FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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通りすがり
前書き
インフルエンザにかかって会社お休みだぜイェーイ\(^^)/
尻「なんでそこまで元気なの?」
熱も出ないし咳も出ない、不思議なインフルエンザだからです!!
冷温「そんなこと起こるの?」
変態「この作者普通じゃないから」
尻「ならありえるかもね」
(@ ̄□ ̄@;)!!
「悪いけど、これで決めさせてもらうぜ」
全身から魔力が溢れ出してくる。前回は状況が状況だったからこれを使う勇気がなかったけど、今回は違う。敵の数は特定できており、それに対抗できる戦力が確定できている。多少魔力切れが起こったとしても、問題にはならないだろう。
「なんか悪魔みてぇだな、お前」
体に浮かび上がっている模様を見て余裕が見え隠れしていたカラスの顔が強張っている。
「その通り、これは悪魔を滅するための魔法だ!!」
水と風を合わせた渦を作り出し、敵の土手腹目掛けて解き放つ。
「くっ!!」
それを巨大ヌンチャクで防ごうとしたが、勢いに押され後方へと飛ばされていく。
「よし!!」
それを見てすぐさま彼を追い掛けていく。この二つの魔法の合わせ技はカグラさんすら圧倒することができた。この程度の敵なら物の数分で倒せるはずだ!!
「竜魔の・・・鉄拳!!」
飛んでいく青年に追い付き、その胸ぐらを掴んで進行方向を無理矢理こちら側に変える。それにより放たれた拳は、通常の場合よりも威力が増し、敵の顔面へとめり込む。
「っ!!クソッ!!」
武器の一部を杖のように使って踏ん張ると、切り返しつつ拳を繰り出してくる。しかし、その一撃は俺には届かない。
パンッ
「なっ・・・」
一直線に振り抜いてくる腕を払ってバランスを崩させる。俺は目を使えば相手の動きを予測することが確実にできる。だから如何なる攻撃も防ぐことができるんだ。
「竜魔の鉤爪!!」
「ガハッ!!」
バランスの崩れた男の脇腹に蹴りをねじ込む。その威力も絶大で、彼は武器から手を離し、そのまま地面を転がっていく。
「またまだ!!」
しかし、それで攻めを止めることはしない。地面を転がっていき、止まったところを狙って彼の上へと飛びかかる。
「オラァッ!!」
「グハッ!!」
空中で一回転しながら、踵落としを繰り出す。地面に伏せている彼には避ける暇も受け止める方法もなく、体が反るほどダメージを受けていた。
「どうだ?手も足も出ないだろ?」
「くっ・・・」
この魔法を扱えるようになってから、今まで一度も負けたことがない。それは今回も適応されるようで、勝利を確信した俺は余裕の笑みを浮かべていた。
ウェンディside
どうしよう・・・ここからどうやって彼女たちを倒せばいいのか、私には全然策が思い浮かびません。
「諦めちゃダメよ!!ウェンディ!!」
心が折れそうになっていると、後ろから頼りになる、安心できる声が聞こえてきます。そちらに目を向けると、そこには地面に転がっている男たちを縛り上げたシャルルたちが援護に来てくれていました。
「こいつらはもう大丈夫です!!」
「あとはこの3人だけだよ~」
遅れてきた山賊たちは全員捕まえ、残すところこの三人だけです。向こうが強くても、皆がいればきっと勝つことだってできるはず。
「わぁ!!また可愛い子たち増えたぁ!!」
それを見て焦るどころか逆に大喜びの様子を浮かべるショートヘアの女性。やっぱりこの人ソフィア側の人間なんじゃないかな?ちょっと怖くなってきたんですけど・・・
「別に何人増えようが関係ない。関係ないが・・・」
チラッと視線を私たちとは別のところに向けるエーメさん。その視線の先にいるのは、水髪の少年に圧倒されている仲間の姿。
「向こうがヤバイみたいだな」
次々に攻撃を浴びている青年。なす統べなくやられていく男性の姿を見て、思考するように目を閉じると、一つの結論に達し、ゆっくりと目を開きます。
「私があいつの相手をしよう。ローレ、カラスが来るまで一人で対処できるか?」
「いいよぉ」
親指と人差指で小さな丸を作り、光の剣を扱う女性を送り届けるローレさん。
「じゃあ、どこからでもかかってきていいよぉ」
一時的にとはいえ二人から一人になり、こちらは二人から五人に増えた。本来なら絶望的に不利な状況であるはずなのに、彼女はそんなことを微塵も感じさせないほど楽しそうに見える。
「ナメられたものね」
「ムカつくよ~!!」
その態度に苛立ちを露にするシャルルとセシリー。セシリーに至っては地団駄を踏んでおり、明らかにイライラしているのが見えていた。
「ウェンディさん!!シェリアさん!!今チャンスですよ!!一人のうちに早くやっちゃいましょう!!」
しかし、サクラの言うことが一番正しいと思う。向こうからあの男の人が戻ってくるまでそれなりのタイムロスがあるはず。今なら五対一、敵を倒すにはこれ以上ないチャンスだ。
「行こう!!みんな!!」
「うん!!」
「わかった」
「頑張りましょう!!」
「チャンスチャンス~!!」
彼女のおかげで士気が上がり、全員のやる気が底上げされる。先に一人倒して、あとから来た人にも有利な状況で戦えるようにしちゃおう!!
シリルside
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
血塗れになって大きく開いた傷口を押さえているカラス。俺は膝をついている彼を見下ろしている。
「そろそろ捕まってもらいますか」
これ以上やると殺してしまいかねないし、ウェンディたちも押されてたみたいだから援護に行かないといけない。なので、今にも気を失いそうな青年を捉えようと用意していた縄を取り出す。
「!!」
しかしその時、突然後ろから殺気を感じ慌てて振り返る。
「フンッ!!」
そこには俺目掛けて光っている剣を振り下ろそうとしているポニーテールの女性がいた。
「うわっ!!」
運良く奇襲に気付くことができたため受け身を取りながら転がるように回避する。おかげで捕らえかけたカラスとの距離が開いてしまい、彼の前に剣を振った女性がこちらを見据え立ちはだかった。
「大丈夫か?」
「うっせぇ!!」
助けられたことがよほど恥ずかしかったのか、助けてくれた人物にお礼も言わずに顔を背ける。彼女はそれを予想していたのか、小さくため息をついてからこちらへと視線を戻した。
「こいつは私が何とかする。お前はローレと戦え」
「なっ・・・」
それを聞いたカラスは相当にダメージを受けているはずなのに、その感覚すら吹っ飛んでしまったのか、顔色を一変させて立ち上がった。
「俺で敵わない相手にお前が勝てるわけねぇだろ!!」
「お前が私に勝ったのはもう何年も前だ」
反論する青年にそう告げた後、鋭く目をつり上がらせて彼女は顔をそちらへと向ける。
「今なら私の方が強いと思うが?」
「っ・・・」
正論を突かれ反撃することができず押し黙る。彼は悔しさと納得が行かない表情を見せながらも、渋々背を向け別の仲間の元へと向かおうとする。
「待て、これを飲んでおけ」
立ち去ろうとする青年を呼び止め何かを投げ渡す女性。彼はそれを見事にキャッチした後、一度視線を落とした後ゆっくりと口に運ぶ。
「ん?」
その直後、彼の体にある変化が起きた。それは、傷だらけだったはずの肉体が、まるで元通りになろうとするかのように、傷が消えていくのである。
「何?今の・・・」
服以外は戦う以前と同様な状態へと戻ったカラスは気を取り直してこの場から離れていく。治癒の魔法ってわけではなく、何やら薬のようなものを飲んだだけなのに、あり得ないような回復力を見せたことに俺は目を疑ってしまう。
「あれは不死の薬。如何なる傷も治せる、究極の薬だそうだ」
「へぇ・・・」
そんな薬があるとは知らなかった。ちなみにかなり数が少ないらしく、本当に必要となった時以外は絶対に使用しないらしい。
「さて、そこそこ実力はあるようだが、私にはどこまで通じるかな?」
明らかな上から目線にちょっとイラっと来る。さっきの会話を聞く限り、彼女の実力はカラスと同等程度・・・それなら俺の方が明らかに有利なはず!!
「その余裕が間違いだったと知らせてあげますよ!!」
両手に水と風を纏わせていく。相手の武器は剣。でも、それなら俺は強い人を知っている。
「竜魔の・・・翼撃!!」
以前戦ったその人物でさえも圧倒することができたこの力。彼女以上の剣士なんてそうそういないだろうし、何よりこの人からはそんな雰囲気も感じない。すぐに倒して、ギブアップさせてやる。
ザシュッ
そう思って繰り出した二属性の翼。しかしそれを、彼女はまるで止まっている物体を斬るかのように冷静に剣を振るい、魔力の翼が簡単に斬り消されてしまう。
「さっきの子供といい、ただ魔力をぶつければいいとでも思っているのか?」
こちらに剣の先端を向け、姿勢を低くしていく敵。明らかに攻撃してくるのがわかるほどの殺気を放っている彼女の攻撃が如何なるものなのか、ちょっと様子見してみようと思う。
「そんなことでは・・・」
目を凝らして敵の動きをじっくりと観察する。魔力をどうやら持っていないようだから、主に筋肉の動きに集中していれば対処は容易いだろうし。
「私には勝てん!!」
動く、そう思った瞬間だった。さっきまで距離を開けていたはずの女性が懐へと飛び込んで来ていたのだ。
(これはカグラさんと同じ!!)
その攻めに見覚えがあった。カグラさんが最後を決める時に使う必殺の戦法。常人ではありえないほどの速度で間合いに入り、一気に剣を振り抜く。
(でも・・・)
これならいくらでも対応できる。すでに剣を振り抜こうと腕が動き始めていることから、どの位置に攻撃が入ってくるかおおよその特定が可能。俺はその場所に魔力を込めた手を持っていきガードしようとする。
ザクッ
しかし、間に合うはずだった防御を掻い潜り、光の剣が脇腹を切り裂く。
「何!?」
予期せぬ事態に思考が止まりそうになる。しかし、ここで弱味を見せるわけにはいかない。そう思った俺は体を無理矢理捻って蹴りを放とうとする。
「甘い」
そう呟いた女性は、柄の部分を使い振り出された足を払う。それにより完全にバランスを失った俺は地面を転がった。
「くっ・・・まだまだ!!」
こんなところで負けるわけにはいかないと立ち上がろうとした。その時・・・
ドクンッ
「ぐっ!!」
突如心臓が大きく鼓動し、呼吸が苦しくなる。
「滅竜の魔法に滅悪の魔法・・・確かに力は絶大だろうが、組み合わせが悪かったな」
「な・・・なんだと・・・」
胸を押さえて乱れる呼吸の中、こちらを見下ろす女性を睨み付ける。その間にもどんどん鼓動が早くなっていき、明らかに体に異常を来しているのが感じ取れた。
「二つの滅する魔を体内に入れることなど普通ならありえない。一時的に強大な力は得られるだろうが、バランスがわずかにでも崩れればたちまち体が危険信号を発する」
近寄ってきて首を掴み、ゆっくりと持ち上げられる。ただでさえ苦しいのに、これではなお苦しさが増幅してしまう。
「常に一定の感情ならばこうはならないだろうが、怒りを感じればその分一方の魔力が高まり、均衡が崩れる。そうなれば弱まった方の魔力がバランスを保とうと無理にエネルギーを増幅させ、体に大きな付加がかかる。今まではそれでも保てるほどの時間しか経っていなかったのだろうが、今回は遊びすぎたんだろうな」
動けない俺に剣先を向け、狙いを定める剣士。
「力を得たがばかりにそれに頼りすぎた、貴様の負けだ」
その一言を最後に体を貫かれた俺は、意識を失った。
シェリアside
村の中心部で倒れているあたしたち。それに対し敵は二人とも健在で、息一つ乱れることなく立っている。
「なんだ、こっちは随分緩かったんだな」
「ちぇっ、てっきりカラスがボコボコにされるかと楽しみにしてたのに」
シリルに無惨にやられていたはずの男もあたしたちじゃ歯が立たなくて、ほとんど攻撃をぶつけることができずにやられてしまった。こうなったらもう、頼りはシリルしかいないのかな・・・
「ローレ、カラス、こっちも終わったぞ」
唯一の希望に託すしかないのかと思っていると、先ほどシリルの方へと向かった女性が帰ってくる。体から大量の血を流した、少年を捕まえて。
「シリル?」
「ウソッ・・・」
ピクリとも動かない少年を見て全員の顔が青ざめる。彼を持ってきた女性は少年をこちらに投げ捨てる。
「シリル!!」
「シリル先輩!!」
大慌てで彼の周りに集まるみんな。彼は辛うじて息があるけど、このまま放っておいたら間違いなく死んでしまうほど弱っていた。
「すぐに治癒を・・・あ・・・」
「ウェンディ!!」
彼を治そうと治癒の魔法を発動しようとするウェンディ。でも、すでに彼女も限界を迎えており、フラッとして倒れそうになる。
「ダメよ!!あんたがもたないわ!!」
「でも・・・」
大切な人を助けたい。でも、それをすると彼女が危険にさらされてしまう。どうすることもできない無力さに、悔しさに震える。
「そんなに震えなくても大丈夫」
消えそうになっている仲間の命の灯火。それに責任を感じていたあたしの背後から声が聞こえたと同時に、首を捕まれ持ち上げられる。
「あなたたちもどうせ死んじゃうんだもん」
「「シェリア(さん)!!」
ショートヘアの女性が顔が向き合うあたしを掴む。抵抗しようにも体に力が入らない・・・
「ごめんね・・・ウェンディ・・・みんな・・・」
「え・・・」
首を掴む手に少しずつ力が入ってくるのがわかる。このままあたしはきっと死んじゃう。でも、その前に伝えておかないと。
「あたしが意地張ってこんな依頼を受けちゃったせいで・・・こんなことになっちゃって・・・」
「そんなこと・・・」
レオンに負けたくなくて、勝手に依頼を引き受けて、結局自分じゃ何もできなくて・・・
「ごめんね・・・」
目から涙が溢れてくる。助けてくれる人もいなければ、抵抗できる人もいない。もう・・・このまま・・・
ガシッ
諦めて目を閉じた時、不意に何かに手を掴まれる。その直後・・・
バキッ
何かが折れる音が周辺に響き渡り、持ち上げられていたはずのあたしは地面に落ちていた。
パシッ
そのまま地面に落ちるかと思っていたら、その衝撃が来ない。それでも怖くてしばらく目を閉じたままいると・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ローレと言われていた人の断末魔が響き渡った。
「んん・・・」
何が起きたのか確認しようと少しずつ目を開いていく。すると最初に視線に飛び込んできたのは、この場にいるはずのない少年の姿だった。
「え・・・」
「なんで~・・・」
「ここにいるの・・・?」
あたしを抱き抱えているその少年を見て全員が思考が追い付かずに固まっている。金色の髪をボサボサにして、全身に包帯をミイラのように巻いた、頭の上に目を回しているオレンジ色の猫を乗せた人物・・・彼はみんなの疑問に答えるように、ゆっくりと口を開く。
「別に。通り掛かっただけだけど」
100年クエストに向かったはずの氷の神、レオン・バスティア。消えかけた希望が、再び甦った瞬間だった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ここに来てフィードアウトしていたレオン復活です。
「結局レオン頼りかよ!!」と思ったでしょうが、いいんです。だって彼は次の章でほとんど活躍できませんから。
冷温「え?」
次は彼がここに来るまでの経緯をまとめたお話です。
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