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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  179 酬い


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

ダンブルドア校長との談合(?)の翌日にはジニーは以前の様に快活とした表情を俺達に見せる様になった。

……ジニーの気配に紛れていた〝お辞儀さん〟の気配もきれいさっぱり消えていたので、ダンブルドア校長は“トム・マールヴォロ・リドルの日記”を無事に破壊出来たのだろう。

そして時は目まぐるしく移ろい、後にアニーが語った──〝魔のバレンタイン〟を越えて、そろそろ寒気も大人しくなる4月の頭になっていた。

もう2ヶ月先に期末試験が見える時期、俺達三人は仲良く図書館で試験勉強に精を出して──いる訳ではなく、寮の談話室でチェス盤を囲いながら談笑していた。……平たく云ってしまえば〝日常〟の風景だ。

「いつの間にか期末試験の二ヶ月前だぜ? ……時間っていつの間にか経過してるよな──ビショップをF‐5のへ」

「それなら先月は期末試験の三ヶ月になるね。ボク達なら十中八九パス出来るよ。……それとロン、そのセリフ、まんま年寄りだから──そうきたか。……ならルークを──って、げっ、ポーン! ……もう〝詰み〟じゃん。駒隠すの巧すぎ」

アニーは盤面を見渡し、キングを助ける為にルークで俺が先ほど動かしたビショップを討とうするが、しかしその所為で、王が居るコマの交差線上にはルークに昇格(プロモーション)したポーンが居た。……有り体に云わばアニーも言った様に〝詰み(チェックメイト)〟だ。

(やが)てアニーはパタパタと手を振りながら「〝降参(リザイン)〟〝降参(リザイン)〟」とやっつけ気味に宣言する。

これでアニーとのチェスの対戦成績は31戦27勝3敗1分となる。ハーマイオニーとの16戦15勝0敗1分なので対戦回数自体はハーマイオニーの方が少ない。……それでもハーマイオニーは時たまチェスで俺に挑んでくるあたり、ハーマイオニーが地味に負けず嫌いなのが窺える。

……ちなみにハーマイオニーとアニーとの対戦成績は、10勝3敗といった具合で、今のところアニーが勝ち越している。

閑話休題。

「……期末試験の結果はそこまで気にしてないさ。〝防衛術〟の授業以外はな」

「……今のところ、ロックハートがボク達の〝タメ〟になってると言い切れるのは〝決闘クラブ〟のピエロ振りで笑いを提供してくれるくらいだけだしね」

「……ロックハート先生の事だもの。……きっと奇想天外な試験になると思うわ──色々な意味でね」

チェス盤を片付けながら俺とアニーは深く溜め息を()く。するとそこで、ハーマイオニーが最早何回読み終えたか定かではない【泣き妖怪バンシーとナウな休日】から顔を上げて、俺達の会話に参加してきた。それも、微妙な表情で。

……大方ハーマイオニーはこれまでのロックハートが教鞭を執っている〝闇の魔術対する防衛術〟で毎回の様に行われている〝茶番劇(じゅぎょう)〟を思い出しているのだろう。

「……一番最初の授業の二の舞なりそうではあるな」

「〝闇の魔術対する防衛術〟と云うくらいですもの──きっと〝決闘クラブ〟で習った呪文を実技試験として出してくると思うわ」

「それなら余計ボク達からしたら心配は無くなるね」

事も無さげに言うアニーの傲岸不遜極まりない言葉は割りと正しい。初めて開催された〝決闘クラブ〟から計ったとして──俺達三人の対戦戦績の勝率は、〝合計したとしても〟9割を超えているからだ。

〝全勝〟──10割では無いのはアニーとハーマイオニーが、俺とハーマイオニーやアニーが決闘した事があるからである。

……詳細は、俺がハーマイオニーから1勝上げていて、二回戦っているアニーとハーマイオニーが互いに1勝ずつとな塩梅だ。

(そろそろ俺もトネリコの杖でだと楽勝するのも難しくなってきたな…)

ふとそんな事を思い出す。……楽勝するのが難しくなってきている理由も何となくだが検討はついている。二人はよく俺に内緒──に出来ていると思っているだろうが、よく〝在ったり無かったり部屋〟の方にアニーとハーマイオニーが向かっていくのを知っている。

しかもアニーとハーマイオニーは俺が手ずから潜在能力を引き出すスキル──“勿体ない資質(ポテンシャルヒット)”でその潜在能力(さいのう)をこじ開けてあるので、日々の進化率が割りと笑えないのだ。

……アニーとハーマイオニーと、二人同時なら〝あの〟セブルス・スネイプとそこそこ撃ち合えると云えば、その異常性が判るだろう。

(……多分アニーは俺が気付いている事に気付いているな…)

そこで、ハーマイオニーがふと思い出した様に──所在無さげに口を開く。

「……ところで二人とも──特にロン。……本当に私が〝あれ〟を使わせてもらえる事になったけどよかったの?」

「ん、まぁな」

「ボク達もマクゴナガル先生から〝特別授業〟を受けられるからね」

ハーマイオニーの言う〝あれ〟が〝逆転時計(タイム・ターナー)〟だと云うことはすぐに判った。復活祭(イースター)の時、俺達三人はマクゴナガル先生に纏めて呼び出されて〝とある提案〟をされた。

曰く…

―貴方達三人は本校開始以来、稀に見る優秀な生徒です。……ですので、私も多少ではありますが貴方達三人の〝将来〟の為に力添えする事を決めました。……実を云うと一つだけですが、〝逆転時計(タイム・ターナー)〟が入手出来そうなので──貴方がたの誰かに貸与しようかと思っています―

……との事だ。

〝逆転時計(タイム・ターナー)〟の話を──俺達は知らない事になっているので、マクゴナガル先生から聞いた。……マクゴナガル先生から〝逆転時計(タイム・ターナー)〟について聞いている際、俺達三人は微妙な表情になっていなかったかが心配だったり。

その後、その場で〝逆転時計(タイム・ターナー)〟の〝なすり付け合い〟がやんわりと交わされたが、結局のところはハーマイオニーが〝逆転時計(タイム・ターナー)〟を使用して〝選択科目の全修〟をする事となった。

……ちなみに、俺が選択したのは〝魔法生物飼育学〟と〝古代ルーン文字〟で、アニーが〝魔法生物飼育学〟と〝数占い〟だった。……こういった選択科目でアニーと──もとい、円と別れるのは珍しかったので、そこはかとなく新鮮な気分になったり。

閑話休題。

(……後はマンドレイクが収穫出来る様になるのを待つだけだな…)

暇を持て余した俺は、そんな事を考えながら〝検知不可能拡大呪文〟を掛けてあるカバンから【トロールのとろい旅】を取り出し膝の上で開いた。アニーも【ヴァンパイアとバッチリ船旅】を開いていた。

やはり、〝予習〟はしておいて損になるものではない。……アニーもまた、俺と同じことを考えていたようだ。

「……くくっ…」「……ふふっ…」

俺とアニーはほぼ同じタイミングで笑いあった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

さらに時は経過して期末試験を三日後に控えた朝食時、ダンブルドア校長が壇上に立ち、遠目でも判るような満面の笑みで語り始めた。

――「皆のもの朗報じゃ。スプラウト先生の話では漸くマンドレイクが収穫出来る様になったそうじゃ──そして、今夜にはバジリスクに石にされてしまっていた生徒達も、無事元に戻る事じゃろう。……犯人についてもこちらで身柄を押さえて厳粛な処置を取った──そう、〝秘密の部屋〟についてのこの一連の事件は完全に解決された」

ダンブルドア校長がそう宣言した瞬間スリザリン以外のテーブルから歓声が沸き上がる。そしてダンブルドア校長はタイミングを見計らい「しかしじゃ」──と付け加える。

――「心苦しい事に、ミセス・ノリス──フィルチ管理人の愛猫を襲われた当初、その正体がバジリスクなのだと我々教師陣も気付かなんだ」

ダンブルドア校長がそこまで言うと、生徒間に動揺が走る。1分ほでどよめいたがまたもやダンブルドア校長がタイミングを見計らい話を進める。

――「……そうなれば〝なぜ気付けたのか?〟──と云う疑問を持つじゃろう」

疑問に思ったであろう生徒の何人かは頷いた。

――「とある三人の生徒がマクゴナガル先生を通して教えてくれたのじゃよ──それも対処法も含めてのぅ。……実に迅速な対応じゃった。故にその三人には特別に(むく)いたく思う」

(……おいおいマジすか…)

その時、ダンブルドア校長の云う〝報酬(むくい)〟が何なのかを察した俺は頭を抱えたくなった。

……隣のアニーがどんな表情をしているのかが気になり、ちらり、とアニーを盗み見れば俺も浮かべているであろう──微妙な表情を浮かべている。

――「……ミスター・ロナルド・ウィーズリー、ミス・アニー・ポッター、ミスハーマイオニー・グレンジャーの三人にはホグワーツへの多大なる貢献を讃え──一人につき100点を与えよう」

しん、と望外の加点に全生徒は押し黙ってしまう。……しかしその沈黙も、たった十秒かそこらの事で、照らし合わせたかの様に──特にグリフィンドールの生徒達の、喜びの余りの歓声が爆発した。

(はぁ…。……〝300〟はやり過ぎだろうに──いや、それよりも…)

ふと教師が座っている席の方を──それとなく見てみれば、ロックハートが〝驚愕〟の相をその(かんばせ)に浮かべていた。しかしそれも数秒の事で、直ぐ様表情を思案しているような表情(それ)に変えた。

(……これ、〝〝忘却術〟コース〟になるんじゃ…。……所詮はホグワーツの中だけだからロックハートならどうにでもしそうだ…)

「やったな!」「やったな!」

「偉いぞ、ロン」

頭を抱えたくなったところで、兄三人から声を掛けられる。それらに適当に相槌を打って、何と無しに動かした視線の先でアニーとハーマイオニーを讃えてジニーと目が合った。

……するとジニーは何かを閃いた様なリアクションの後に聞いてくる。

「……もしかして〝R・W〟ってロンの事?」

俺はジニーの疑問に対して、人差し指を唇に当て──所謂(いわゆる)〝しーっ〟のポーズでジニーの疑問を封殺する。

「……と云うことはロンって──へむっ!?」

あのメッセージは女子トイレに置いておいた事を思い出し、〝沈黙呪文〟を掛けてジニーを黙らせる。……アニーとハーマイオニーに目線でジニーへのフォローを頼んでおくのも忘れない。

そしてダンブルドア校長から今夜──バジリスクに襲われた生徒が目覚め次第、簡素ながらパーティーをする事を聞いて、今日の授業の為に各々散っていった。

……ちなみに、バジリスクに襲われた生徒は試験が免除されると聞いてブーイングが出たが──それは蛇足だったか。

SIDE END 
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