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シークレットガーデン~小さな箱庭~

作者:猫丸
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-荒くれザンク編- 2




隣町。

隣りといってもルシアの住む村からかなり離れており、町まで行くのに二日はかかる距離にある。
だけど村の近くにある人が住んでる場所はそこしかなく、自然に村人たちは隣町と呼ぶようになった。

「ふぇ~~結構、広い町だったんだ~」

村に比べたらそれなりに大きく沢山の行商人が行き交う商人の町。
町の入口で大きな口を開けたランファは目をまん丸にし 
興奮気味な声でもの珍しそうにキョロキョロと建物や人々を見ている。

「うん。住んでる人はお年寄りばかりだけど結構大きな町なんだ」

「ふ~ん…」

簡単に町の説明をするルシアの話をランファはどこか物悲しそうに町や人々を見つめながら聞いていた。
ルシアは町ではちょっとした人気者で少し歩くだけでいろんな人たちに声をかけられる。


「ルシアちゃん、こんにちは」

「あ、こんにちは。おばさん」

「いつもお手伝いありがとねぇー」

「いえ、僕の方こそありがとうございます」

「おっルシアじゃ、ねぇーかぁ」

「こんにちはおじさん」

「なんだぁ、ルシアのくせに女連れかぁ~このこの~」

「いっ、いやそんなんじゃないですよっ」

「おやルシアちゃんかい?」

「おばあさん、こんにちは。」

「こんにちは。ヨナちゃんの容態はどうだい?」

「……元気ですよ。まだ咳が止まらないみたいだけど」

「そうかい…それは大変だね」

ルシアのそばで黙って歩いていたランファはそばに歩み寄り小声で

「人気者だねっ」

「…うん。みんなも貧しいはずなのに僕とヨナのために仕事をわけてくれるんだ…」

「だからホントのことを言えないと?」

「…うん」

ヨナが連れ去られた事は誰にも告げずたった一人で探す予定だった。
少々想定外のランファが強引についてきたが、誰にも告げづにというのは変わらない。
なにか大きな事件が起きない限りは…。


沢山の商店街が立ち並ぶ隣町一番の目玉商店大通り。今日も沢山の人々が集まり行き交う。
「目玉は絶対行かないとっ」とゆうランファに連れられルシアも渋々商店大通りを行き交う人々の中へを入って行く。

「きゃっ!」

「あ、ああ……すみません」

ランファが通行人と肩をぶつけ声をあげる。
ルシアはすぐにランファの元へ駆け寄りぶつかった通行人に視線をやる。

「大丈夫、ランファ?……ってジェームズお爺さん!?」

ぶつかった通行人はルシアがいつもお世話になっているお爺さんだった。
お爺さんは泣きながら地べたに膝を付きすがりつくかのように

「お、おお……ルシア君かぁぁぁ」

ルシアの腰にしがみつき顔を伏せて

「ど、どどうしたの?」

「シレーナが……シレーナが……」

とオロオロと同じことを繰り返し言い出した。シレーナと聞いてルシアもお爺さんの肩を掴み強い口調で

「シレーナ!? シレーナがどうかしたのジェームズお爺さん!? ねぇっ!?」

と聞いてみるが、やはりお爺さんは同じことしか繰り返さない。それをみかねたランファは

「いやっ、貴方までパニックちゃっだめでしょっ!」

と二人を「どぉどぉ」となだめ落ち着かせる。
ふぅーと一息ついた後、お爺さんは落ち着き

「と、ととりあえず家に戻ろう。……連絡がきとるかもしれんしのぉ」

「……れんらく?」

まだ状況がわかっていないルシアだったが、取り敢えずはお爺さんの言う通り彼の家へと向かうことにした。

「(これは……事件の匂いですよ~。にひひひ……)」

なにか変な方向で楽しむランファの事はひとまず置いといて、町の北側にある大きく立派な一軒家の中へお邪魔する。


家の中はほぼ植物達の世界といった感じで、植物園のように色とりどりの植物がいたるところから生えていた。
…だが決してゴミ屋敷というわけでなくちゃんと人が暮らすスペースもある。
客室へと案内され、ついでにお茶と菓子を用意してもらい改めて先ほどの話の続きを聞くことにした。

「で、なにがあったの?おじいさん」

「……シレーナがぁぁぁぁ」

また同じ展開を繰り返しそうなお爺さんに向かってビシッと厳しくランファは

「またかいっ!いい加減落ち着きなぁーほんとにもぉ~クソジジイがぁ~」

「…………」

と言われたのが相当傷ついたのか、お爺さんはうつむき何も話さなくなってしまった。

「シッ!それだけショックな事が起こったんだよっ」

慌ててお爺さんにフォローを入れ優しく聞き返した。

「お爺さん、ゆっくりでいいから僕たちにわかるように話して?」

しばらくの沈黙の後。お爺さんは重たそうに口を開き

「………じつはな」

話しかけたが

「あっ待って!」

「え?なに?」

なぜかあれほど話させようとしていたランファがお爺さんの言葉を遮った。
ルシアもお爺さんもどうして? と言いたげなポカンとした顔でランファを見つめる。


「今から回想シーンに入るんでしょ?」

お爺さんは無言でコクンとだけうなずく。

「じゃっ、効果音入れないとっ!」

「……こうかおん?」

ルシアの質問はガン無視で自分のペースで進めてゆき

「はいっ!シュワワ~ン」

「しゅっ、しゅわわ~ん……?」

訳わからないながらもランファの言うとおりに効果音なるものを入れ お爺さんによる回想シーンなるものへと突入するのであった。
 
 

 
後書き


名前:ジェームズ 
年齢:80歳 
性別:男
種族:フュムノス
職業:隠居
 
詳細:シレーナのお爺さん。隣町でシレーナと仲良く二人で暮らしている。
独特の話し方するのが特徴的。孫にはベタ甘でいつもデレデレで優しい。

 
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