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真田十勇士

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巻ノ七十四 最後の花見その十一

「太閤様のことどう思うか」
「太閤様のお顔を見て」
「そのうえで、ですか」
「どう思われるか」
「そのことですな」
「そうじゃ、どう思うか」
 こう問うのだった。
「御主達は」
「どうもです」
「かなりおやつれですな」
「目の光が前より弱かったです」
「どうにも」
 十勇士達は幸村に口々に話した。
「背中も丸くなられ」
「全体的に生気が弱まっております」
「あれではです」
「最早」
「そう思いました」
「長くないかと」
「そうじゃな、拙者もじゃ」
 幸村もというのだ。
「そう思った」
「やはりそうですか」
「殿もですか」
「あの方は最早」
「そう思われますか」
「うむ、近いうちにじゃ」
 幸村は十勇士達に話した。
「そうなられるであろうな」
「そうしたお歳ですし」
「それはもう避けられませぬな」
「どうしても」
「そうなりますな」
「うむ」
 その通りとだ、また答えた幸村だった。
「天下が動く」
「そうなりますか」
「あの方がおられなくなり」
「そうして」
「そのうえで」
「そうなる」
 幸村はまた答えた。
「このこと、父上か兄上が上洛された時にお話しよう」
「そうされますか」
「是非」
「大殿か若殿にお話をして」
「真田家がどう動くべきか」
「そのことを考えていきますか」
「うむ」
 その通りという返事だった。
「そうしていきましょう」
「はい、それでは」
「その様に」
「天下が動くのならば」
「お伝えしましょう」
 昌幸、若しくは信之にというのだ。こう話してだ。
 幸村は実際に昌幸が上洛した時にこのことを話した。すると昌幸は極めて冷静な顔で幸村に対して言った。
「遂にこの時が来たか」
「と、いいますと父上は」
「人は必ず死ぬ」
 これが昌幸の返事だった。
「そして七十は古稀という」
「古来稀であると」
「そうじゃ」
 年齢の話だった、今は。
「人間はやはり五十年じゃ」
「それが普通で」
「子供の時に死ぬのも多いな」
「ですな、それは」
「その中で七十年生きるなぞ」
「だから古稀なのですな」
「そこまで生きられれば冥利に尽きる」
 それ程までのことだというのだ。 
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