世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのはStrikerS ~休日の裏、脈動~
「舜、今日の訓練でみんな、第一段階を突破したみたいだよ」
「・・・・それで今日の午後は・・・・オフシフトになるようで・・・・遊ぶくらいなら主も・・・・」
今日、ティアナたちフォワードは訓練の第一段階をクリアした。
基本、部屋にいる蒔風にそういった情報を持ってくるのが青龍たちの仕事になっていた。
自分からは動かず、ただ、見守らせて、「奴」が来るのを待ち続ける。
あの日からずっとこの調子だ。
だから青龍は提案した。
遊ぶくらいなら構わないのではないか、と。
しかし蒔風の首は縦には振られない。
「しつこいぞ、青龍。何がきっかけになるかかわからないでしょうが。それで下手に改変して、取り返しのつかないことになったらどうする」
蒔風の答えはいつもこうだ。
最初の内は七獣全員が蒔風を説得していた。
これ以上孤立して、どうするのかと。
しかし蒔風の返答は変わらない。
その蒔風に、次第に注意する者はいなくなっており、今では忠誠心の高い青龍がたまに言うくらいだ。
「俺はまともな物は残せないんだ。残した物はすべて負の物。俺は関わるべきじゃない」
俺はもうあっちには行かない。
だからこれ以上言うんじゃない。
今までの数日間、誰がやめようとも、青龍だけは蒔風の為に、今からでも戻れると説得してきた。
しかし、いつもあまり感情を表さない青龍も、ついに蒔風に対し、感情が吹き出した。
「だったらなぜ我々に見回らせて、見守らせているのですか・・・・・」
それに蒔風は胡座をかいて座り、青龍に背を向けたまま答えた。
「「奴」の行動はおそらくあっちに向く。だから些細なことでも・・・・・」
「その程度の事ならば・・・・我々で結界を張れば・・・・簡単に察知出来るでしょう!!!」
「せ、青龍?」
いきなり叫んだ青龍に、白虎がビクリと驚く。
彼がこんなに叫ぶのは、初めてだったのだから。
「一々我々に見守らせる必要は・・・ないはずだ!!・・・・ようはあなたは・・・・断ち切れないのですよ・・・・あなたが誰かを見捨てられるはずなんかないんだ!!・・・・中途半端に・・・・しないでください!!あなたを待ってる人もいるし・・・・我々だって・・・・今のあなたは見たくない!!」
青龍が背を向ける蒔風の肩を掴んでこちらに向かせ、その目を睨んで叫んでいた。
「関わらないなら・・・・良いのです・・・・だけどあなたは・・・・我々を通して関わりを望んでいる・・・・それが・・・・いいわけないでしょう!!我等の主であるならば、もっと強くあってください・・・・どっちつかずは・・・・やめていただきたい!!」
青龍がついに蒔風の襟首を掴んで捻り上げる。
その青龍を白虎が抑え、獅子や玄武たちも出てきて下がらせる始末だ。
皆に退げられた青龍に、蒔風が無感情な眼をしてから、だったらこうすりゃいいんだろ、と新たに命を下した。
「だったらお前ら、今から任務を解く。ずっと剣でいて、出て来るな。あいつらと関わるな」
「・・・・・ッ!!ァ主!!」
「どうした、青龍」
「・・・・あなたは・・・・もう違う・・・・」
青龍が首をうなだれて降り、その場に座り込む。
そして蒔風の意思で半強制的に皆が剣に戻され、鞘に収まって消えた。
その中で青龍が、一言だけ呟いた。
「私は・・・・もう・・・・着いて行けません・・・・」
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蒔風が昼食を食べに食堂へと向かう。
そしてその帰りに、三階の廊下の窓からティアナとスバルがバイクで街に向かい、エリオとキャロが二人で出かけるのを見かけた。
楽しそうで、なによりだ。
そういった感情が蒔風の中で疼く。
しかし、それにすぐさま「蓋」をした。
その感情は、すぐにでも蒔風をあちら側に誘うだろう。
すぐにでも、あっちに走って行ってしまうだろう。
それではだめなのだ。
それではいけない。
蒔風はもっと別な事を考えながら、自室に戻って行った。
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「エリオ君、次はどこ行くの?」
「えっと・・・・あ、あのお店だ。いこ、キャロ」
「うん!!!」
街に出ているキャロとエリオ。
二人はフェイトとシャーリー作成の「街のお出かけ計画書」を持って、その通りに店を見ていた。
二人とも管理局魔導師とはいえ、まだ子供だ。
街に出れば興味を引かれる物ばかり。
あっちこっちの店を見て、それでもお金は無駄遣いせず、楽しく街を回っていた。
「エリオ君、今度あっちのお店行ってみようよ!!」
「そうだね!!行こう!!」
その姿は本当に年相応の少年少女と変わりないものだ。
そして疲れてしまったのか、計画書に書いてあるのか、公園のベンチで一休みをする二人。
そこでいろいろな事を話す。
二人ともフェイトを保護者としている。
ここに来るまで、いろいろな経緯があった。
いきなりでもなんなので、軽くお互いの事を話し、そこからゆっくりと知って行こうと、交互に身の上話をしていく。
フェイトと出会う前、フェイトと出会ってから、そして機動六課に来てからの日々。
そして、そこまで来て、当然あの男の話になる。
「キャロは・・・・舜さんことどう思う?」
「うーーーん・・・・・模擬戦の時の事で、少し怖いなって、思ったかな」
「そうだよね・・・・あのときの舜さん、怖かったよね・・・・」
「でも今は大丈夫だよ。あの人は、私たちの味方。それは、ちゃんとわかってる」
「うん・・・・・でも・・・・・・」
しかし、彼は関わりを断った。
もう、話せないかもしれない。
「私、こんな性格だから、あんまり舜さんと話しもできてないんだよね・・・・」
「僕はまだまだ聞きたいことあったのに・・・・・」
「ふふ、エリオ君、そんなに好きなの?」
キャロのからかうような言葉に、エリオが拳を握って語った。
「何言ってるの!すごいよ!あの人は!!そりゃ、最初は変なお兄さんだな、って思ってたけど・・・・・」
「思ってたんだ・・・・・」
「最初はただ「あの噂の翼人さん!?うわぁ、本当にいたんだ!!」って感じだったんだ」
「うん」
「でも、一緒の部屋にいるうちに、あの人、そんなにすごくはない人なんだってわかってきて」
エリオのその言葉に、キャロが首をかしげる。
「あれ?さっきは凄いって言ってなかった?」
「う~~ん、なんていうんだろ・・・凄くないけど、そこがすごいって言うか・・・・」
「エリオ君・・・・わからないよ・・・・」
「あ、ごめんごめん。そうだなぁ・・・・まずね、朝に弱いんだ」
「それは知ってるよ。フェイトさんと走りまわってたもんね」
「でも部屋での寝起き姿とか見たことないよね?」
「うん」
「凄いんだよ、本当に。前に起こそうとしたら、そのまま抱きつかれて抱き枕にされちゃったんだけど・・・・」
「エリオ君、それってあの時の遅刻?」
「うん」
エリオは一度、訓練に遅刻してきた事がある。
その理由がこれだったのだが。
「どうやって脱出してきたの?」
「えと・・・その・・・・(ボソッ)殴った」
「え?」
「脱出しようとしてもがいてたら舜さんの顔に当たっちゃって」
「だ、だからあの後の朝御飯の時、舜さん顔にあざあったんだ・・・」
キャロが大きな汗を流してあはは・・・と笑う。
「それでその時舜さん、即座に土下座の体勢になって介抱してくれたんだけどね」
「うわぁ・・・・」
キャロは「ダメだそれ」的な顔をしてその話を聞く。
更にエリオが言うには、その時寝起きで髪はボサボサ、よだれの跡が残り、目は半分眠っていたそうだ。
それを聞いてキャロが更にあららら・・・・とあぁ~あ、を合わせたような顔をして呆れる。
「それは・・・・ダメだね」
「うん、あのときは僕も、えぇ~~?ってなった。でもね、それでもあの人はすごいんだよ。強いし、かっこいいし、世界の話なんて、面白いものばっかりだったよ」
「そうだね・・・・あの人は確かにすごいね・・・私ももっとお話ししたかったなぁ・・・・もう帰って来てくれないのかな・・・・」
このとき、キャロとエリオの蒔風に対する感覚はまとまったようなものだ。
彼は、ダメだが凄い人、と
そして、キャロの最後のぼやき。
それに、エリオは自信を持って返した。
「舜さんは帰ってくるよ。僕はそう信じてる」
その眼には信頼に似た確信があった。
あの人はきっと、僕達のために帰って来てくれる。
理屈とかじゃない。理由なんてない。
ただ、蒔風と私生活を共にした彼だからこそ、そう何となく思えただけだ。
結局のところ、あれだけのことがあったにもかかわらず、エリオにとっては蒔風はそれくらいの人間なのだ。
自分に歪みを持ち、言ったことが思った通りに実行できない人間。
ただの、そんな人間なのだ。
簡単にダメな方へと転がって行けてしまう。
見下そうと思えば、簡単にできる。
今回の一件など、まさに致命的だろう。
だが、それでもエリオは構わないと思っていた。
なぜならば、そのズレやどうしようもなさ。
それこそ、人間ではないか。それを認め合っていくのが、仲間という物だ。
「でも、舜さんに送ったメール、一通も帰ってきてないよ?」
「それでもだよ。僕は毎日送ってる。帰ってきてほしいんだあの人に。もっと話をしてほしい。もっといろいろ教えてほしい。もっとたくさん・・・・その・・・・遊んでほしいんだ」
「エリオ君・・・・」
「フェイトさんの話だと確か、舜さんの翼は「願いの翼」だったよね?だったら、僕の願いも、届いてくれるはずって、信じてる」
彼は信じる。一人の男の帰還をずっと。
蒔風は、仲間を拒絶した。
自分の存在が、いつか気づ付けてしまうのではないかと恐れて。
それは逃げだ。
エリオは、そう強く思う。
自分も、理由に差違はあれど他人を拒絶し、仕舞いには傷づけたことがある人間だ。
だが、それを救ってくれた人がいた。
だったら、今度は自分が誰かを救う番だ。
しかし、彼は蒔風の残したモノを知らない。
十年前の事件も詳細までは知らないし、その時どんなことをしたのかも知らない。
彼がこの世界に何を残したかなんて、わかりもしない。
今の彼には、願いだけでは届かない。
しかし少年は持っていた。
彼の残したもの、そして、彼が逃げる事の出来ない、その想いを。
それはから数十分もしない時間が経ち、街を再び歩くエリオの耳に、なにかの音が聞こえてきた。
そしてその方向へと行き、そこで少女を一人見つけた。
新たなる出会い。
新たなる物語。
この物語は、新たな人物との出会いによって、一つの節目を迎えることとなる。
to be continued
後書き
アリス
「おぉ?エリオ君が何かやってくれそうな予感ですね?」
どうなるかは次回に。
ちなみに、今回他もメンバーの動向を知りたい方は、アニメ本編をご覧ください!!!
アリス
「出た丸投げ」
書いてどうする、そのまんまのものを。
アリス
「次回、彼は一体何を望むのか」
ではまた次回
最近のお前、センターガードの動きになってるな
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