聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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91部分:第十話 サガの力その八
第十話 サガの力その八
「まだ。彼の完全な死を確かめるまでは」
「完全な死ってよ」
「シロウ、わかっている筈だ」
ロジャーも再びシロウに言ってきた。
「先の我々と彼等の戦いでも。黄金聖闘士がどうであったのかな」
「あの時かよ」
シロウはロジャーの言葉を聞き顔を顰めさせた。
「アテナを追い詰めたその時だったな」
「あの時もまた黄金聖闘士達がいた」
やはり彼等は聖域にとって最大の戦力であり切り札なのだ。言うならば聖域の象徴とも言っていい。そうした存在なのである。
「そして彼等がライブラの武器を手にしたその時に」
「くっ」
ここまで聞いたシロウの顔が歪む。
「忘れる筈がねえ。あの時の悔しさはな」
「そうだ。それで戦局が一変した」
この時アテナの軍勢はアーレスの軍勢に最後の一分と言ってもいいような状況にまで追い込まれていたのだ。敗北は目の前であり聖域の陥落も時間の問題と思われたのだ。しかしここでライブラの武器の使用が認められ戦局が一変してしまったのである。
「武器を持った十二人の黄金聖闘士達により我々は」
「俺もまた敗れた」
ライネルも言うのだった。
「あの時にな」
「俺達魔神全員がたった十二人に敗れちまった」
シロウはその時のことを忌々しげに語る。
「それだけでな。あいつ等が武器を持っただけで」
「その時を思い出すのだ」
ロジャーも言う。
「ならば。迂闊なことをするな。いいな」
「わかったさ。じゃあ」
「むっ!?」
ここでエリシャの顔色が変わった。そのうえで今までサガがいた場所を見るのだった。
「やはり」
「生きているのだな」
「はい」
ロジャーに対してもその顔で答えた。
「この小宇宙は。紛れもなく」
「俺の爪を受けても生きているか」
ライネルは表情を変えずに述べるのだった。
「やはり黄金聖闘士だけはあるか」
「先程と同じ陣を組め」
ロジャーはこう指示を出した。
「戦闘態勢でだ。いいな」
「ああ、わかったぜ」
「わかりました」
シロウとエリシャがそれに頷く。ライネルは既に動いている。サガがいた場所を囲んでまた身構える。するとそこに黄金色の小宇宙が沸き起こりそこから彼が出て来たのであった。
「やはり生きていましたね」
エリシャが彼に対して言う。
「ジェミニのサガ。あの程度では」
「見事だと言っておこう」
そのサガの声も聞こえてきた。だがまだ小宇宙が沸き起こっているだけである。その黄金色の小宇宙が。
「このサガに拳を放てることをな」
「ふざけるんじゃねえ」
シロウはその彼に剥き出しの敵意を見せていた。
「手前をやるのに。何でそこまで言われなきゃならねえんだよ」
「だから待てシロウ」
無意識のうちに前に出ようとするシロウを止めたのは今度はライネルだった。
「一人で出るには危険な相手のようだ」
「何っ!?」
「見ろ」
サガを見るように言った。
「今のジェミニを」
「あいつをかよ」
「そうだ」
わかっていたのであった。彼が今どうなっているのか。その小宇宙を感じて。
そして出て来た。全く無傷のサガが出て来たのを。サガは毅然とした顔で立っていたのだった。
「生きていたか、やはり」
「死ぬと思っていたわけではあるまい」
「確かにな」
ロジャーが彼に対して答えた。
「この程度で死ぬとはな。仮にも黄金聖闘士で最強とも言われる貴殿がな」
「最強かどうかはわからないが現に私は今ここにいる」
これがサガの返答だった。
「ただそれだけだ」
「そうか。では再び我等の攻撃を」
「一つ言っておく」
「むっ!?」
「貴様等の技は見せてもらった」
まずはこう告げるサガであった。
「今度は。私が技を見せる番だ」
「!?こいつ」
「来るな」
シロウとライネルはそれぞれサガの小宇宙が高まるのを感じていた。これまでになく大きな小宇宙を。まるで銀河そのもののような。
「来る・・・・・・この小宇宙は」
「いかん!」
エリシャもロジャーもまた言う。
「散れ!」
ロジャーが他の三人に告げた。
「来るぞ、ジェミニの攻撃が!」
「ちいっ!」
「受けてみよ、このサガの技」
サガが構えを取ってきていた。今まさにその技を放とうとしている。
「アナザーディメンション!」
今その技が放たれたのだった。遂に。四人を忽ち彼等が今まで見たこともない世界が包み込んだのだった。
第十話 完
2008・8・31
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