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ハイスクールD×D復讐と剥奪の王

作者:夜鞠修弥
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8話『復讐者と魔王』

 
前書き
少々、タグを追加しました。 

 
~修弥Said~

あのクソ悪魔とのゲームから2日後の夜。

毎回、家を訪ねてくる姫島たちにムカつきながら、今まで通り過ごしてきた。

「ねぇ、本当にいいの?グレモリーたちのところにいかなくて?」

「悪魔のことなんて知るかよ。どうせ、くだらないことだ。無視しとけばいい。じゃ、俺は寝る」

俺は夕麻にそう言うと、自室に入っていく。

夕麻にはああ言ったものの、俺は中々寝付けなかった。

「・・・結局、あの頃と何も変わってないじゃねぇか。仇の名がわかったのは父さんを殺したコカビエルだけ。・・・くそッ!」

俺はやけくそに壁を殴る。

「これも全部、俺が弱いからなのか」

俺がそう呟いた時、視界に紅い光が入り込む。

咄嗟に枕近くに立て掛けておいた刀を手に取り、それを紅い光に向けて構える。

光が消えると、そこにはあの銀髪メイドの悪魔が立っていた。

「俺を殺しにでも来たのか?メイド悪魔」

刀を構えながら言う俺に、メイド悪魔は目線を俺に合わせ、頭を下げた。

「突然の訪問、申し訳ありません」

「何のつもりだ?油断でも誘ってるなら無駄だ」

「いえ、この度は魔王様からの伝令を預かってきただけです」

自分の目的を言うメイド悪魔だが、そんなことはどうでもよかった。

今、コイツは魔王からの伝令と言った。

つまり、あのゲームの発言に対しての返答か何かだろう。

「その内容は?」

俺がそう言うと、メイド悪魔は横長の白封筒を渡してくる。

「そちらは、冥界へ行くための転移魔方陣です。伝令の内容次第で御使いください」

「俺にこんなものを渡すってことは、冥界に来いってのが伝令か?」

「半分は合っています。・・・・魔王様からの伝令は、レーティングゲームへ参加することになったお詫びをしたいとのことです」

ゲームへの参加は、俺も承諾した筈だ。

魔王の狙いは他にあるのか?

「詫びだと?」

「はい。貴方が聞きたいことに何でも一つ、答えるとのことです」

俺の“聞きたいこと”に答えるだと?

それは、父さんと母さんのことを知っているってことなのか?

いや、そもそも何故このタイミングなんだ?

考えられることは幾つかあるが、このタイミングだと狙いはハッキリしない。

むしろ、俺を誘い出す罠とも考えられる。

だが、今はーーーーーー。

色々と考えた結果に出した答え。

それはーーーー。

「その誘い、のってやる。例え罠だろうと、タダでは終わらせはしない」

「・・・罠ではないのですが。参加していただけるのなら、本日中にそれを使って冥界へ御越しください。転移した近くにある建物にて、魔王様はお待ちになられています」

そう言うと、メイド悪魔は再び紅い光に包まれて、消えていく。

それを確認すると、俺は近くにあった駒王学園の制服に着替える。

「・・・・最大限の情報を魔王から聞き出してやる」

俺はそう呟き、自室から夕麻たちがまだいるであろう一階のリビングへと向かう。

「夕麻」

「あら?寝に行ったんじゃないの?それに、何で制服に着替えているのよ?」

「今から冥界に行く。だから、前みたいに俺を連れて飛べ」

「はぁ!?何で急に冥界に行くのよ!?そもそもどうやって行くつもり?」

「魔王から、直々に招待状が来た」

「なっ!?で、でも!?」

「言いたいことはわかる。罠の可能性が高いってことはな。だが、同時にチャンスでもある」

俺がそう言うと、夕麻は呆れた表情をする。

「は~、止めても無駄なのはわかったわ。でも、もしもの場合は逃げるわよ」

「あぁ、好きにしろ。俺はその時は魔王を殺しに行くからな」

俺はそう言って、夕麻に白封筒を渡して、転移魔方陣を発動させる。
































~一誠Said~

シュゥゥゥゥン・・・・・・。

グレイフィアさんから貰った魔方陣から、俺は見知らぬ場所へ転移してきた。

ここに来るまでに俺はグレイフィアさんと、アーシアと話し、部長を助け出す覚悟を決めた。

そして、俺の神器の中にいたドライグとも話しはつけてきた。

正直に言うと、修にも手伝って欲しかったが、そんな時間がなかった。

それに、これは俺達の問題だ。

俺は辺りを見回す。

果てしなく広い廊下。

壁には蝋燭らしきものが奥まで飾られており、巨大な肖像画も壁にかけられていた。

そんななか、ガヤガヤと声が聞こえる方向へ足を向けた。

ドゴオオォォォォォォォンッ!

目の前に巨大な扉が見えてきた時、大きな爆発音が聞こえ、グラグラと振動が足から伝わってきた。

だが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

俺は目の前の巨大な扉を赤龍帝の籠手がある左手で、ぶち破る。

「部長ォォォォォォッ!」

俺は扉が飛んでいくなり、会場に響き渡るくらいの声で部長を呼んだ。

「俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠!部長ーーーーリアス・グレモリー様の処女は俺のも・・・んだ。って、修が何でここにいるんだ!?」

俺がふと顔を上げると、そこには天井が崩壊した後と、その瓦礫の上に立って周りの悪魔を睨んでいる修と夕麻ちゃんがいた。












































~修弥Said~

シュゥゥゥゥン・・・。

「・・ここが、冥界か」

紫色の空を見上げながら、俺はそう呟く。

「さて、近くの建物っていえば・・・・・・彼処か」

辺りを見回すと、近くに大きな建物を見つけた。

そこ以外には何もない。

あるのはただの森ばかりだった。

「夕麻。どうやら、目的地は彼処らしい。丁度、あのホールみたいになってる所の真上に飛んでってくれ」

「えぇ、わかったけど、真上から何をするつもりなの?」

「決まってるだろ?先手必勝だ。罠の可能性があるなら、先にそれを潰せばいい」

俺は恐らく今、見せられないような笑みを浮かべているだろう。

その証拠に夕麻の表情が固まっている。

俺はそんな夕麻を気にせずに、右手に力を入れると黒い籠手が現れる。

『Authorize』

そして、機械音と共に光の槍が右手に握られる。

「何人消えるのか、楽しみだ」

俺はそう呟くと、全力で光の槍を真下のホールに向けて投げ放った。

ドゴオオォォォォォォォンッ!

「あ、貴方、魔王に招待されたんじゃなかったの?」

夕麻が少し震えながら、そう言ってくる。

「そうだが・・・・何か問題があったか?」

「大ありよ!本気で悪魔に戦争吹っ掛けてどうするのよ!?」

割りと本気でそう言ってくる夕麻だが、俺は下の様子を見て言う。

「戦争なら望むところだ。それと、そろそろ下に行くぞ。魔王とやらを待たせるのも悪いからな」

俺が笑いながらそう言うと、夕麻はため息をつきながら、ゆっくりと下に行くぞ降りていく。

「貴様!堕天使の手の者か!」

「我々悪魔にこんなことをして、ただで済むと思うなよ!」

ホール内の瓦礫の上に降りると、早々に悪魔共がそう言ってくる。

「黙れ、俺はお前等三下ごときに用はない。次に話せば殺す!」

無慈悲に三下悪魔共にそう発言し、俺は悪魔共を睨み付ける。

「ふざけるな!『Authorize』なっ!?グッ」

「言った筈だ。次に話せば殺すってな」

俺は文句を言ってきた悪魔に向けて光の槍を投げると、その槍は腹に突き刺さった。

「それで、魔王とやらは誰だ?俺を直々に招待したんだ。ここにいるんだろ?」

俺がそう言った瞬間、ホールの扉が壊された。

それを見て俺は警戒するが、それは無駄に終わった。

何故ならーーーーー。

「部長ォォォォォォッ!」

ーーーー何故なら、その扉の前にいたのが兵藤だったからだ。

「俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠!部長ーーーーリアス・グレモリー様の処女は俺のも・・・んだ。って、修が何でここにいるんだ!?」

何やらバカなことを言っていたが、途中で顔を上げた兵藤と目が合うと、なぜ俺がここにいるのかを聞いてきた。

だが、そんなものに答える必要は俺にはない。

「貴様等!何故ここにいる!ここは貴様等が来て良いところではない!」

俺は声のする方を見ると、そこにはあのクソ悪魔とグレモリーがいた。

「すまないね、ライザー君。これは私が用意した余興だよ」

クソ悪魔の隣から紅い長髪の男が出てきてそう言った。

「ドラゴンの力を見たくて、ついグレイフィアに頼んでしまいましてね」

「サ、サーゼクス様!そ、そのような勝手は!」

「いいではないですか。この間の『レーティングゲーム』、実に楽しかった。しかしながら、ゲーム経験もない妹が、フェニックス家の才児であるライザー君と戦うには少々分が悪かったなと」

「・・・・・サーゼクス様は、この間の戦いが解せないと?」

「いやいや、そのようなことは。魔王の私があれこれ言ってしまったら、旧家の顔が立たないだろ?」

なるほど、あの紅髪が魔王か。

俺は話を聞き、魔王が誰かを理解した。

「ドラゴン使い君。お許しは出たよ。ライザー、リアスと私の前でその力を今一度見せてくれるかな?」

「いいでしょう。このライザー、身を固める前の最後の炎をお見せしましょう!」

くだらない奴だ。

状況を理解できていない。

俺はそう思いながら、話の続きを聞く。

「ドラゴン使い君、君が勝った場合の代価は何がいい?」

「サーゼクス様!?」

「なんということを!?」

「彼も悪魔だ。お願いする以上はこちらも相応のものを払わねばならないでしょう。さあ、何が欲しいんだい?爵位かい?それとも絶世の美女かな?」

「・・・部長、リアス・グレモリー様を返してください」

「良いだろう。君が勝ったら、リアスを連れていけばいい」

話を終えた魔王は、次に俺の方に顔を向けた。

「待たせてしまって悪いね。こちらの話はもう終わったよ。次は、君との話をしようか。すまないが、こちらに来てもらえるかな」

「それが俺に対する罠ではないという証拠は?」

「君と話をするために呼んだんだ。そんな無粋なことはしないさ」

そう言った魔王の顔は真剣そのものだ。

「わかった。行くぞ、夕麻」

「え、ええ」

俺は夕麻を連れて魔王のそばへと歩いていく。

その間にそこら辺の悪魔からの視線と殺気を感じる。

恐らく夕麻もそれを感じているのだろう。

俺は軽く夕麻を俺の方へと抱きよせる。

「気にするな。この視線は俺に向けられたものだ」

俺は小声で夕麻にそう言い、魔王の前へとやって来た。

「夜遅くに来てもらってすまなかったね」

「そんなことはどうでもいい。アレはどういう意味だ」

「貴様!魔王様に向かってその態度はなんだ!」

「関係のない奴は黙っていろ!これは俺とコイツの話だ!」

俺は殺気を全開で出し、声を上げた悪魔を睨み付ける。

「フフッ。他意はないよ。君には妹の『レーティングゲーム』に参加して貰ったからね。そのお礼とでも思ってくれればいいよ」

「なら、尚更意味がわからないな。俺はそのゲームとやらでアンタに宣戦布告をした筈だ」

「あぁ。確かにアレには驚いたよ。でも、それとこれとは別だ。これは純粋に君への感謝の証さ」

「悪魔から感謝なんてされたくない。そもそも俺は、自分の為に戦っただけだ」

「ふむ。だが、せめて褒美だけは受け取って貰えないだろうか?」

俺は疑問に思っていた。

何故、魔王はここまで俺に褒美とやらを与えようとしている。

何か裏があるのではないかとも思える。

「何故、そこまでして俺に褒美とやらを与えようとする。アンタは何を知っている」

「先程も言っただろう?これは感謝の証だと?」

「それが気に入らないんだよ!悪魔が人間である俺に感謝だと?そんなものを信じるつもりはない!」

「ならば、私とゲームをしないかい?」

「何?」

その言葉は怒りで一杯だった頭の中を、一瞬で冷静にさせた。

「君が褒美を気に入らないのなら私とゲームをして、勝った時の戦利品とでも考えればいい。それでどうだい?」

「それは俺とアンタが戦うってことか?」

「いや、先程のライザー君とドラゴン使い君との戦いで、どちらが勝つのかを互いに賭けるだけだよ。もちろん、これを受けるのなら代価もつける」

「その代価とやらの内容は?」

「そうだな、『勝った方は負けた方に何でも言うことを聞かせられる』というのはどうかな?」

それを聞いた周りの悪魔共は騒ぎ始めるがどうでもいいことだ。

「のった。ゲームとやらをしようじゃないか」

俺がそう言うと、魔王が微笑む。

「では、君からどちらに賭けるのか、選んでもいいよ。私は君が選ばなかった方に賭けよう」

そう言った魔王は手元に映像を出し、兵藤とクソ悪魔の戦いを見せる。

「俺は兵藤に賭ける」

俺がそう言ったのは一瞬だった。

「良いのかい?この勝負で最も有利なのはライザー君だが?」

「あのクソ悪魔は負ける。兵藤にな」

「ちょ、ちょっと、大丈夫なの?」

夕麻が慌てて俺に聞いてくるが、何も問題はない。

「大丈夫だ。兵藤は勝つ。アイツはバカだからな」

俺はそう言うと、魔王の方を見る。

「先に言っとくが、俺がアンタから聞きたかったことはあのクソ悪魔を越える炎を扱う悪魔についてだ」

「君はもう勝ったつもりでいるのかな?」

「当然だ。兵藤は勝つ。アイツは昔からそういう奴だ」

俺はそう言うと、魔王から離れ、近くの壁へともたれ掛かる。

先程魔王に言ったことは嘘だ。

俺が本当に聞きたかったことは、父さんと母さんを知っているのかということ。

だが、信用のできない奴からそんなことを聞いても無駄だと思った。

だから、仇のことを聞いた。

「・・・・くそっ」

「夜鞠君。貴方は本当に無茶をしますね」

俺は不意に呼ばれた方を見ると、そこには生徒会長がいた。

「生徒会長もここにいたのか」

「えぇ、リアスの親友として、この場に参加していました」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

会話が続かない。

当然のことだ。

ここにいる悪魔共には警戒をしている。

いつ、襲ってくるかわからない状況で、集中力を削ぐわけにはいかない。

「リアスが・・・・リアスが貴方に謝りたいと言っていました」

「それで?」

「だから、一度話をする場を作ってくれませんか?」

「そいつは無理だ。俺はもうグレモリーとは関わらない。今回ここに来たのも、魔王に招待されたからだ。それに、俺はアイツが気に入らない」

「・・・・そうですか。それは残念です」

「お久しぶりですわね」

生徒会長と話していると、第三者に声をかけられた。

「お前はゲームの時のガキ」

「私はレイヴェル・フェニックスですわ!ガキではありません!」

「ハァー。生徒会長、どうにかしてくれ」

俺は夕麻と別の場所に向かおうとする。

「ちょっ、待ってください」

「何だ、ガキ?」

俺は一度立ち止まり、ガキの方を見る。

「本当に悪魔との戦争をするのかを聞いても?」

「いずれはそうなる。俺一人で何人潰せるかは知らないがな」

「そうですか。では、そうならないことを祈っていますわ」

それだけを言ってガキはどこかに歩いていった。

「おぉぉ、あの下級悪魔が勝ったぞ!」

「あのライザーが負けるなんて!?」

どうやら、決着がついたらしい。

俺は魔王の元へと向かう。

「賭けは俺の勝ちだ」

「そうだね。では、まずは君が聞きたかったことを言おうか。確かに、フェニックスを越える炎を扱う悪魔は一人だけ存在する」

「ッ!?そいつは?」

「SSS級はぐれ悪魔ガドラ。サラマンダーという種族で所在は不明。だが、ガドラは殺戮を好む男だ。その被害は酷いもので今も続いている。私が知っているのはこれくらいだ」

「はぐれ悪魔、ガドラ」

コイツが母さんの仇。

「では、ゲームの報酬の話をしよう。君は私に何を望む?」

今、ここでコイツを殺すということもできる。

だが、今はその時じゃない。

だからーーーーー。

「ーーーー今後、はぐれ悪魔ガドラには誰も手を出すな。そいつを殺すのは俺だ。勝手に手を出せば、その時は俺がそいつを殺す」

「ふむ。君の願いはわかったが、本当にそれでいいのかい?」

「あぁ。それでいい」

「わかったよ。それじゃあ、すぐにガドラには手を出さないようにと、全悪魔に伝えるよ」

俺はそれを聞くと夕麻に言う。

「帰るぞ。ここに来る前の所に戻って魔方陣を頼む」

「わかったわ」

そう言うと、夕麻は俺を掴んで飛んでいく。

元の場所に戻る途中で兵藤達を見かけたが、関わるつもりはないので無視する。

「次に冥界に行くときは、ミッテルトにお願いしてよね」

魔方陣を展開させながら、夕麻がそう言う。

「別に問題はないが、次にここに来るときは魔王を殺すときだ」

「ハァー、貴方はぶれないわね」

ため息混じりに夕麻がそう言い、俺と夕麻は家へと帰って来た。

父さんの仇である堕天使のコカビエル。

母さんの仇である悪魔のガドラ。

この二人だけは必ず俺の手で殺す。

それがあの日、見ているだけしかできなかった俺の贖罪だ。

だから、待っていてくれ。

父さん、母さん。

俺は必ず、二人の仇を討つから。


 
 

 
後書き
次回、9話『復讐者と聖剣使い』 
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