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Three Roses

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第二十七話 戦いのはじまりその十二

「もっとも民達が恐れることも当然だがな」
「言葉の恐ろしさを」
「それが事実になることも」
「それもまた」
「そうだ、しかし過度に恐れてはな」
 それはというと。
「よくはない」
「そうなりますね」
「では民達のその考えはですか」
「あらためさせていきますか」
「その様に」
「していこう、あと民達が何を言ってもだ」
 太子はこうも言った。
「別に構わない」
「口さがない言葉もですか」
「言わせておく」
「そうしますか」
「教皇庁とは違う」
 自分達への異論を徹底的に拒みそのうえ暴力を以てそれを封じようとする教皇庁とはだ。また違うというのだ。
「帝国は民の口を塞ぐことはない」
「好きなことを言わせておく」
「それもまた帝国ですね」
「民の口から様々なこともわかりますし」
「だからこそ」
「それでだ、私はだ」
 それでというのだ。
「帝国もだがな」
「一切ですね」
「口を塞がず」
「そしてそのうえで噂も聞き」
「そこからも物事を知っていきますね」
「先程の民達にしてもだ」
 王の早世が続くと言ったそれもというのだ。
「それもだ」
「はい、わかりましたね」
「民達は王権の安定を望んでいます」
「確かな王が長い間即位しよき政治を続けることを」
「そのことを」
「王はよき王であるだけでは駄目だ」
 国と民の為に善政を行うだけではというのだ。
「さらに子をなし王家の血を絶やさず」
「長くですね」
「玉座にいるべきですね」
「そうだ、幾ら善政を敷いても子をなさず早世であるならだ」
 エヴァンズ家の近頃の王達の様にというのだ。
「それはこの国の民達を不安にさせる」
「そういうことですね」
「近頃の三代の王の方々は優れた方ばかりでしたが」
「どの方も早世でした」
「子も為さず」
 後の二代の王はそうであった、マイラとマリーの父であった三代の最初の王も子は次の王だけであった。
「それではですね」
「意味はないですね」
「その様なことでは」
「確かな王が長い間治めてこそだ」
 まさにというのだ。
「最善の王なのだ」
「そういうことになりますね」
「では、ですね」
「今の王にはですね」
「民達はそのことを期待していますね」
「そうだ、しかし今のままでは駄目だ」
 太子はこんなことも言った。
「わかるな」
「はい、新教のままでは」
「それではですね」
「やはり旧教はですね」
「絶対のものですね」
「そうなるべきだ、だから手を打つ」
 それをというのだ。 
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