初詣
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第八章
「これ舐めて落ち着こう」
「うん、じゃあ」
愛美梨は知子に応えてだった、そのキャンデーを受け取った。
そしてその中のものを食べてだ、こう言ったのだった。
「美味しい」
「そうやろ、皆もどう?」
知子は微笑んで他の娘達にもキャンデーを差し出した。
「食べる?」
「あっ、有り難う」
「じゃあね」
「私達も頂くわね」
「そうさせてもらうわね」
「うん、じゃあ皆で食べて」
そしてとだ、知子は愛美梨達にもキャンデーを差し出してからも話した。
「次の場所行こう」
「そうね、じゃあ次は」
愛美梨はキャンデーを舐めつつ応えた、舐めているとその甘さで自然と涙目が戻っていっていく。普段の顔に。
「また出店回る?」
「じゃあそうしよ」
知子は優しい顔でまた言った。
「皆で」
「何か知子ちゃんって」
愛美梨は優しい笑顔の知子を見てふと言った。
「お母さんみたいな」
「あっ、言われてみたら」
「ほんまやな」
「知ちゃん優しいし」
「お母さんみたいや」
「今回ほんま知子ちゃんに助けられたわ」
愛美梨はこうも言った。
「おおきにな」
「気にせんでええよ、こうした時はお互い様やし」
「そう言ってくれるんが余計ええわ」
しみじみとして言う愛美梨だった、他の娘達も同じだった。そして自然と皆知子を軸に集まってきていた。
そんな愛美梨達の前を通ってだ、紅愛と美海は林檎飴を食べつつ話をしていた。
「林檎飴っていつも出店であるけど」
「何か食べるのはじめてやな」
「ああ、けど食べたらな」
「結構美味いわ」
「そや、林檎飴はええ食べもんやで」
二人の横にいる猫又の富美男も言ってきた。
「わしも長老さんも好きやしな」
「っていうかあんたもこれ食べるんか」
「猫やのに飴食べるんかいな」
「そや、猫又になればや」
富美男は二人に堂々と言った。
「色々なものが食えるんや」
「そうなるんか」
「妖怪やしな」
「長生きはするもんやで」
猫も猫又になるまでというのだ。
「人間も猫もな」
「つっても富美男とかあの九尾の長老さんまで生きるって」
「長老さん千歳やっちゅうしな」
「猫としてはまず有り得んし」
「そうそうないで」
「それやからこそ珍しいんや」
猫又という存在はというのだ。
「わしも長老さんもな。そやからな」
「そやからって何やねん」
「言うけど林檎飴やらんで」
「うわ、ケチやな」
二人の冷たい言葉にだ、富美男は仕草も入れて抗議した。
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