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Three Roses

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第二十七話 戦いのはじまりその五

「一つ問題がある」
「奥方様ですね」
「あの方に問題があれば」
「子は授からない」
 そうなってしまうというのだ。
「どうしてもな」
「その通りですね」
「お子は双方のことです」
「太子がよくともです」
「お妃様に問題があれば」
「それで授からない」
 そうしたものだというのだ。
「だからだ」
「是非ですね」
「お妃様にですね」
「問題があってはならない」
「左様ですね」
「そうだ、そこが問題だ」
 まさにというのだ。
「妃がどうか」
「大丈夫だと思いますが」
「それでもですね」
「あの方については」
「どうなのかがですね」
「そうだ、私もだ」
 実にというのだ。
「そこが気掛かりになってきた」
「お妃様のことが」
「どうなのか」
「早ければ既にだ」
「それこそすぐにですね」
「お子を授かっていましたね」
「そうなっているが」
 難しい顔のまま言う太子だった。
「まだ授かっていない」
「一刻も早くですね」
「お子を授かるべきですが」
「それがどうにも」
「まだ、ですね」
「そうなっている、それにだ」
 太子はさらに言った、今度言ったことはというだ。
「妃は身体が丈夫ではない」
「そうですね、どうにも」
「マリー王女と比べますと」
「あの方はお身体が弱いですね」
「今一つ」
「そうだ、健康かというとだ」
 どうにもというのだ。
「それは今一つだ」
「ですからお子については」
「多くは授からないかも知れない」
「そうかも知れないですか」
「そうも思う、しかしことは進める」
 子のこともというのだ。
「それもまたやるべきことなのだから」
「お願いします」
「どうかこの国もロートリンゲン家のものとされて下さい」
「是非共」
 側近達も太子に口々に言う。
「この国を旧教のものに戻し」
「そしてお子をもうけられ」
「この国もロートリンゲン家のものにしましょう」
「是非」
「そうしましょう」
「その為に二つのことを行うのだ」 
 必ず、というのだ。この国を旧教に戻しそしてマイラとの間に子をもうけることをだ。その二つを同時にというのだ。
「どちらか一つでも適わないとだ」
「その場合はですね」
「この国を我々のものと出来ない」
「そうなりますね」
「そうだ、そして私はこの国に永遠に留まれない」
 太子は己の杯の葡萄酒を飲みつつ言った、パンを食べてから飲む葡萄酒は実に美味いものであった。 
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