復讐は地獄の様に
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第五章
「いや、本当にね」
「僕は現場を見ていないけれど」
「マスターもね」
「止めたんだ」
「その後で注意されたわ」
それも厳重にだ。
「もう二度とそういうことはしないでって」
「それはそうだね」
「お店の中で怒鳴り狂ったから」
「夜の女王みたいに」
「ヒステリックにね」
それこそというのだ。
「それでね」
「注意されたんだ」
「そうなったわ、いや本当に」
「怒るものだね」
「私もね」
エディタは自分で言った。
「そうなるのね」
「僕も聞いてね」
「意外?」
「そう思ってるよ」
実際にというのだ。
「君がそうなるなんてね」
「やっぱり女の人って」
「ああした怒り方するんだね」
「私も」
自分は、と思っていたがだ。
「そうなるのね」
「そうだね、まあこのことはね」
「このことは?」
「頭の中に入れておこうね」
「自分もああした怒り方をする」
「そのことはね」
ヒステリックに我を忘れてというのだ。
「もうああした怒り方はしたくないよね」
「やっぱりね、怒り狂うとかね」
それはとだ、エディタはペテロに答えた。
「人としてどうかって思うから」
「それじゃあね」
「このことを頭に入れて」
「もう二度としない」
「それが大事ね」
「うん、だから頭に入れておこう」
エディタに穏やかな声で話した。
「そうしてね」
「戒めにすべきね」
「夜の女王のあの歌も思い出して」
「復讐は地獄の様にを」
「まさにそれをね」
「わかったわ」
こうペテロに答えた、そして。
エディタは以後は気をつけてヒステリックに怒ることはしなくなった。夜の女王の様に怒ることは二度となかった。
そしてだ、結婚して子供が出来てからも娘に言うのだった。
「怒るにしてもヒステリックに怒ったら駄目よ」
「この前お母さんが観せてくれた歌劇みたいに」
「そう、魔笛のね」
この作品のだ。
「夜の女王みたいに怒ったら駄目よ」
「あんなに大きな声をあげて怒鳴る様なことは」
「絶対に駄目よ」
「ああした風に怒らずに」
「怒る時も気をつけてね」
そしてというのだ。
「自分を抑えるのよ」
「そうしないと駄目なのね」
「ええ、それはよくないみっともない怒り方だから」
夜の女王の様なそれはというのだ。
「何時でも抑えてね」
「自分を」
「怒る時でもね」
こう言うのだった、かつての自分のことを思い出し戒めとしながら。
復讐は地獄の様に 完
2016・8・22
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