小さく、周囲には全く迷惑になっていない。






そんな彼らの一幕。




そろそろ時間は昼の二時を回ると言ったところか。



どこかの店に入って昼食を取ろうと誰かが提案し、だったら店を覗きながら決めようと、また別の誰かの提案が採用された。


そうして、一団は進んでいく。



同じ方向に歩く人
追い抜く人
追い抜かれる人
すれ違う人




実に多くの人間が、この場にいた。




そして







街を往く一人の男が、すれ違ってから数歩進んで




それこそまるで当然のように懐から銃を抜き放って



当たり前のように一人の男の後頭部に銃口を向けた。








男の口角がグイ、と引きあがり


引き金に指が掛けられてそれが何の躊躇も無く引かれた。







パァ、ギィン!!!!





だが、それは決して男の思い通りの音を立てなかった。
発砲音とほとんど同時に、金属がぶつかった音がした。



その理由は、見る者が見れば一目瞭然だ。
狙われた男、蒔風舜が、背に「獅子天麟」を出現させて、その弾丸を柄の部分で弾いていたから。





「な・・・・・?」

「このタイミングだと、思っていた」


いきなりの音に、周囲の人間は立ち止まり、食い入るようにその二人を見ている。


片や、銃を真っ直ぐに腕を伸ばしている男
片や、背中の剣でそれを受け止めた男



どちらも異常。
どちらも、この場らしいものではない。




そして、それから一瞬の空白を置いて、人々の中の一人が悲鳴を上げた。


「け、拳銃だぁああああああああああああああ!!!??」




ブワァッ!!!と、周辺の人間にその事実が電光のように伝わり、蜘蛛の子を散らすように走り出した。

その騒乱のさなか、蒔風はスッ、と振り返って撃った男、「奴」を睨みつける。






「よう」

「お前まさか・・・・蒔風・・・・なのか・・・・?」




「奴」が訊く。


この世界には、この男一人では来れないはずだ。
自分が来れたのだって、あの時起こった魔導八天と十五天帝の暴発エネルギーを利用してやっとだったのだから。


本当だったらもっと前の時間に行きたいところだったが、この時点がギリギリだった。






それなのに、この男はこうも簡単に自分の前に立ちふさがってしまう。


奴か聞きながらも、己の頭で推察し、その答えを導き出した。





「なるほど・・・・管理者か」

「聞いといて自己完結すんなよ・・・・・ま、なんか最後に「アリス」とか言ってたけどな」



「ま・・・蒔風?なんだよこれ・・・なんだそれ!?」



と、蒔風と「奴」が話していると、蒔風の後ろから友人が恐る恐る聞いてきた。
彼らのその反応は当然だろう。


彼らには、今までの蒔風の旅どころか、世界の崩壊ですらも知らないのだから。
それでいきなりこの場面である。取り乱さない方がおかしい。




その四人を見て、蒔風がフゥ、と息を吐き、言った。



「ここにいるのは危険だ。早く避難しろ」

「な・・・・」

「じゃあ・・・お前はどうすんだよ!!!!」




ここは危険だからと、蒔風は仲間の避難を促すが、彼らはそこで「うん」とは頷かない。
それはそうだ。この男の仲間だという人間が、彼を置いてここから逃げるなんてことはしない。

だが、蒔風はその彼らの肩を掴んで、より強い口調で言った。


「逃げるんだ。大丈夫だって。俺はこの世界を一度壊されたんだ。二度も失敗するヘマは・・・しないさ」

「だ・・・だがよ・・・・」


「うっせぇ!!!早く行け!!!死にたくはないだろうが!!!!」




蒔風の言う事は半分以上わからなかったが、それでもこの場から逃げようとはしなかった彼らに、蒔風が怒声を浴びせる。

その言葉に、仲間の一人が反論しようとするが、別の仲間に肩を掴まれて押しとどめられる。



「・・・・本当に大丈夫なんだな?」

「任せておけ・・・・俺は・・・・・もう何度もこんなことしてっからよ」




その言葉を聞いて、仲間が走り出した。
蒔風が一体何を経験してきたのかわからないが、昨日のあいつとはまるで別人であるという事が、彼らにはわかった。



だから、信じた。
いや、そうでなくても、彼らは信じただろう。



それが、この仲間というものだった。












「さて・・・・邪魔はねぇ・・・・やるか?」

「くっそ・・・だが・・・・・・やるからには・・・俺はもう負けられん!!!!」

「それはこっちも同じだってのよ!!!!!」



ゴッ、バァン!!!!






「奴」の放った波動砲を、蒔風がその場から動かずに裏拳で薙ぎ払う。
その裏拳から一回転して、蒔風が獅子天麟を手に組み立てて「奴」に迫った。



それに対して「奴」は無手。
獅子天麟の広い側面を殴ってその軌道を変え、うまくいなして、蒔風に攻撃を加えていく。

蒔風もそれをうまく膝や脛、肘を上げるなどをして滑らせるように逸らしていき、どちらも渾身の一撃を与えるには至らない。



と、そこで蒔風がひときわ大きく獅子天麟を振りかぶり、「奴」の脳天に叩きつけようとする。
だが、そのような大きなモーションでは当然のように「奴」に読まれ、両手で挟まれ、白刃取りされてしまう。





が、その攻撃はあまりにも軽すぎる。






当たり前である。
「奴」が白刃取りする頃には、蒔風は剣から手を放してその手に絶光を溜めこんでいたのだから。



「絶光尖!!!」

「おグッ!?」

射出さえされれば最高速度を誇るそれを、とっさに転がってかわしたのはやはり流石というところだろう。
しかし、やはり完璧にはいかず、それは「奴」の脇腹を少しえぐり取っていた。



「チッ。外した!!」

「ハッ!!そんな溜めが長い攻撃、当たるわけねぇだろうが!!!」



そう言って「奴」が魔導八天を構えて突っ込んでくる。
蒔風がそれを「風林火山」で受け止める頃には、脇腹の傷はすでに塞がり、なんでもないようになっていた。

二人の剣が、ぶつかり合って火花を散らす。
そうして幾合か打ち合って、ガンッ!!と衝突させて鍔迫り合う。


それを見、苦そうな顔をしてから蒔風は、剣を弾くように押し、互いにバックステップで距離を取った。
同時に、上空に飛びあがり、風林火山を振りまわして「奴」を斬撃の渦で包み込んだ。




「鎌鼬切演武!!春夏秋冬・花吹雪!!!!」


次々と送り出され、地上の「奴」の周りを回り出す斬撃。
その斬撃の渦が、回転しながら狭まって行って徐々に「奴」押しつぶそうとする。





しかし




「な!?」

「力技でぇ・・・・勝てると思うな!!!」



「奴」はまったくこの状況を問題としていなかった。

地面に立つ「奴」は魔導八天をバラし、それを頭上でプロペラのように回していた。
それによって発生した竜巻に、蒔風の花吹雪が巻き込まれ、むしろ「奴」のその竜巻と一体になってしまった。




「そらぁ!!!!!」


「ッ!?質量で押しつぶす!!!津波!!!」





それに対して蒔風は大量の斬撃によってその名の通りに押しつぶす「津波」を以って対抗する。



空中で大質量の斬撃が衝突し、周囲の建物やアスファルトに切り傷を残して爆発したかのように週に風を撒き散らす。


その突風と斬撃の余波に目を細める蒔風。
だが、そうしている間に、耳に何か聞こえてきた。






・・・・・・・・ュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!!!!


「ッッ!!!アぐっ!?」




ザクッ!!という重い音を立て、蒔風の右太ももに魔導八天の一本が突き刺さる。
その重さと痛みに、蒔風が空中で揺らいでしまった。その体制を整えようとするが、この状態では落ちた方がまだよかっただろう。





「奴」の波動砲が体勢を整えようとした蒔風の左肩を掠めていったのだ。
その威力に完全にバランスを崩し、地面に落ちる蒔風。

その落下地点に向かって、剣を突きの構えにして「奴」が走っていく。



落ちる蒔風。
だが、地面に落ちる前に、その双眸が一気に開かれる。




「奴」が剣を突き出してきたその瞬間、蒔風は空中で一回転し、その剣の上に足をつける。
そしてそこを土台にしてまた一回転、そこから「奴」の脳天に踵下ろしをクリティカルヒットさせた。



その一撃に「奴」は脳味噌を揺らされ、その体がぐらりと揺れる。
だが、この一撃では「奴」はすぐに回復するだろう。



だから




「だから・・・・このまま休ませねぇ!!!」



ゴォッ!!!




灼熱の音を立て、蒔風の手の平で獄炎弾が出来上がり、それを掌底で「奴」の腹に叩きこむ。



「ハッ!!!」


そこから蒔風が気合を込めると、その手の平から獄炎弾が射出され、それに押されるようにして「奴」も空中に飛び出していく。




そしてズゴッ!!という音を立ててそれが膨張、「奴」を飲み込み、そして数拍置いてから大爆発を起こした。




爆炎の中に消える「奴」
どうだ?とそこに目を凝らす蒔風。



だが、この程度で終わるなら、「奴」は「奴」として蒔風を苦しめてなどこれない。





ボゴォッ!!!!





爆煙を見上げていた蒔風に、衝撃が襲いかかる。


場所は、顎。
そこに向かって、いつの間にか潜っていた「奴」が地面からアッパーカットで正確に捉えていたのだ。

更にそこから襟を掴んで頭突き。
最後に右の拳で顔面をぶん殴って、その体を弾き飛ばす。





その威力は尋常ではなかった。

殴られた蒔風は、まるでキャノン砲で飛んできた鉄球を受けたような衝撃を身に覚えている。
ただえさえ頑丈な蒔風が、それだけのダメージを受けたという事だ。



それは一般人に換算したら、一体どれだけの威力となるのだろうか?



そして、それで飛ばされた蒔風は、大通りを端から端までノーバウンドで横断し、ビルに直撃。崩れてくるビルのすべてをその身に受け止めながら、潰されていった。




「カッ・・・バカみてぇにデカイ火球投げてきやがって・・・・・」


そう言いながら、「奴」が蒔風を下敷きにしたビルに歩み寄って行く。




そして、残り三メートルというところで、ビルの瓦礫の中から、蒔風が突っ込んできた。




その手に構えるのは「天」
それを「奴」に向かって、全体重を乗せて突き刺した。


「ぐぅっ!?いいタイミングでの奇襲だが・・・」


そういいながら、「奴」は左腕の上腕の甲に当たる部分でそれを受けて止めていた。
当然、手甲なんてものはないので、その腕に突き刺させての、苦肉のガードだ。



だが、そのまま黙っている「奴」でもない。
反対の右手の指を立て、その抜き手を蒔風の左肩に突き立てる。


そこは先ほど波動砲が掠めていった場所だ。
その痛みに、蒔風の顔も歪む。


そしてまるでその身体に突き刺さる痛みを振り払うかのように、二人が同時に足を上げ、相手の顔面に膝をブチかました。



そのお互いの攻撃に、「奴」がのけ反りながらも踏みとどまって立ち、蒔風がドカッ、と地面に転がってから膝立ちで構えた。




「はぁ・・・・はぁ・・・・」

「・・・・フッ・・・ハッ、ハッ、ハッ、ハ・・・・」



戦いを始めて、どれだけ立ったか。
実際にはそれほど経っていないだろうに、本人たちはかなり長く感じていた。



これだけの戦闘ですでに大きな怪我を負い、呼吸も荒くなっている。
最初の怪我は再生していた「奴」も、その余裕がないのかその怪我の部分は影はゆらゆらと揺れるだけで再生していない。




「は・・・・・なんだよ・・・だらし・・・・ねぇぞ?えェ!?」

「こっちはなぁ・・・あの暴発の威力をどうにかこうにかしてこっち来てんだよ・・・・おめぇと一緒にすんな」

「言い訳かよ・・・まあいいさ。それもまた・・・・事実だ。ごホッ・・・・・」



蒔風がせき込む。
余裕そうに言ってはいるものの、蒔風の身体もすでに疲弊しきっている。

右足は腿を突き刺されているためにうまく力をこめられず、実質左足で立っているようなもの。
さらに左肩のダメージでうまく肩が上がらなくなってきている。


全身にも、浅くではあるが広くダメージが残されていた。



戦いがこのまま長続きすれば、おそらくこっちが終わる。
いや、長続きなんてしなくても、おそらく五分かそこらで力押しされてしまう。




蒔風はそう考えた。
だから、次の技で終わらせることに、即座に決めたのだ。




「終わらせる!!!自分が主人公の世界だと・・・・楽でいい!!!」

「待て!!いいのか?またこの世界を飛び出していくことになるのだぞ!!!!」




「奴」の浅い脅し。
そう、この脅しはあまりにも浅い。



この男は、この世界が救えればそれでいいのだ。
そしてこの先、世界をまたいくつも回ることになっても、それを後悔などしない!!



「やんなきゃこの世界が食われんだ・・・・そんな危険を冒してまで、この世界にいたいとは思わねぇよ!!!」





バサァッ!!!!




蒔風の翼が大きく開かれる。
銀白の翼が、周囲を照らす。



「俺は・・・救えなかった心残りを救える!!これで明日に顔向けできる。この世界は、救わせてもらうぞ!!!!」

「くっそったれぇ!!!!!」




「奴」が波動砲を放つ。


が、それよりも早く、蒔風による、この世界のWORLD LINKが発動した。






【the days】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~!!






ボフッ!!!





その発動と共に、「奴」の波動砲がそんな音を立てて消滅した。


そして、消えていくのはそれだけではない。






「な・・・に!?」

「・・・・この世界に、「マイカゼシュン」は二人もいらない。一人は不純。お前は消えろ」





そう、これがこの世界でのWORLD LINK

複重する存在である彼らの内、この世界で正規なのは蒔風の方だ。
ならば、消えるのは、当然のことながら「奴」。



この技はそう言ったものだ。
この世界は、"no Name"

純なる世界。


何者にも染められぬ世界。



ゆえに、不純の排除などは、当然なのだ。





「い・・・きなり・・・かよッ!?」

「?・・・はーーぁん。なるほど。WEPONの方が出てくるのを待ち構えていたんだな。だが残念。それはもうすでに発動していたんだよ」




そういって、蒔風が親指で自分の背中の翼を指す。
そう、今までの世界でも、WEPONで翼人は覚醒していた。


この世界では、既にそれは行われていたのだ。
最初の時に、すでにだ。





そうしている間にも、「奴」の身体は粒子となって消えていっている。
その事実に、「奴」の言葉が焦っているようにこぼれ出てきた。


「き・・・きえ・・・るッ!?」

「ああ、消えろ。この世界にいるな。じゃあな」









そういって、蒔風が肩を上下させて、汗をたらす。





そう、これで終わりのはずだ。




見栄は張っているが、こっちの体力はもう限界。
身体の傷も結構重い。

だが、こうなってしまえば勝ちのはずだ。



だが・・・・だったらなぜ・・・・・・・







この悪寒はおさまってくれないんだ?










蒔風が消えゆく「奴」をずっと見据える。
しっかりと消えるまで安心できないという思いがあったのだろう。




が、その目に、信じられない物が映る。



「消える・・・・へ・・・これで終わり・・・・とか思ってんじゃないだろうなァ?」






笑った。





笑ったのだ。
いつもWORLD LINKをくらい、憎悪を叫ぶ「奴」が、この状況で笑ったのだ。
その事実は、あまりにも不気味。




この男は、ハッタリなどしない男だ。
何かある、と言った以上、そこには必ず何かがある。






「終わらねぇよォ・・・・まだ終わらねェ・・・・この世界で終わらせるって決めてきたんだ・・・・・」






もはや下半身と両腕の消えた「奴」が、まるで勝利を確信したかのようにニヤリと嗤う。







「このまま終わっちゃ、そろそろマンネリだって思わないか?」

「な!?」





「奴」が、それを始めた。





周囲が歪み、世界が揺れる。

















捕食者、いまだに諦めず。











to be continued
 
 

 
後書き

アリス
「WORLD LINKやっても終わらなそうですよ?」

そうですねェ。
まあ、一応明記しておきましょうか?



【the days】


構成:"no Name"100%

最主要人物:蒔風舜

-WORLD LINK- ~WEPON~:銀白の翼人の覚醒

-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:「奴」の消滅



だったんですけど・・・・・



さて、どうなる!?
どうする!?



ではまた次回















あなたがこの鍵を手にするならば、あなたは世界の理からの外れる、真の異端者になります
 
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