FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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おまかせあれ
前書き
最近突然雪が降ってきて大変ですね。ちなみに今自室に入ったら室温が3度でした。風邪だけ引かないように気を付けないとな・・・
「大丈夫?」
「つけられてない?」
一度立ち止まり後ろを振り返る。目を使うことによって木々が多い場所でも敵がつけて来ているなら姿を確認することができる。
「大丈夫。誰もいないよ」
見た感じ山賊たちは俺たちに気づいていなかったらしく、誰一人としてつけてきている様子はない。もっとも、人が住んでいられる場所など限られているから、特定されるのは時間の問題だと思うけど。
「ただいま戻りましたぁ」
ひとまず俺たちのせいで村人たちを危険に晒すことはなくなったので何事もなかったかのように彼らのもとへと戻っていく。俺たちが到着すると、それを待っていたのはたくさんのカノッコ村の皆さん。彼らは俺たちが戻ってきたのを見てパッと表情が明るくなる。
「皆さん!!どうなりましたか!?」
戻ってきて早々に出てきたのはジュラさんくらいの年齢の男性。みんな今まで誰も倒すことができなかった山賊たちを次々に倒したというのを聞いたらしく、期待の眼差しを向けてくる。
「シリル、お願い」
「えぇ!?」
小さな子供たちもいるのでまさか引き返して来ましたなんてこと、あまり言いたくはない。誰が説明するのかと待っていると、シェリアから前に押し出されてしまう。
「なんで俺!?」
「男の子でしょ」
「うん!!シリルが一番適任だよ!!」
「そうね」
「任せたよ~」
「よろしくです!!」
こういう時に限って扱いが男になる・・・うれしいことではあるけど、だったら普段からちゃんと男として扱ってほしいんだよな・・・
「えっとですね・・・」
ウェンディたちにも裏切られたため、渋々今回あったことを説明することにする。それを聞いた村の人たちは万勉の笑みから一転し、絶望にうちひしがれたような表情へと変化していった。
第三者side
シリルたちが撤収した村にいる山賊たち。その中で昨日合流したメンバーに指示を出す一人の女性がいた。
「相手は六人の子供だそうだ。だが油断するな。マリキスとイネスがやられて・・・あ、お前もやられたのか」
「そのフリいらねぇよ!!」
ドッと笑い声が沸き上がる。長い髪をポニーテールに束ねたその人物は、怒っているカラスをなだめると、隣にいるショートヘアの女性に視線を向ける。
「ローレ。そいつらは村の近くに来ている?」
「まだ見てないみたいだよ」
ローレと言われた女性は同じほどの背丈の女性に周りの部下と思われる男たちからの情報をそのまま伝える。
「警戒は怠るな。向こうは村を奪い返しに必ず来る。その時が狙い目だ」
相手はこちらが他の者と合流したことを知らない。ゆえに安心して攻めてくると考えている女性。しかし、すでに少女たちはこの様子を確認しており、撤退していることを彼女は知らなかった。
シリルside
さっきまでの明るい空気が一転して重たいものになっている。敵は元々五人だったから、俺たちが約半数の三人を早々に退治したことでいつ村に戻れても不思議じゃないと思っていたんだけど、まさか増援がいるとは・・・てかあそこまでの大きな組織だったんだな。てっきりかなり小規模の山賊なんだと思っていたよ。
「で、この事態をどうするかだよね」
落ち込む村の人たちからは離れたところで作戦会議。彼らは一喜一憂しててもらっていいんだけど、俺たちはそんなことをしている余裕はない。こんなことで依頼を失敗したなんて、ギルドの名前に傷をつけちゃうし。
「増援に来た相手がどれくらいの実力か・・・だよね」
一番の問題はそこだ。悪魔の心臓や冥府の門では主力だった七眷属や十鬼門だけが強く、大半は雑兵だった。今回もそのパターンだといいんだけど、もしそうじゃないとかなり危険なことになるんだよなぁ。
「そこは大丈夫でしょ。見た感じ寄せ集めって感じだったし」
「え?そうなの?」
心配する俺とウェンディとは裏腹にケロッとした感じでシェリアがそう言う。人数が増えたことで気が動転してたけど、しっかりと見ると大したことない連中ってわかる部分があったのかな?
「でも数に押されるってこともあるんじゃない?」
「五倍くらいはいたよね~」
「こっちは使えないのが二人いるであります」
「あら?それは誰のことかしら?」
シャルルたちの言う通り、人が多いとそれだけで押し込まれてしまう。単なる寄せ集めだったとしても、三人はそれなりに強い人物がいるわけだし、雑魚を囮に押し切られたら正直厳しいかも・・・
「ならこれから考えることは?」
「あの大人数をいかに減らすかってことかな?」
人が多いのを減らさないことには勝利することは難しい。だから、どんな方法を使って彼らを減らしていくかを考えないと。
「リオンたちに助けを求めるのは?」
「評議院は人がいないのはわかるけど~」
「ギルドの皆さんなら手を貸してくれるんじゃ・・・」
俺たちが作戦を考えようとしている中、シャルルたちがあることを思い付きそんな提案をしてくる。
「それも難しいと思うよ」
「なんでよ」
しかし、シェリアがその意見を即座に却下する。それが解せない白猫少女は詳しい説明を求める。
「ギルドを出てくる時に言われたんだけど、他にもたくさん依頼が来てるらしくて大変なんだって」
「だから依頼が終わったらできるだけ早く帰ってきてほしいって言われてるんだよ」
「そうだったんだ~」
俺も電車の中でシェリアたちから教えられたんだけど、今こんな感じの依頼が複数来ているらしい。それも、他のギルドにもいっぱい来ているとの話だったので他のギルドに回すわけにはいかず、全てギルド内で処理しなければならないらしい。つまり、彼らに助けを求めることはできない。だからこんなに今悩んでるんでしょ!!
「一番簡単そうなのは・・・」
「闇討ち?」
まずは候補を出していこうとしたところ、またしても信じられない人物から信じられないような提案が出されそちらをバッと向いてしまう。
「え?今言ったのサクラ?」
「はい!!私ですよ!!」
まだまだ幼さがある顔で純粋そうな眼差しをした少女。とても彼女がこんなことを言うとは思えない。もしかしたら聞き間違いでもしたのかな?うん、きっとそうだ。そうに違いない。
「サクラ、さっきのもう一回言ってくれる?」
信じたくないと思うのは俺だけじゃなかったようで、ウェンディが優しげな笑みを浮かべながら再度意見を述べるように言う。ただ、その表情がひきつっているのが俺たちとしては非常に気になるところだ。
「ですから!!闇討ちをするんです!!夜寝ているところをブワッと!!」
可愛らしい顔立ちからは想像できないような発言を繰り出してくる少女を唖然と見ていることしかできない。
「あんた、結構怖い子ね・・・」
「人は見かけによらないね~」
「??」
猫耳ッ子たちが何を言っているのかわからず首を傾げているサクラ。でも闇討ちか・・・意外と有効なんじゃ・・・
「シリル。顔顔」
「悪い人みたいになってるよ」
いい作戦を聞いたと思っていた俺の表情は完全に悪人になっていたらしい。慌てて顔をキリッと作り直すが、ウェンディたちはその前の顔でちょっと怖がっているような目をしていた。
「闇討ちは有効かもしれないけど、難しいところもあると思うな」
「というと?」
正々堂々とは言えないけど、手段を選んでいる余裕もない。仕方なくサクラの案を採用しようかと思っていたところ、シェリアがこの戦法に難色を示した。
「そもそも暗闇で戦ったことってある?」
「「「あ・・・」」」
言われてみると、普段依頼をするのは日中だし、夜になっても多少なりとも明かりがある場所で戦うことの方が多い。というかむしろ光がない場所でやったことなんて一度もない。
しかし、闇討ちとなると相手に気付かれずに接近して物音も立てず、素早く相手を倒さなければならない。慣れない暗闇で、それも建物の配置などもきちんと把握できていない見知らぬ村で初めての戦法を取るのはかなり勇気がいる。
「私たちが村の地形とか調べましょうか?」
「僕たちなら飛べば捕まらないし~」
思わぬ弱点が発覚した闇討ち作戦をやるために、下準備となる村のおおよその見取り図を調べようとシャルルとセシリーが名乗り出る。
「それはいいかもしれないけど・・・」
彼女たちなら敵に捕まる可能性は限りなくゼロに近い。ヤバくなれば猫にでもなってほとぼりが冷めるまで身を隠すこともできるだろう。だけど・・・
「もし後をつけられてここを見つけられたら、元も子もないよね?」
シャルルたちが調べているのに気付かないフリをされ、二人が戻ってきているのを後ろから追跡されたら、数の優位でこの場にいる全員が殺されてしまう可能性がある。向こうは俺たちがまだ周辺にいて、いつでも攻めることができるようにしていると思っているだろうから、警戒もしているはずだろうしな。
「ならシリルとウェンディは?あんたたちなら見えなくてもいけるんじゃない?」
すると、シャルルがもっともな意見を言ってくる。確かに俺とウェンディは鼻がいい。視界があろうがなかろうが問題なく戦うことができるだろう。俺に至ってはこの滅竜魔法の魔水晶があればどんな状況でも通常の視界で戦うことができるんだよね。
「僕たちはどうするの~?」
「私たちはひましてるってことですか?」
しかし、この戦法が取れるのは俺とウェンディだけに限られる。滅竜魔導士の力によって五感が優れたからこそできるものであって、シェリアやセシリーたちにはそれを行うことができない。
「シリルとウェンディが敵を倒したら騒ぎになるんじゃない?」
「なるほど!!そうしたらライトがつくだろうから、それからみんなが出てくるんだね~!!」
俺たちによって襲撃されれば、当然痛みによって叫ぶ声や助けを求める声が響き渡るはず。それによって視界を得ようと光を照らしたら、シェリアたちも一緒に戦える。俺たちが少しでも人数を減らしてから攻めれば、今の状況よりかはマシになるかも・・・
「待って!!」
不安はあるものの、それが一番の方法なのかもと思っていると、待ったをかける声が聞こえる。それを聞いた俺たちはその少女の方に視線を向けた。
「どうしたの?シェリア」
「何か問題あった?」
その少女とは天空の滅神魔導士であるシェリアだった。今考えられる最善の策だと思っていたシャルルの案になぜ彼女がストップをかけたのか、それがわからず俺たちはキョトンとしている。
「ウェンディたちが攻めるのはいいけど、二人でどれくらい倒せるの?」
彼女の疑問、それはたったの二人でどこまで相手を減らすことができるのかというものだった。言われてみて気付いたが、この作戦の目的はいかに山賊たちの人数を削るのかということ。なのに、何人倒せるのか不透明なこの作戦には賛同できないとのことだった。
「じゃあシェリアは何か案があるの?」
「え!?」
すると、今回の作戦の発案者であるシャルルがまだ意見を述べることのない少女に怒ったような口調でそう言う。否定するならまず自分で何か考えろってことなんだろうけど、そう簡単にいいものが思い付かないから困ってるんだよね・・・
「うーん・・・そうだな・・・」
それでも何かあるかもと考えてくれるあたりがシェリアのいいところかも。ただ、完璧にできる作戦なんかあるわけないし、あまり期待をするのはよくないだろう。
「あ!!」
シェリアはどんなことを言うのかと期待半分、不安半分で待っていると、周囲を見回した彼女は何かを閃いたらしく、キラキラと輝く笑顔でこちらを見る。その顔はどっかの緋色の方が大好きなスイーから始まってツで終わるものを見るような目だった。
「あったよ!!すっごい有効な方法が!!」
「本当!?」
自信満々のシェリアの姿を見てウェンディが身を乗り出す。しかし、他のメンバーはそんな大きなリアクションはしない。話を聞かないことには、それがいいのか悪いのか判断できないし。
「それで?どんな方法なのよ」
「フフッ、それはね・・・」
天空の神が閃いた作戦に耳を傾ける。半信半疑で聞き始めた俺たちだったが、内容がわかるにつれてその顔は驚きのものへと変わっていく。
「なるほど!!それならいけるかも!!」
「でしょ!!」
シェリアの考えた戦法なら間違いなく大半の雑魚どもは蹴散らせるし、うまくいけば主要人物である三人もはめることができるかも!!
「でも、どのくらいでできるの?」
「あたしたちなら二、三日でできると思うよ?」
準備が二、三日で済むなら十分有効だ。向こうはこっちが攻めてくるのを待っているだろうし、動き出すのに最低でもそのくらいはかかるだろうからね。
「指示はシェリアが出してくれる?」
「もちろん!!大船に乗ったつもりで任せてよ!!」
胸をドンと叩いて得意気な顔を浮かべる彼女を見て思わずオオッと感心する声が漏れる。そうと決まれば早速準備に取り掛かろうと、俺たちは作戦実行に向けて動き出した。
後書き
いかがだったでしょうか。
今回のストーリーのテーマその3『シェリアが頭脳を発揮する』
魔法学校を飛び級ならそれなりに頭もいいだろうという作者の勝手な解釈のもと今回のテーマが出てきました。
シェリア影薄いから忘れてたんだよね、ゴメンゴメン。
天神「(@ ̄□ ̄@;)!!」
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