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真田十勇士

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巻ノ七十二 太閤乱心その八

「江戸にお連れする、では」
「そのうえで」
「我等は」
「元に戻ってな」
 入れ替わった者達と、というのだ。
「後は都に戻るぞ」
「わかりました」
「それでは」
「その様にしましょう」
「今は」
「ではな」
 こう話してだ、そのうえで。
 幸村はだ、こう言ってだった。
 幸村は十勇士達と共に進んだ、ただひたすら。そして彼自身も信じられない速さで高野山まで進んでだった。
 高野山の裏手まで来た、ここでだった。
 雪無rは十勇士達に静かな声で言った。
「ではな」
「はい、これより」
「高野山に忍び込み」
「そのうえで」
「関白様をお助けする」
 幸村は家康の想いを受けてだ、そのうえで。
 十勇士達と共に高野山に入った、そこから高野山の中の誰にも気付かれず秀次がいる場所まで進んだ。そして。
 秀次の部屋まで行ってだ、幸村は彼の前に参上して言った。
「関白様、お迎えに参りました」
「源次郎か」
「はい、実は内府殿に言われまして」
「わしをか」
「お救いしてもらいたいと」
「それで来たのか」
「左様です、後はです」
 先のことも言おうとした、だが。
 その幸村にだ、秀次は確かな声でこう言った。
「わしが消えたらどうなる」
「それは」
「太閤様はすぐに異変に気付くぞ」
「では」
「代わりを立ててもな」
 それでもというのだ。
「すぐにわかる」
「太閤様には」
「わしの代わりに誰が腹を切ってもな」
 秀吉には見抜かれるというのだ。
「もうすぐここには大夫達が来る」
「福島殿が」
 福島正則だ、まさに家康子飼いの者だ。そうした意味では加藤清正と同じで石田や大谷ともそうであると言える。
「それでは」
「わしが当人であるかはな」
「即座に」
「わかる、それにじゃ」
 秀次は幸村にさらに話した。
「わしは身代わりを立てることはせぬ」
「では」
「腹を切る時はわし自身がじゃ」
「そうされますか」
「そうする、それにわしが一人生きてもじゃ」
 幸村に達観している声のまま話す。
「妻妾や子達はどうなる」
「いえ、その方々は」
 まさかとだ、幸村は秀次に返した。
「その様なことは」
「太閤様はわしの全てを消したいのじゃ」
「だからですか」
「わしの妻や子達もな」
 全てというのだ。
「首を斬られるわ」
「これより」
「そうなってわしだけが生きてどうする」
「では」
「わしは先に死んであの者達を待つ」 
 こう幸村に言うのだった。 
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