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母の罪

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第四章

「朝出勤する時とお昼にお薬飲んで楽になってね」
「それでお鼻もなの」
「ましになって測ったら三十七度五分だったわ」
「やっぱり高いじゃない」
「それである程度舌も戻って測ってみたら」
「お料理の後で」
「そう、二人を呼ぶ前にね」
「それで味見したらだったのね」
 奈央もここで事情を理解した。
「こうした味だったの」
「そうだったの」
「御免なさい、今日は」
 恵美は項垂れたまま奈央と夫に頭を下げた。
「お料理失敗したわ」
「というか浮気じゃないの」
「借金でもないのか」
「仕事でミスしたとかクビになったとか」
「犯罪をやったとか」
「違うわ、お料理がね」
 まさにそれがというのだ。
「こうしてね」
「そうだったの」
 奈央は母の説明を聞いて納得した顔になった、夫もだ。
 それでだ、今度はほっとした顔になって母に返した。
「何だと思ったわ」
「そうなの」
「ええ、お料理の失敗ならね」
「あることだからな」
 夫も言う。
「気にすることもないだろ」
「けれど今までこうしたことなかったから」
「というかそんなに熱あったら」
 それこそとだ、奈央は母に言った。
「休まないと」
「お仕事もあるし家事も」
「それでもよ、無理はしないの」
「そうだ、わし等も家族だぞ」
 夫も言うのだった。
「それならよ」
「無理はしないでいいからな」
「そうした時は私達がするから」
「何でもしょい込むな」
「会社も休んで」
「家事はわし等に任せろ」
「けれど私は課長だしお母さんだから」
 そして妻でもあるとだ、二人に言うのだった。
「しないといけないことがあるから」
「責任感はいいけれど」
 奈央はあくまで言う母に眉を顰めさせて言った。
「それでもよ、風邪だったら」
「休まないといけないの」
「今度からそうして」
 娘としてだ、母に言った。 
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