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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはStrikerS ~すれ違い


ホテル・アグスタの任務から翌日、蒔風はヴィータからティアナのミスショットの話を耳にした。


「ふーん。珍しい事もあるもんだな」

「んだよ、もうちょい言うことねーのか?なんでー、とかどうしてー、とか」

「失敗して、ティアナはその事をしっかりと受け止めているだろ?だったらこれ以上何か言う必要はないと思うけど」


そう言いながらガリガリする氷菓子を蒔風がガリガリと食べていた。

「でもよ、たまにあいつ、無茶苦茶やるときあるよな」

「まああの年頃なら強くなろうとするのは普通だろ?多少の無茶ぐらいはするさ」

蒔風が一本目を食べ終え、二本目(ソーダ味)を食べはじめる。
それを眺めながら、ヴィータが少し不安そうな顔をした。

「まあな。でもよ、あいつがやる無茶って、必要以上なんだよな」

「つまり、そこまでやるに見合わない無茶ってことか」


ヴィータがその言葉にコクリとうなづく。

「ホテルの時もそうだった。冷静になってみりゃ、あの程度ならフォワードでも持ちこたえられたはずだ」

「でも無理に全部破壊しようとして誤射、か。ま、確かに、仲間を傷つけてでもやらなきゃならない場面ではねぇな」

「ああ・・・・・・そこでよ、舜は何か知らねーか?ティアナに何があったのかって」


蒔風は確かに色んな人と話す。
もしかしたらティアナの事も何か気付いているかもしれない。
ヴィータとしては大切な教え子の事だ。その目は真剣だった。


「良い先生やってるなぁお前。教導官になって正解だよ」

「う、うっせーよ!それより、知らねーか?」

その問いに蒔風が食べ終わったアイスの棒を捨てて首を振った。
さすがに蒔風でもそこまでは知らない。人には話したくないこともあるだろう。


「なのはにでも聞いてみるか?あいつならわかんだろ」

「なのはか・・・・・聞いてみるか・・・・・なんか嗅ぎ回っているみたいで気が引けんなぁ」

「しょーがないよ。気にすんなよ、せ・ん・せ・い♪」


蒔風が立ち上がり、なのはの元に向かっていく。
その後ろからヴィータがドゲシと蒔風に蹴りを入れてついて行った。



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「そう・・・・・ティアナの事・・・・」

そうして今はスターズ、ライトニング両隊長、副隊長と蒔風が通路の途中に備え付けられた休憩スペースに集まっていた。
チームの事はなるべく全員で把握した方がいいという考えだ。


「なのは、なにか知ってるか?ティアナが無茶やるほどの理由」

「・・・・・・・・・・・・・うん」

「その様子だと、どうやら結構深刻なようだな」

「何があったの?」


「それは・・・・・」




なのはが話しはじめた。
それはある一人の、管理局魔導師の話だ。









彼の家族は妹が一人のみ。
両親は既に他界していた。

その彼は優秀な魔導師で管理局の執務官でもあり、執務官であるからには、多くの事件を追い、凶悪な犯罪者と命懸けの戦いもした。


そして数年前のある事件。
その事件を追っていた彼はついに追跡していた犯罪者によって帰らぬ人とされた。



残されたのは尊敬し、多くの事を教えてくれた兄を失い、天涯孤独になってしまった幼い少女。
だがその少女はまだ信じていた。

兄は確かに死んでしまった。
でもそれは悪を撃つためであり、平和を守るために兄は命を懸けたのだ。

そう悲しみの中で兄の事を信じた少女。




しかし




「犯人を追い詰めておきながら反撃されて死ぬとは情けない」

「結果として後日に犯人は別の者が捕まえたが、そうでなかったらどうなったか」

「これではただの無駄死にだ」




管理局高官の発言。


彼は犯罪者を追い詰めておきながらみすみす逃げられ、挙げ句の果てには殺された。


役立たずだ、と



その言葉に少女は絶望した。




しかし、彼女は強かった。




ならば認めさせてやる。




自分の兄の魔法は、兄から教わったこの魔法は、決して役立たずではないていうことを。


少女は決心した。
必ず強くなって認めさせてやると。



青年の名は、ティーダ・ランスター。
ティアナ・ランスターの、たった一人の兄だった男。







その話を聞き終え、皆が難しい顔をした。
こんな理由があっては、どう言えばいいのかわからないのだ。

なのはやフェイトがどんなに優秀でも、十九歳の少女。
そこにかける言葉なんて簡単に出ては来ない。

だがそこで蒔風が発言をする。
腕と足を組んで、真剣な顔をして。


「ティアナは自らの兄の死を無駄だと断じられ、決してそれが無駄ではない事を証明しようと必死なんだな」

「でもよ・・・・・」

「そうだな。無茶の方向性を間違えてる時がちょこっとあるな。まあそこは、我らがなのはさんが指導してくれるんだよな?」

「うん。それはもう、絶対に。無茶させて、落ちるなんてことは、させない」

なのはの決心を聞き、蒔風はなのはによる訓練メニューを見せてもらう。
それを見ての蒔風の感想はと言うと


「基礎ばっかだな」




そう、基礎ばかり。
ただひたすらに、基礎の繰り返し、それだけだった。



「うん。まず大きな基礎を固めてからじゃないと、次の大きな魔法にはいけないよ」

「土台がしっかりしてねーと、強い魔法教えても暴発するだけだからな」

「うーーーーん・・・・・だけどこれ、ティアナにしては不安だと思うよ?」

「フェイトもそう思うか?」

「うん。執務官試験のとき、すごく難しい魔法とか出るんだろうって思って、応用魔法ばっかりやっててね、基礎はできるからいいやなんてタカをくくってたんだ。でも試験に出てきたのは基礎問題ばかりで、応用なんて一握り。だから一回目は落ちちゃったんだ。二回目のとき、基礎をしっかり埋めてから挑んだらそこで合格。それに今までできなかった高度な魔法もできるようになったんだ」


「それで?」

「でね?その一回目のとき、とても不安だったんだ。応用じゃないと意味がない。凄いのじゃないと合格できないって。だからティアナはきっと焦ってるよ?」

フェイトが体験談を交えて話す。
なのははそれにうん、とうなづいて、答えた。



「ティアナは賢いから、もう気付いてるかもね。一人じゃないって、教えてあげたし。だから大丈夫。ティアナはよくやってるよ。それは確実に、ティアナの力になってる」

「・・・・ま、それならいいけどな。言うべきことはちゃんと言っとけよ。後でこじれると、面倒なことになるから」

「大丈夫だよ」


なのはがそう言ってこの場の話し合いは終わった。

一体何に対しての大丈夫だったのか。
それは各人の心の中にしかない。




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そうしてからさらに数日後の夜
なんとなしに隊舎内廊下を歩いていて、ふと蒔風が窓の外から何か声が聞こえてきたのを感じた。

窓越しに外を見て下の方に目をやると、こんな夜遅くの時間まで一人時修練しているティアナと、それを眺めている機動六課ヘリパイロットのヴァイス・グランセニックがいた。
その足元には一体どれだけの時間いたのか、コーヒー缶がいくつも置かれていた。


(この時間まで自己鍛錬?・・・・午後の訓練終わってから四時間か。あれじゃ明らかにオーバーワーク。いくらやっても力にならないな)



蒔風が怪訝そうな顔をして見ていると、ようやく終わったのか、ティアナがヨロヨロとした足取りで隊舎の方へと戻っていった。
途中ヴァイスが飲み物を差し出したが、なにも言わずにそのままその場から去ってしまった。


蒔風はティアナがいなくなってから外に出て、ヴァイスに話を聞きに行った。


「よう」

「おう、舜の兄ちゃん。どうした?」

「兄ちゃんって・・・・・あんたの方が年上だろ」

「気~にすんなって。感じだよ、感じ。で?何の用だい?」



ひょうきんな感じで話す二人。
内容は当然ティアナの事だ。


「ありゃ、見てたか」

「実際何時間やってたんだ?あいつ」

「訓練終わって解散、ってなってからすぐにだ。四時間以上、ぶっ続けだ。しかも毎日。ここら辺ずっとだ。最初にフォワードの訓練、それから早朝よりも早くにスバルと訓練、さらに午後訓練の後にまたスバルと少しやってから今度は自己鍛錬だ」


「体壊すぞ。これで明日また早朝訓練。逆効果じゃん?」

「ま、そんなこと今更ガミガミ言ってもしょうがねぇって。だからほっといたんだけどな。これで訓練にでも出てりゃ、無茶やってたってことはわかるだろうと思ったんだが」

「なるほど。だけどあいつみたいな手合いは、更に無茶してそれをこなしちゃいそうな奴だからなぁ」


ティアナにかなり心配する蒔風に、ヴァイスが「じゃあ行ってくりゃいいじゃねえか」と提案する。
それもそうだな、と蒔風がティアナを追って六課隊舎の中に入り、シャワー室の前で待つ。





数分後







ティアナがシャワー室から出てきて、蒔風に気付く。


「よ、ティアナ。ちょっとお前に話が、って待て待て待て!!!」

蒔風が話しかけようとするが、ティアナは軽く会釈だけしてスタスタと歩いて行ってしまう。
その後を慌てて追って、何とかその脚を止めさせることに成功する蒔風。

だがティアナの顔は明らかにイラついており、うんざりしたような顔をしていた。


「なんですか?私明日も早いんです。なのはさんとの模擬戦もあるので、もう寝たいのですが」

「まま、待てって。すこーしおにーさんの話聞いてくれればそれでいいから」

ティアナがあからさまにムッ、とした顔をする。
しかしそこで無理に振りきるのも馬鹿らしいと考え、五分だけですよ?と言って聞くことにした。



「ティアナ、お前最近無茶しすぎ。そんな体力で、今から寝たようなコンディションで、明日しっかり動けるのか?」

蒔風の心配そうな声。
しかし、今のティアナにはそれすらも鬱陶しく聞こえていた。


「私なら大丈夫です。明日の事だって考えてます。ちゃんと勝てます。絶対に。だからもう行かせてください。舜さんだって、明日早いんじゃないですか?」

「俺?俺は大丈夫。寝ながら歩くと言う妙技を最近会得してきたからな。眠気に弱いオレでも・・・・・・」


そんななんでもない話。
いつもなら「さいですか」と流すこともあるだろう。

だがしかし、ティアナには蒔風の言葉はこう聞こえていた。





俺はお前と違って体力もあるから平気だ。と







「・・・・るさい」

「ん?」

「うるさいっ!!私は大丈夫です!!やれます!!失敗なんかしない。だから必死になってやってるんだ。それを邪魔しないでください!」


一息で一気に吐き出すティアナ。
蒔風がそれを聞いて、さすがに言い咎めようとする。

だがティアナは「五分経ちましたから、これで」と言って蒔風が言葉を発するより早くさっさと部屋に戻って行ってしまった。


その後を追おうとも、一瞬蒔風は考えた。


追ってどうすると言うのか。
今のティアナは、追い詰められて頭に血が上っている。

そんな状態で話して、何が通じると言うのか。


(なのはも何かしら話したみたいだけど・・・・四六時中あんなんじゃ意味無いだろうしなァ・・・・)


踵を返し、エリオが待つ部屋へと帰ることにした蒔風。


(まあ、なのはの事だ。相手が話を聞かなくても、それでも会話に持っていく奴だから、心配はないだろ)

ある種の信頼。
高町なのはと言う少女は、いつだって話し合いで解決しようとしてきた少女だ。

無論、その過程で「相手を倒す」と言うことが必要ならば、容赦はしないが。




そう、そのはず。




「そういや明日に模擬戦か。さて、教導官になったなのはのお手並み拝見だな」

妹の成長を喜ぶ兄のように、期待に満ちた笑顔をしながら、蒔風は廊下を歩いていく。






そうして




いろいろなことがあって、翌日


早朝訓練が終わって、午前が終わり、午後の訓練。



今日の訓練は模擬戦。



最初はティアナ・スバルVSなのは




その時が、来てしまった









to be continued
 
 

 
後書き
アリス
「そういえばあんな時間に、とか言っておきながらエリオはまだ起きてるみたいな発言してますね」

そりゃエリオは時間外に無茶した訓練してないですから、普通に起きてますよ?
あくまでティアナにとっては、と言う事です。




アリス
「次回!!どうなる!?スターズの模擬戦!!!」

ではまた次回













あたしはもう誰も傷つけたくないから,失くしたくないから,だから強くなりたいんです 
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