ドラゴンクエストビルダーズ:アレフガルドを復活させられてます(新リュカ伝)
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第1章:メルキド編
27:言葉は時に重荷になる。
(メルキド地方)
リュカSIDE
誰にも会いたくなかった……誰とも別れをしたくなかった俺は、山を迂回するルートはとらず、少し険しい登山ルートで光の柱へとやって来た。
このルートなら俺が居ない事に気が付いたメルキドの連中が、追いつく事も無いだろうから。
光の柱の麓には魔方陣のような不思議な装置が設置してあり、俺が近付くと天まで昇る光の柱は消え、魔方陣の中央だけがボンヤリ光を放ってる。
これの中に入れば次に行くべき土地へと行ける仕組みだろう……
ルビスは『次の土地はリムルダールです』って言ってた。
そう、水の都リムルダールだ!
町を復興しながら、水場で遊べる施設を造って、女性限定の際どい水着なんかも作っちゃってウハウハなビルダー人生を歩もう。
いや待てよ……女性(+俺)だけが利用できる施設として周囲を壁で囲っちゃえば、別に水着を着る必要も無いよね。
そうなると併設するようにベッドルームなんかを造っちゃえば、それは正に桃源郷だね。
イヤホォ~ウ!! 楽しくなってきたぜぃ☆
そうなれば早く次の土地へと旅立たねば!
アホな女神が『やっぱり親しくなった人々との別れは辛いですよね。解りました、リュカはこの土地に永住して下さい』って間違った気の使い方をしかねない。
アホが勘違いする前に行くぞ!
「リュ、リュカよ……待ってくれ!!」
「あ゛!?」
楽しすぎる未来を思い描いて、いざ次の土地へと旅立とうとした瞬間、背後から何者かが声をかけてきた。
「や、やはり行ってしまうのだな?」
振り向くと、そこには息を切らしたヒゲの姿が……このオッサンに、あの険しい山越えルートは無理だから、多分平坦な迂回ルートを走ってきたのだと思われるが、この早さで追いつけるはずもなく、昨晩発見した光の柱を見て俺の行動を予想して、夜の内に先回りしようと町を出たのだろう。
「もうメルキドに僕の力は必要無いからね……皆の団結力も高まったし、物作りの能力も取り戻してるし、あとは皆次第だよ」
ルビスが勘違いしないように、それらしい事を言って先を急ごうとする。
「我が輩等と一緒に暮らして欲しい……と言うのは我が儘なのか?」
「ああ我が儘だ。アレフガルドは未だ未だ広い。メルキドだけを復活させても、他で苦しんでる人々が存在する。お前の勝手な希望だけを叶えてやる訳にはいかないんだよ」
そうだ! 俺の希望を叶えるのが先決。美女と水辺でイチャイチャ施設を造るんだ!
「そうか……そうだな。つまらぬ事を言って悪かった。お前はルビス様から重要な使命を帯びているのだったな」
「まぁね……あの女、直ぐ泣くからさ」
「お前とルビス様は、一体如何いう関係なんだ? そんなぞんざいな言葉遣いをするなんて……」
「古い……それはもう古い知り合いだよ」
前世での知り合いに、扱き使われるって何なんだろうね?
「……そ、そうか。ではリュカよ、これを受け取ってくれ」
苦笑いのヒゲは俺に布に包まれた丸い物を手渡してきた。
「これは?」
中身が何なのか気になったが、先に何かを聞いてみる。
「実はな……ピリンもお前が旅立ってしまう事に、薄々感付いて居ってな、我が輩が町を出る前に手渡されたのだ。だから中身は我が輩も何だか判らないが、それはピリンの真心が詰まってるはずだ。新たな土地に辿り着いてから中身を確認してくれ」
「分かった……お前からの贈り物だったら投げ捨てようかとも思ったが、ピリンからのなら大事にする(笑)」
「お前という奴は……」
半分以上本心だったけど、冗談を言ってると思ってくれたヒゲは笑ってくれた。
さて……これ以上ここに居ても時間の無駄だし、さっさとリムルダールへ旅立とう。
「じゃぁな」
「あぁ……達者でな……」
俺の短い挨拶に、涙で詰まらせながら返答するヒゲ……
案外涙もろい男だな。
元々俺は、この世界に居るべき人間じゃないのだから、泣く必要は無いのに……
そんな事を考えながら、光る魔方陣に足を踏み入れる……
すると突然視界が真っ白になり、体中に電流が走った。
ちょ……何コレ! 結構痛いよ!!
(誰かの記憶の中)
体中に電流が走り、意識を失った時……
見覚えのない景色が俺の目の前に広がって行く。
そこには冴えない1人の兵士の姿が……
『……え? 何ですって? 王様からのお言葉を忘れてしまったのですか!?』
は? 俺は何も言って無いけど……あぁそうか、これは誰かの記憶の中か。
この世界に辿り着いた時にも、くじけちゃった勇者様(らしき人物)の記憶を垣間見たな。
『頼みますよ……大事な事なんですから……』
うるせーな……下っ端兵士のクセに、生意気だな。
実際に俺が体験してる出来事だったら、この兵士を殴ってるね!
『では、私から王様のお言葉を伝えましょう……』
偉そうだな……俺、偉そうな奴って嫌い。
虐めたくなるんだよね。
『その昔、伝説の勇者ロトはカミから光の玉を授かり、この世界を覆っていた魔物達を封じ込めたと伝えられています。しかし何処ともなく現れた悪の化身“竜王”がその玉を闇に閉ざしてしまったのです。このままでは世界は闇に飲み込まれ、やがて世界は滅んでしまう。竜王を倒し光の玉を取り戻す。それこそが、あなたの使命なのです!国中の人々があなたに希望を託してます。どうか竜王を倒し、この世界を救って下さい』
一方的に使命を押し付けられ、冴えない兵士の映像は消える。
残念だったな兵士君……お前が希望を伝えた相手は、心が折れて竜王に寝返ったよ。
偉そうな態度をしてっから、勇者さんだって嫌になるんだ。
『彼女と何時までも、こうして一緒に居たい。こんな僕の気持ちも魔物達に踏みにじられる日が来るのでしょうか?』
今度は若い男が女性(多分恋人)の側で俺に向かって嘆いている。
『あぁ!でもきっと、あなたなら竜王を倒してくれる! 僕はそう信じています!』
信じるのは勝手だが、面倒事を押し付けてるだけにしか見えないぞ。
お前が竜王を倒せと言いたいね。
『彼と一緒に居ると、世界が闇に覆われるなんて嫌な事も忘れられるわ』
今度は隣の彼女が話しかけてくる。
楽観的な女だ……まぁ絶望的な人間より良いか。
『でもそれは嘘……世界が滅べば、私達の愛も終わってしまうって彼が言うんです。だけど……きっとあなたなら何とかしてくれる。だってあなたは伝説の勇者の子孫ですもの!』
ふざけんなよ……勇者の子孫ってのは、子孫ってだけで、勇者じゃねーっての!
またもや場面が切り替わり、若い男が俺に話しかけてくる。
『闇の竜、翼を広げる時……ロトの血を引く者来たりて闇を照らす光とならん。……これ、僕の祖父の口癖なんです! おお神よ! 古の言い伝えの勇者となり得し者****に光あれ!』
何奴も此奴も……自分が危険な事をしないからって、気楽に希望を託してくれる!
“自分も一緒に旅立ちます!”とか言う奴は居ないのかね?
楽して平和を満喫しようって気が、ヒシヒシと伝わってきて気分が悪い!
大体……俺は使命とか運命とか言われるのが嫌いなんだよね。
色恋事で“運命の出会い”とかはロマンティックで許せるけど、世界の平和に関わる事で“使命だから”とか“運命でしょ!”とか言われて、こちらの自由意思を無視されるのがムカつく!
あぁ……だから前任者は竜王に寝返っちゃたのかな?
でも、最後の最後で寝返るのも問題あるよね。
その所為で俺が苦労してる。
でも元を正せば、何でも勇者の子孫に押し付けた人々の所為じゃね?
俺が苦労してるのも、アレフガルドの人々が気楽に使命を押し付けちゃったからじゃね?
……あれ? この世界を復活させてやる必要があるのか?
リュカSIDE END
第1章:メルキド編完
後書き
そんな訳で、第1章は終了です。
次話から第2章に突入。
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