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二人でないと

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第三章

「来てるで」
「それでもその時いつも言うてるんやろ」
「新月ちゃんも一緒やないとってな」
「ほな一緒や」
「うちも新月ちゃんもか」
「そや、二人一緒やないとあかんて言うからな」
 それぞれピンで仕事の依頼が来てもというのだ。
「そやったらな」
「そうなるんかいな」
「そやから絶対にや」
「テレビに出るんやったらか」
「一緒やないとあかん」
 新月は満月に強い声で言った。
「そやからうちもこう言うねんで」
「そやねんや」
「満月ちゃんもそやしな、ほな女漫才師のトップ目指すで」
「頑張ってやな」
「そうするで」
 新月は満月を励ます様にして言った、実際にテレビはいつも二人一緒に出てそれが無理ならマネージャーを通じて丁寧に断りを伝えた、それでだ。
 新月も満月もだ、紗奈衣に頭を下げて言うのだった。
「すんません、仕事断って」
「いつも一緒やないとって言って」
「折角オファーが来てもそう言って」
「ほんまにすんません」
「確かにや」
 紗奈衣は頭を下げる二人に話した。
「仕事を断るのはよくないで」
「やっぱりそうですね」
「芸人としてやったらあかんことですね」
「仕事を選ぶなんて」
「そんな恐れ多いことしたら」
「漫才師のコンビとしてはええわ」
 これが紗奈衣の返事だった。
「それはな」
「ええんですか」
「断って」
「やっぱり漫才は二人でやるもんや」
 紗奈衣もこのことを言うのだった。
「そっから外れて方っぽだけ売れてもや」
「それでもですか」
「あかんのですか」
「それは漫才師の売れ方やない」
 こう言うのだった。
「普通の芸人の売れ方や」
「ピンの」
「それになりますか」
「そや、そやからな」
 だからだというのだ。
「漫才師としてはええ」
「そうですか」
「うち等はこれでええんですか」
「先方にはわかってもらう様にしてる」
 そこはしっかりとしているとだ、紗奈衣は二人に答えた。
「そもそも事務所は自分等を漫才師として雇ってるんやで」
「ほな、ですか」
「二人一緒でええんですか」
「落語家でも漫談家でもないんや」
 そのどちらでもというのだ。
「漫才が芸やろ」
「はい、そうです」
「それがうち等です」
「そやったらな」
 それならばというのだ。 
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