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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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111部分:弓と雷とその二


弓と雷とその二

 まずはフリージ軍歩兵部隊の前進から始まった。テルシオが地響きを立てながらゆっくりと進んで来る。
 テルシオとは巨大な方陣である。五千を一つの単位として百人を一列とし横に四十六列組まれる。四隅には百人ずつ十人十列で魔道師が櫓の様に配される。長槍を持つ重装歩兵が主力だが陣の表面には魔道師が、中心部には弓兵が置かれている。魔道師は射撃用であり弓兵は飛兵対策であった。元々はトラキアの竜騎兵に対抗する為に考えだされたものであり防護の固さ敵軍に与える威圧感で知られている。レンスター各地の反乱勢力はこのテルシオの前にことごとく敗れ去っておりフリージ軍の切り札の一つとされている。
「来たな」
 オイフェはゆっくりと、だが確実に近付いて来る敵軍を見ながら言った。
「中央に伝えよ、予定通り攻めるぞ」
 伝令に指示を伝える。解放軍の部隊がそれぞれ動いた。
「テルシオを止める術は無い。時が来ればイシュタル様に魔道騎士団を動かされるよう進言するか」
 ムハマドは前進するテルシオを見ながら呟いた。彼の頭の中で今後の戦局が流れだした。 
 解放軍の弓兵と魔道師がテルシオの両隅に向かう。後に歩兵部隊が続く。
「横に回り込むつもりか。無駄な事を」 
 隅の魔道師達が攻撃を仕掛ける。だが斜めであり攻撃を殆ど与えられない。
 魔道師達が左右に散り弓兵が中央になる。その真正面は先程攻撃を仕掛けて来た魔道師達である。
「射て!」
 ロナンが号令を下すと矢が一斉に放たれる。刑そうな魔道師達は瞬く間に針鼠の様になり地に伏す。
 続けて左右に散開していた魔道師達がテルシオの隅へ一点集中攻撃を仕掛けた。次々と兵士達が倒れだす。
 テルシオの動きが止まった。もう一度弓と魔法の斉射が行なわれ堅固な壁に穴が開いた。
「今だ!」
 弓兵と魔道師がさらに左右に散った。思わぬ攻撃に立ち止まったフリージ兵達の横腹へ斧や剣を手にする歩兵達が斬り込んで来た。
「こうやって殴り込むのもしばらく振りだな!」
 ダグダが銀製の大斧を両手で持ち左右に派手に振り回す。敵の兵士達が次から次へと薙ぎ倒されていく。
「おいダグダ、一人だけで目立つんじゃねえよ!」 
 その後をヨハルヴァが追い掛ける。後から左手にやや小振りの斧、右手に剣を持つオーシンとハルヴァンが続く。
「テルシオはその名の通り城、城ならば城壁を壊し中に突入すれば良いのです」
 オイフェは次々と解放軍に突き崩されていくテルシオを見ながら隣にいるセリスに言った。
「成程、その為の散陣だったんだね」
「はい、兵を小さい単位ごとに分け指揮を執り易く動きを速くする事により連携と集中攻撃を容易にさせました。これでテルシオは破りました。しかしこれはまだ第一段階です」
「カラコールだね」
 オイフェは無言で自信に満ちた笑みをセリスに向けた。
 テルシオは為す術もなく崩されていく。崩されたテルシオの兵士達はそこに集中攻撃を受け各個撃破されていく。
「イシュタル様、テルシオが・・・・・・」
 解放軍の思いもよらぬ戦法による苦戦の有様は本陣に控えるイシュタルの目にも映っていた。
「まさかこんな戦法があるなんて・・・・・・。流石に兄上を破っただけはありますね」
 冷静に眼下で繰り広げられる戦闘を注視している。フリージの誇っていた必勝戦術テルシオは一つ、また一つと突き崩されている。
「左右の魔道騎士団に伝えなさい、すぐにカラコールで敵軍の側面を攻撃せよ、と。中央には私が行きます」
「はっ!」
 伝令将校がサッと敬礼した。
「まだ負けたわけではありません、ここを凌げば必ず勝利を手中に収められます」
 イシュタルの指示により左右に位置していた精鋭雷騎士団を中心とする魔道騎士団は一斉に馬腹を蹴り駆けだした。狙うは勢いに乗る敵の横腹である。
「よし、手筈通り行くぞ」
 左翼の騎士団を率いるアレスは砂塵を高く巻き上げながら向かって来る敵を見ながら言った。そして鞘から剣を抜いた。主に呼応するかの様に魔剣が黒く輝く。
 フリージ軍魔道騎士団は横二十人十列でそれぞれ同じ速度で突き進んで来る。将校の引き抜かれた軍刀が振り下ろされた。
 
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