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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第24話 猟犬の群れに帰る迷い犬達

 
前書き
 ドイツの美人2人組が衛宮邸から居なくなります。 

 
 ヒカルの下に急ぎむかっていたアヴェンジャーだが、突如足を止めた。

 「・・・・・・逝ったか。お前の結末はどちらにしても死が待っていたが、満足いく結果になったのならいいが・・・」

 ヒカルの憤怒の力を感じれるアヴェンジャーは、力の完全喪失を感じ取って彼女の死を認識した。

 「フン。俺が感傷に浸るなど、らしくも無さ過ぎる」

 アヴェンジャーは向かっていた逆方向へ向けて踵を返す。

 「そもそも俺がファリア神父の代わりになれるわけがあるかよ」

 だがそこでヒカルが自分を先生と呼んでいた事を思い出す。

 「短い間だったか、ガラにも無い夢を見たモノだな。だがこの身は永遠の復讐者(アヴェンジャー)なれば、この世の怨念にして悪鬼こそが俺の配役よ」

 故に自分は地獄をこれからも渡り歩く義務――――いや、権利があると、自分が導いた果ての少女とは決定的に違う事を改めて思い知る。
 故に願わくば、死した後位はヒカルに安寧の中で過ごして欲しいとも思うのだ。

 「さて、次の任務(地獄)に征くとするか」

 今日までの数日の間の事をすべて終えた事と処理し、この町を出て行くのだった。


 -Interlude-


 何とも言えない戦闘の終幕だったが、それでも歩みを止めてはならないのが自分達である事については理解出来ているので、帰宅の準備を進める。

 「お前がモロを送っていくのか?」

 エジソンがリズを、百代がティーネを、シーマが安らかな笑みのまま亡くなったヒカルの遺体を運ぶのだが、何故か士郎がモロを送る事になった。

 「お前は疲れてるだろうし、俺の家にそのまま泊まっていけ。今から川神院戻っても説明がややこしくなるぞ?」
 「それは、まあ・・・」
 「それに師岡には記憶操作をしなきゃならないからな」
 「待て、何だそれは!?」

 士郎のさらっと発した言葉に百代が即座に待ったを掛ける。

 「その必要性も説明に関係してるんだが、これは今しなきゃ駄目か?」
 「せめて最低限の理由くらい教えろ!モロは私の大切な仲間の1人だぞ!」
 「分かった。説明の件以外での理由は、今夜の件の記憶を隠蔽しないと、師岡の今後の人生の大きな影響を及ぼすからだ」
 「私の仲間を甘く見るなよ士郎!痛みの伴う思いでだろうと、私の仲間なら乗り越えて行くぞ!」
 「それは彼にとって、自分の与り知らない所で大切な人間の理不尽な死についても、乗り越えられると言い切れるものなのか?」
 「っ!」

 百代は何所までも冷静で端的な指摘にたじろいだ。

 「師岡にどう説明する気だ?彼女の死を。どう納得させる?さもなきゃ彼の今後の人生は滅茶苦茶になる、切っ掛けになりかねないぞ」
 「・・・・・・・・・」

 何も言い返せずに俯く百代。
 本音は言い返したいが、そこまで傲慢にも無責任にもなれないのだ。

 「だが矢張り、師岡は百代の仲間だと言う事も解る。だからここで決めてくれ。師岡の記憶を一部分消すか否か。お前が」
 「・・・・・・・・・やってくれ」
 「いいんだな?」
 「ああ」
 「分かった。時間がいるから3人は先に帰ってくれ」
 「了解した」
 「行くぞモモヨ」

 後ろ髪を惹かれながらも、3人の言葉に促されて百代はその場を後にするのだった。


 -Interlude-


 黒子の抜け殻があるビルの屋上には、現在百代に吹っ飛ばされた筈のラミーがいた。
 ラミーは別に黒子の様子を見に来た訳じゃ無い。
 今現在進行形で宙に浮かぶ映像通信越しの相手からの指定場所が此処だったからに他ならない。

 『私の言う通りだったろう?』
 『何所がだ・・・!あんな雑魚に何の価値があると言うッ!?私を揶揄っているのか!』
 『他意はないが・・・・・・その割には罅が入ったのだろう?』

 通信映像先の指摘通り、百代に吹っ飛ばされた時の攻撃で鎧に罅が入ったのだが、今はもう痕も無くなっている。

 『何故知っている?』
 『その鎧を渡したのは私だぞ?それにその鎧の特殊性を鑑みれば、私が把握していても何ら不思議はあるまい?』
 『フン。――――良いだろう。今回は殺す必要のない価値位と評価して見逃すとしよう』

 ビルの屋上から帰宅中の3人を見下ろすラミー。
 だがそこでふと、いや漸く気にし始めたことを指摘する。

 『ところで、黒子(それ)はやられたのか?』
 『そうであるなら越した事は無いが、無理だろうな。黒子(それ)を滅ぼすには、この世全ての歪みを排し、生きとし生けるもの全てを高次元の存在へと進化させねばならない』
 『つまり世界が滅びない限り、奴も滅びる事は無いと言う事か』

 ラミーは世界の歪みも人の愚かさも全て知り尽くしている。
 故にそんな夢物語が実現する筈がないと、侮蔑の意味を込めて嗤うのだ。
 そう、当人を省いた会話を続けていると、殻となっている黒子の全身が突如震えだし、収まると――――。

 「――――」
 『戻ったか』
 「当然だ。彼の雷光の殺意(想い)を成されるがままに受け止めて汲み取ってやりたい所だが、私(仮称)には私(仮称)に救い求める全ての命を救済する義務がある」

 これ以上話す必要はないと言わんばかりに、黒子はラミー達に振り向きもせずに帰還するためにその場から去った。

 『相変わらず嫌われているな?まあ、無理ないか。アレを黒子と言う殻とサーヴァントと言う殻に無理矢理押し付けたのは貴様なのだろう?マスターピース創設者(グランドマスター)殿♪』

 明らかに皮肉気にかつ、含みを持ったラミーの言い様に動じることなく通信映像先のモノ(・・)は言う。

 『アレは必要な措置だった。出なければ、今頃あらゆる平行世界(世界)から善悪種族存在の在り方差別なく、主義主張の区別すらも無く全てが悉くアレのやり方による救済を強制されていただろう』
 『だがあの二つの殻には時間制限がある・・・・・・だろ?』
 『そう。だからこその――――《マスターピース》だ』


 -Interlude-


 モロを送り届けた士郎は少ししてから衛宮邸に帰って来ていた。
 玄関では早速話してもらうと息巻いていた百代が仁王立ちで待っていたが、大事な話なので他のメンバーもそろえる前提で明日の放課後に話すと言い聞かせ終えてもいた。
 そんな幾つもの修羅場を越えた後だと言うのに、少し遅れて何時も通りの朝食の仕込みなどを始めようとした時だった。

 「――――すいません。士郎君」
 「ん?」

 キッチンにてエプロン姿で下ごしらえを始めようとした時に、士郎の背後から声を掛けて来たのはティーネとリズの2人だった。
 だが衛宮邸で暮らすようになっていた何時もの2人の雰囲気とは何処かが違った。
 緊張していながらも冷静で、記憶を失っていて保護されているという身分からの申し訳なさそうな態度も失せていると士郎は感じた。これはつまり――――。

 「2人とも――――いや、御2人とも記憶が戻られたんですか?」
 「っ!」
 「よく解りましたね?」
 「単なる予想とカマかけですよ。猟犬部隊副隊長フィーネ・ベルクマン殿」
 「・・・・・・・・・」

 士郎に本名と正式な肩書きで呼ばれた事に、今の自分はもうティーネでは無いのだなと改めて自覚すると共に、自分を叱咤したくなるほど心の底では悲しくなっていた。

 「どうかしましたか?」

 異性からの好意に鈍いくせに、親しい女性の悲しそうな感情の表れや兆しには敏感な士郎。
 そんな士郎に今くらいは放っておいてくれと、理不尽にも似た苛立ちが僅かに湧き上がったが、直にそれを処理する。

 「何でもありません」

 その代わり声音に僅かに苛立ちが混ざってしまった。
 勿論これにも聡い士郎。

 「何か怒ってます?」
 「怒ってません」
 「怒ってますよね?」
 「怒ってない!」
 「う゛・・・わ、分かりました」

 気遣えるか、まではまた別の話である。

 「そ、それで、御2人は俺に如何して欲しいんですか?」

 此処からが本題。

 「はい。我々の今後と藤村組への迷惑への謝罪も含めまして、フランク中将への連絡の許可を頂けないかと」
 「それなら大丈夫です。明日の昼間、フランク中将閣下が藤村組にお越しになると言うのは既に決定済みですので」
 「それは・・・・・・私達を取り返そうとした私たちの仲間の引き渡し交渉も含めての事ですか?」
 「話が速くて助かります。その時に雷画の爺さんと同伴してもらう事になりますが、それで構いませんか?」
 「「はい・・・」」

 これで話は済んだ。もう、自分達と士郎との関係は他人同然なのだと、今さらながらに気持ち的に頭を垂れたくなるほど気が沈んだまま、宛がわれた部屋に戻ろうと踵を返す。
 だが士郎からは、それで終わりでは無かった。

 「あと御2人――――いや、2人とも」
 「「は、はい!?」」

 まさか話が続くと思っていなかったので、2人とも同時に慌てて振り向く。
 士郎自身は2人を見ることなく、下ごしらえを始めながら言う。

 「図々しいかもしれませんが、僅かな期間とは言え2人はこの衛宮邸の一員――――家族でした。それは俺の中では今も変わっていません。その事を如何か忘れないでいて下さい」
 「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 まさかの言葉に面喰らって固まる2人。

 「言いたい事はそれだけです。ではおやすみなさい。ティーネ(・・・・)さん、リズ(・・)さん」

 既に本名を把握されているにも拘らず、仮初の名で未だに呼んでくれた士郎に対し、心なしか2人揃って頬を紅潮させるのだった。
 また(・・)、である。


 -Interlude-


 日が開けて、既に登校時間どころか授業すら始まっていると言うのに、もうすぐフランク・フリードリヒも到着する時刻にフィーネとリザを同伴させた士郎が何故かいた。

 「士郎。これはあくまでも藤村組の問題の延長線上じゃ。お前が付き合う義務は無いのじゃぞ?」
 「ですが権利はあります」
 「し、士郎・・・」
 「私達を庇う必要は――――」
 「大いに有る!」

 休学する必要は無かったのではないかと言う気遣いからの雷画の言葉に、士郎は頑なかつデスマス口調で応じる。
 更には2人が士郎を宥め止めようとしても、断固とした態度を崩すつもりはない様だ。
 その士郎の反応に思うところがあったのか、嵐臥が圧を掛ける。

 「お前が気になってるのはそいつらの処遇だろ?俺達がそんなに信用できないのか?」
 「信用できるか否かではありません。たとえ短い時間と仮初の名であったとしても、2人とも間違いなく衛宮邸の一員であり、家族だったんです。なら家の大黒柱である俺が彼女たちの処遇を見届けるのは当然でしょう」

 自分の圧力にも負けず、一切怯みもせずに目線も逸らさず堂々と言い返す士郎に、深い溜息をする。

 「まったく血が繋がって無ぇのに、こういう事に対する時は切嗣とそっくりの目ぇしやがって」

 士郎の譲る気は無いと言う姿勢に、嵐臥は今は亡き友人である切嗣の面影に被せながら渋々引き下がる。
 そんな時に藤村組本邸の専属給仕長から、フランク中将が到着したと伝えられ、各々身構えた。


 -Interlude-


 フランク・フリードリヒは藤村組との交渉――――と言っても全面的に悪いのは自分たち側であるので、要求と全て受けるだけである。要求は以下の通り。
 一、今回の騒ぎで藤村組が被った費用をフランク中将が全て負担する事。
 二、さらには引き渡しに関する事も含めての相応の示談金(慰謝料)を治める事。
 三、躾が行き届いていない猟犬部隊のメンバーへの徹底した再教育。
 四、躾が出来ていない猟犬部隊の面々は、出来るまで1人たりとも日本の地に足を付けることは許されない。
 五、今後二度と今回のような騒ぎを起こさない事。
 六、――――・・・。
 七、―――・・・。

 そしてこれらの要求がもし反故にされた場合、藤村組雷画のパイプを使い、ドイツの現政権への通告とフランク中将の右腕一本を貰うと言うモノになった。
 そうして粛々と交渉が終わりに向かって行く中で、言い忘れたと雷画がフィーネとリザを見てから言う。

 「今回の事で2人の記憶についての事なんじゃがの」
 「魔術に関する隠匿でしたら必要ありませんよ?彼女たちは猟犬部隊の中で立った2人だけ魔術の事を既に知っている立場ですから」
 「「なっ!?」」

 フランクの言葉に同席している士郎と嵐臥の2人は驚愕に包まれる一方、雷画だけは大したリアクションを見せていない。

 「その反応・・・・・・組長殿は予想されていたのですかな?」
 「いや、十分驚いておる。ドイツ一の魔術師の名門フリードリヒ家当主よ」
 「「えっ!?」」
 「やはり私の事は知り得ていましたか。しかし名門だったのは一世紀以上も前の事です。私の祖父の代でフリードリヒの魔術回路は死滅したそうですから」
 「ほぉ?」
 「ですが知識だけは学んできましたよ。魔術に関連する存在が脅威となった時、祖国は勿論、家族や友人たちを守るために」

 士郎達が驚いていることをよそに、雷画は1人だけ納得のいく顔をしていた。

 「なるほどのぉ。で?この娘っ子共には何故教えているんじゃ?」

 この状況で何所までも上から目線が出来る立場とは言え、その言い方は本来礼を失しているのだが、未だ引き渡しが完了していない現時点ではまだ士郎の家族の一員と言える位置なので、それを考慮した上での発言である。
 その言葉に応対したのは聞かれているフリードリヒでは無く、話題の本人たちだが。

 「私の家――――ベルクマンは魔術師の家系としては浅いのですが、ですがそれ故に今でも魔術回路が死滅することなく続いているのです。しかし、私の両親や祖父と祖母は魔術師の宿命にまるで興味を持たずにいるので、私自身も根源への到達には何ら興味を持っていません」
 「それを信じるに値する根拠は?」
 「証拠も根拠も明確に提示できるものはありませんが――――私達を未だに家族と慕い庇ってくれている士郎君に誓って」
 「フィーネさん・・・」
 「ふぅむ」
 「ほぁー」
 「ほぉ?」

 士郎はフィーネから寄せられる信頼に対して仏頂面のままだが、内心では好意で満ちていた。
 だからフィーネの言葉にある意味衝撃を受けていたのはそれ以外の男3人である。

 「な、何でしょうか?」
 「「いや、別に」」
 ((またか))

 雷画は「こりゃ、ひ孫の数が多くなりそうじゃわい」と内心で遠くない将来(確信)に期待し、嵐臥は「そう言う風に女性をいつの間にかに誑し込むところも切嗣そっくりだな」とまたも亡き友人と被せる。
 そしてフランクは意外感を露わにする。
 上司としてフィーネの性格をほぼ把握しているからこそ、彼女の言葉には興味と関心を持たずにはいられなかった上、彼女たちを未だに庇い続け、フィーネに此処までいわせる士郎個人を現代に残った侍の1人として、より一層気に入るのだった。
 だが当の本人は理解不能な視線に晒されて、非常に居心地が悪くなった。

 「は、話を続けて宜しいでしょうか?」
 「構わぬが、まだ続きがあるのか?お主自身が今現在も魔術を知り得ているのは、フランク中将と同様の理由からじゃろ?」
 「う゛・・・・・・そうです」
 「ふむ」

 そうして今度はリザを見る。

 「オ・・・私は――――」
 「セイヨウニンジャと呼ばれてるくらいじゃから諜報関係先で偶然知る機会があったからじゃろ?」
 「よ、よく解りましたね?」
 「お主が知っているのであれば、部隊の立場を考えれば予想はつくわい。しかも一度は記憶操作を受けたんじゃろうが、二度三度と続いて行き、しょっちゅう記憶操作をしていてはキリが無いと判断されて、仕方なく知る立場として認められたと言った所じゃろ?」
 「・・・・・・御慧眼通りです」

 自分が説明すべきことを全部言われたリザは、何も言えなくなり認めるしかなかった。

 「こんな事ならすぐにお主に連絡して引き渡すべきじゃったわい」
 「申し訳ありません。何分極秘事項のひとつでしたので・・・」
 「まあ、そうじゃろうな」

 一拍置いて。

 「これで終わりじゃが、何時連れて帰る?」
 「出来れば直にでも。要求を全て飲む上でしなければならない事が山積みですので」

 じゃろうなと、無言で納得する。
 そして――――。

 「直に支度せい。別れの準備もな」

 この言葉に士郎に連れられて、2人は衛宮邸に戻る。いよいよ帰る為に。


 -Interlude-


 支度を終えた2人は、衛宮邸の玄関で別れの挨拶をしていた。
 先にリザが、次にフィーネが別れの言葉を交わしている。

 「本当に迷惑を掛けてしまったな」
 「俺の事でしたら気にする必要はないと言ったはずですよ?」
 「・・・そうか?いや、そうだったな・・・」

 リザもフィーネも口調を以前のモノに戻している。
 それはこれ以上引きずらない為に、切り替えに必要な儀式の様なモノでもあるからだ。
 ともあれ、フィーネもリザと同じく最後に握手をする。

 「これからも大変でしょうが頑張って下さい」
 「ああ、士郎も達者でな」
 「2人とも堅苦しい。今生の別れでもないだろうに」

 真面目な2人の挨拶をスカサハが指摘するが、フィーネは何とも言えない顔をする。

 「かもしれませんが、私は副長の地位に居ながら騒ぎを起こした1人です。ですから日本にて任務を与えられない限り、数年は顔を見せる事も出来ないでしょう」
 「ならば士郎の方から顔を見せに行けばいい話ではないか?如何だ?」
 「勿論ですよ」
 「いや、その様に言ってくれるのは嬉しいが、そこまで甘えるわけには――――」

 スカサハの提案に即答する士郎に対して、本心では嬉しいがケジメとして頷く訳にはいかないフィーネ。
 だが士郎はそんなフィーネの中途半端な言葉を言い切らせない。

 「しつこい様ですが、リザさんもフィーネさんも短い間とは言え、衛宮邸の一員であり家族だと今でも俺は思っています」
 「士郎・・・?」
 「そんな家族が日本から離れた遠い地で頑張っているのを応援しに顔を見に行くことの何がいけない事なんですか?いや、誰が何といおうと俺は見に行きますよ」
 「士郎・・・」

 半ば告白的な台詞に、何所までも生真面目なフィーネは感謝の言葉は出せずにいた。拒絶の反応もしないでいたが。

 「困っている時も連絡してください。何時でもかは難しいかもしれませんが、出来るだけ早く駆け付けますから」
 「・・・・・・わかった。感謝する士郎」

 そうして今度は両手で強く握手をして、リザと共に玄関から外に出ようとする。
 しかしそこでリザだけが踵を返す。

 「リザ?」
 「悪い。お前と士郎の会話でオレ、我慢できなくなっちまった」
 「リザさん?」

 リザは士郎の目の前まで行くとまず謝罪から始める。

 「悪い士郎。こんなことしたら、お前にどんな枷が出来ちまうかも予想出来ないんだが、最後に一つだけオレの我儘を許してくれ」
 「我儘ってなんんっ!?」
 「んちゅ」

 士郎の言葉を待たずに口付けをするリザ。
 当然周囲の4人は驚くなどのそれぞれの反応を見せる。

 「リザ!?」
 「おおっ!」
 「ほぉ・・・」
 「ふむ」

 だが周囲の反応などお構いなしに、リザは士郎を決して逃がさないように頭を押さえた上で、さらに士郎の口内に舌を侵入させる。

 「ふぐむ!?」
 「んん・・・ちゅる・・・んん・・・れる・・・」

 それを続ける事30秒ほど。
 満足したと言う事か、士郎の口から自分の唇を離すリザ。

 「リ、リザさん・・・な、何で!?」
 「別に返事なんていらないぞ?ただオレが我慢できなくてしただけだからな。それと――――」
 「そ、それと・・・!?」
 「――――士郎、お前を愛してる」
 「えっ――――――」
 「って事で、じゃあな!」

 一瞬で女の顔から何時もの彼女らしい笑顔に戻り、またしても士郎の反応も見ず返事も聞かず、未だ驚き続けているフィーネの手首を掴んで玄関を出て行った。
 そして残された士郎は――――。

 「えぇえええええええええええぇええええええ!!?!?」

 頬を紅潮させたままの士郎は、キスされた自分の口を押さえながら、ここ最近で一番の驚き様を見せるのだった。 
 

 
後書き
 次回は勿論百代への説明会です。 
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