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真田十勇士

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巻ノ七十三 離れる人心その一

                 巻ノ七十三  離れる人心
 幸村の予想通りだった、彼が都から戻った時には。
 ことは全て終わっていた、四条河原において。
「そうであるか」
「はい、三十に及ぶ妻妾の方々も全て」
「三人のお子の方々もです」
「全てです」
「無残にも」
「最上家の姫君もおられましたが」
「あの姫君は嫁がれて間もない」
 幸村はその話を聞いてすぐに言った。
「それでもか」
「はい、あの方もです」
「そうなりました」
「しかも」
「酷いな」
 非常にとだ、幸村はこうも言った。
「あえて関白様の御前でか」
「わざわざです」
「もう腹を切られたというのに」
「その御首を晒され」
「その御前で」
「その様なことをしてはな」
 幸村はこうも言った。
「人心が離れる」
「そうなりますか」
「必然的に」
「酷いと思い」
「誰もが」
「そうじゃ、しかもじゃ」
 幸村はさらに言った。
「この度のことは明らかじゃ」
「何故そこまでされるか」
「そのことは」
「既にですな」
「そこまでされた訳は」
「お拾様に跡と継がせたいが為」
 まさにそれが理由であるとだ、誰もがわかっているというのだ。
「それは明らか、だからな」
「その為に実の甥の腹を切らせた」
「しかもそのご家族まで」
「そうされるということは」
「まさに」
「あってはならぬこと」
 完全にというのだ。
「それをしてしまった」
「では」
「このことは」
「徳のなきこと」
 間違いなく、というのだ。
「だからな」
「このことは大きいですな」
「それもかなり」
「では」
「尾を引きますか」
「うむ」
 また言ったのだった。
「必ずな」
「確かに、あまりにもです」
「酷い仕打ちです」
「実の甥の方にあそこまでとは」
「あまりと言えばあまり」
「しかもじゃ」
 幸村はこのことも言った。
「豊臣家はもう太閤様の他はお拾様だけとなった」
「ですな、大納言様はおられず」
「大納言様にお子はおられません」
「他の親族の方もおられず」
「どなたも」
「跡継ぎは必要でじゃ」
 しかもというのだ。 
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