世界をめぐる、銀白の翼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
なのはStrikerS ~翼人?うっそだぁ~
「結局、昨日のあの人はなんだったのかしらね」
リニアでの事件から翌日、機動六課の隊舎内食堂
そこで早朝訓練を終えたティアナたちフォワード陣がシャリオ・フィニーノ、通称シャーリーと一緒に朝食をとっていた。
「さあ(モグモグ)でも、なのはさんたちの(モグモグ)知り合いみたいだったね」
「スバル、食べながら喋らない。シャーリーさんは何か知りませんか?」
ティアナがフェイトの執務官補佐を勤めるシャーリーに聞く。
だが彼女もよくわからないそうだ。
「話に聞くとフェイトさん達が最後に会ったのは十年前らしいんだよね」
「十年前・・・・・って、確か・・・えっと・・・・(モグモグ)」
「闇の書事件の時ですよね?」
「そうだね。でもそんな長い間何やってたのか・・・・・私もあんな人がいたなんて聞いてないしね」
シャーリーが頭を捻る。
そこでエリオが口を挟んだ。
「じゃあ、あの人は知ってるんですかね?」
「何を?」
「ほら、あの噂ですよ」
「「翼人」のこと?あんなもん、ただのお伽話でしょ?」
「えーーー?あたしはいると思うな!」
「スバル・・・・・エリオもそう思ってるの?」
「はい。っていうか、フェイトさんから聞いたことがあるんです」
「ほんと!?」
スバルが身を乗り出し、それに合わせて残りの四人も身を乗り出し、エリオがヒソヒソと話した。
「フェイトさんが昔の話をしてくれたとき、助けてくれた人がいるって。はっきりとは言ってなかったですけど、多分「翼人」のことでした」
「本当に?フェイトさんのお伽話じゃなくて?」
「話してるときのフェイトさん、とても懐かしそうでしたし、多分作り話じゃないと思います」
エリオの話に、はぁ~~~~~っ、と感心と溜息の混じった声を出す一同。
「エリオ君、なんかずるいなぁ。私そんなの聞いたことないよ?」
「あ、えっと、僕が話して話してってその時頼み込んじゃったから・・・・」
そんな話をしていると、食堂の角の方から声が聞こえてきた。
「・・・・・・・プリン!!」
「だぁ!青龍!いきなり出てくんな!!なんでてめぇこういうのは積極的なんだ!!」
「シャケもーらい!」
「白米、いただきます」
「ったく、てめぇらなにやってんだよ。お、沢庵(たくあん)もらうぜ?」
「お前らいい加減にオブッ!?」
「お主らは!主の朝食を奪うな!!」
「獅子よぉ、そう言うなよ。食事くらい俺等が楽しんでもいいだろ?」
「天馬!!麒麟からもなんとか・・・・」
「ダメだよ。麒麟とじっちゃんは朝は舜より弱いんだから、まだ寝てるよ?」
「ってかお前ら・・・・・・俺の上からどけ・・・・・・」
五人が視線を向けるとそこには蒔風と、人型顕現した七獣(二体欠席)がいた。
蒔風の朝食を奪い、その上にのしかかっている。
構図としては
天馬(足組んで沢庵ポリポリ)
青龍(プリン味わい中)
白虎(焼シャケモグモグ)
朱雀(白米)
蒔風(俯せ)
_____
床
となっていて、それを傍らに立って獅子が注意していた。
「主が潰れる!!早く退け!」
「舜は・・・んなくらいじゃどーってことねぇよ」
「そうそう、舜ならいけるいける♪」
いけしゃあしゃあと言ってのける天馬と白虎。
それについにキレた蒔風。
「んなわけあるかあ!!」
ドバァ!!と蒔風が起き上がり、上の奴らをはねのける。
その勢いに全員がテーブルの向こうに飛ばされ、誰にも見えないように剣に戻る。
もちろんその間に食うもんはしっかり食っていたが。
やれやれと獅子も頭を抱え、剣を回収して蒔風の背に消える。
「OTL うう・・・・・あの野郎ども・・・・朝飯全部とりやがった・・・・・・・」
がっくりとうなだれる蒔風に五人の視線が突き刺さり、ティアナが不意に口を開く。
「何やってんのかしら・・・・・・」
「さ、さあ?」
ぼそぼそと話すティアナ達に気付いたのか、蒔風が身体を起こして近づいてきた。
「おっす。どーやら昨日はメーワク掛けたみたいだな」
「え?あ、はい」
「自己紹介をしておこうか。オレの名前は蒔風舜。なのはの友人やってる。よろしくな」
「は、はい。私はティアナ・ランスターです」
別に管理局の人間じゃないから、階級は省いてティアナが自己紹介する。
それに続いて、スバル、エリオ、キャロ、シャーリーと自己紹介を済ませ、蒔風も同席させてもらう。
「さっきのは一体誰だったんですか?」
そこでエリオが気になる事を聞いた。
そりゃそうだ。あんだけ騒いでたんだから。
「あれ?ああ、あいつらはオレの・・・・なんだろ、使い魔みたいなもん?」
「使い魔をあんなに連れてるんですか!?」
その事実にティアナが驚愕する。
使い魔一体作るのには多くの魔力と資質が必要だし、その数が多ければ多いほど、維持するための魔力も膨大だ。
一体この人何者なんだろう、と推察し始めるティアナ。
そこでスバルがべつの話を聞いた。
「なのはさん達とはどれくらいの仲なんですか?」
「なのは?そうだなぁ・・・・十年前に事件を一つ解決して、その半年後にもう一個・・・・それだけだな」
「確かその事件って・・・・・」
「おや、さすがにフェイトの補佐。知ってるか。P・T事件に闇の書事件な。あんときにちこっと協力したぐらいだな」
「でもそれから十年間って何してたんです?」
「あ?おー、えーーーっと・・・・・」
そこで蒔風が言葉に詰まる。
(どこまで話したもんかなぁ・・・いつもだったらホイと話すけど、なのはの教え子たちの前だからなぁ・・・・・)
蒔風が腕組んで考え込んでいると、そこに珍しい客が現れた。
「舜君、ここにいたんだ」
なのはである。
それだけでなく、フェイトやはやてまでいる。
突然の隊長部隊長三人の登場に、ティアナ達四人のフォワード陣がびっくりして立ち上がった。
「な、なのはさん!?」
「あ、スバル、私たちも一緒で言いかな?」
「は、はい!!大丈夫です!!」
そうしてなのは達も会話に加わる。
そうそうたるメンバーにスバルはテンションが上がり、ティアナが恐縮してしまった。
そんな中でもスバルはゴーイングマイウェイ。
ちょうどいい、となのはに声をかける。
「あ、そうだ。なのはさん、聞いてもいいですか?」
「なにを?」
「十年前のことですよ!「翼人」が出たって本当ですか!?」
ブホウ!!
あまりのストレートな質問に、蒔風が噴き出し、なのは達があはは・・・と笑う。
『どこまで話すよ?』
『舜君の気分でいいんじゃない?』
『でもお前さんが狙われるって話だぜ?』
『う~~~ん・・・・・』
蒔風となのはが念話で話し合う。
確かに、自分たちの教導官(先生)の命が狙われるだなんて言われたらショックだろう。
『うまく隠して離せないかな?』
『おれぁ欺くのはできても嘘つけない人間なんだよ』
念話ばかりしていっこうに黙ったままのなのはと蒔風に、エリオが聞いた。
「じゃあ、蒔風さんはなんで来たんですか?」
「そうですよ。十年も会わないで、どこで何をしてたんですか?」
更にキャロまで乗っかって、蒔風に好奇心に満ちた視線が向けられる。
それに蒔風がうろたえ、あーーー、とかうーーとかうなる。
頭をガシガシと掻いて、顔に手を当てて、考えてから、やめた、と言って話し始める。
「やめたやめた。どーにも隠し事はできん。正直に話そうか。びっくりすんなよ?」
そして蒔風が話しだす。
その内容はいつも世界で話すことだけで、翼人までの事には至っていない。
だがそれでも彼女らを驚愕させるには十分なインパクトがあった。
「な、なのはさんが!?」
「殺される!?」
「って話だよ。させないからな」
「それにしても高次の世界を回ってるだなんて・・・・・」
「それがオレさんの・・・・まあ、やらなきゃならないことだかんね」
そう言ってテーブルの真ん中におかれたスパゲッティをつまんで食べる蒔風。
フェイトやはやては知っていたことだが、初めて知らされたフォワード陣はシィン、としてしまう。
そんな状況に、またエリオが口火を切る。
「で、蒔風さん、結局「翼人」は・・・・・・」
「あん?・・・・・・・言ってもいいのか?」
「是非知りたいです!!管理局で英雄とされ、あの伝説の中でもさらに伝説とされている「翼人」ですよ!?」
「ミッドチルダの子供たちならみんな憧れてますよ!!!」
スバルとエリオのどーしようもない感じのよいしょに蒔風がプルプル震えて涙目になりながらなのはの肩を掴んで「どーにかして」と目で訴える。
「なんやむずかゆいなぁ。もう言ってしもたらどうや?」
「うー、えー、あー・・・もー」
「「「「??」」」」
はやてと蒔風の話にはてな?となるみんなに、蒔風がついに言った。
「俺がその翼人ですよ。まったく、あまり言い広めないでくれよ?」
言った。ついに言った。だが
「冗談はいいですから、本当にいたんですか?」
「え?」
「蒔風さんは確かにわけわからないけどそれは別世界だからでしょう?なんか翼人って言う感じしないですよーー」
「は?そ、それは・・・・」
蒔風ががっくりと肩を落とす。
まあ確かに、へらへらしてるし、身体はヒョロい方だし、雰囲気は完璧にお兄さんだ。
対してスバルたちの思い描いている「翼人」は、いかにもな感じの英雄さん。
これで本人が「俺が翼人です」なんて言ってもその場しのぎの逃れ回答にしか聞こえないのも無理はない。
「うう・・・・・うううう・・・・・・」
「で、蒔風さん、あなた翼人知ってるんですよね?どんな人ですかっ?」
しかし、彼らの抱いている蒔風に対するイメージに反論できない蒔風はうなる。
そんなことは自分が一番わかっているからだ。。
しかし、そんな彼に好奇心満々で聞いてくるエリオにスバル。
頭を押さえるティアナにあはは・・・困ったように笑うキャロ。
そんな彼らに、蒔風が言った。
「よし。なのは、こいつらの午後訓練、模擬戦にしていいか?」
「え?私はいいけど、ヴィータちゃんがなんて言うかな?」
「と、言うわけでここにヴィータを呼んどるよ」
「早ぁ!?いつの間に!?」
「うちは空間、広域魔法のエキスパートやで!!!!」
はやてさん、それ違います。
ともかく、はやてが通販で紹介するようにヴィータを出した。
本当にどっから来てたんだろう。
「あたしはいいぜ?手間が省けていいもんだし、舜が相手ならまあ無茶はしないだろ」
「そうだね。だったら任せるよ」
と、教導官二人の許可がおり、蒔風がよっし、と張り切る。
「お前ら、吠え面かかせてやっからなぁ!!!覚悟しとけよ!!!!」
そう言いながら部屋から飛び出す蒔風。
ポカン、とフォワード陣がその後を目で追い、どうしようかと話し合った。
「ね、ねえ。ほんとだったんじゃない?ティア」
「大丈夫よ。私たちはいままでだって訓練をしてきた。勝てるとは思わないけど、全力を出せば一撃くらいは・・・・・」
ティアナがやる気を出しながらそう言う。
だが、そこに声がかけられる。
「甘いな」
「あ、シグナム副隊長」
その背後に立っていたシグナムが腕を組んで立っていた。
「話は聞いた。おまえら・・・・・」
そう言ってティアナの肩を掴み、マジ真剣な目をして忠告した。
「その・・・なんだ・・・・・・やってしまったな」
「あー、そっか。シグナムいっぺん舜と戦ってたもんな」
「ああ・・・・・・正直に言おう。死を覚悟した」
その一言に皆の背筋が凍る。
エリオとキャロがガタガタ震えながらフェイトにしがみつくが、フェイトと目があった瞬間、ブワッ、と涙を流して口に手を当てた時、自分たちは終わったんだ、と肌で感じた。
なのははいっこうに目を合わせようとしないし、はやては今から医務室のシャマルに連絡を取っていた。
「確かに強いのは列車で見ましたけど、そんなにですか!?」
「やばいで~~~~?正直、リミッターはずしてもうちら全員でかかって勝てるかどうかや」
「うっっそぉ・・・・・・」
シャーリーがずり落ちた眼鏡を直しながらつぶやく。
隊長格の五人は「一つの部隊の戦力基準」のラインを越えないように、その力に制限をかけ、ランクを二個か三個落としている。
そのランクを元に戻してでも勝てるかどうか。
いや、あの感じだと結構絶望的みたいだ。
「そんな・・・隊長格五人がかりで!?」
「ううん。舜なら多分ザフィーラとシャマルがいても勝っちゃいそう」
フェイトの言葉に全員が同時に立ち上がって模擬戦の仕度を始めた。
汗ダラダラで、その眼は必死に光っていた。
「フェイトちゃん、さすがにあれは言い過ぎじゃない?」
「そうかな?舜なら出来そうな気がするんだけど」
「いやいや、あれから十年だぞ。八神家オールスターズだけでも絶対きつい。それにお前らまでいたらそれは無理ポだよ」
「!?」
フェイトの言葉にいつの間にか戻ってきていた蒔風が答える。
曰く、三人同時、もしくは八神家オールスターズならなんとかぎりぎり勝てるかどうか。全員だと無理かもしれない、とのこと。
理由としては「数がいるとこっちも疲れる」だからだそうだ。
それはめんどくさいだけであって決して勝てない、というわけではない気がするのだが。
「それで、舜君は何しに戻ってきたん?」
「そうそう、はやて、聞きたいことがあんねんけど」
「はいはい」
「模擬戦ってどこでやるの?あと、俺の部屋は?」
「「「あ」」」
こうして模擬戦の準備が整って行く。
「スバル!!あんた気ぃ抜くんじゃないわよ!!!」
「だ、大丈夫だよ!!!ぜ、絶対やられないもん・・・・・絶対だもん!!!(涙目)」
「「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ・・・・・・・・・」」
それまでの間、フォワード陣は必死になってモチベーションを上げていた。
がんばれフォワード。
負けるなフォワード。
君たちはきっとやれる
to be continued
後書き
フォワードたちの次回の健闘にご期待下さい。
アリス
「打ち切りみたいに言わないでください。かわいそうに・・・あんなこと言ったから」
ぶっちゃけエリオスバルあたりは半信半疑で「どうだろう?」、ティアナは「ごまかしてますね」、キャロは「この人との接し方わかんないや」って感じです。
アリス
「きっと心の底で後悔してますよ」
でしょうね。
あのシグナムさんが「あいつと戦えていいな」ではなくマジもんの忠告しましたからね。
アリス
「それは恐ろしい」
まあ彼女前回大変なことになりましたから。
アイアンクローとか
アリス
「次回、蒔風VSフォワード四人」
ではまた次回
誰にも負けない夢があるから
ページ上へ戻る