提督はBarにいる・外伝
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ほっぽと鯉のぼり編
ほっぽと鯉のぼり・始まり
前書き
この作品は以前、ハーメルンで開催されていた企画への応募作品です。お題が端午の節句(開催が5月だったので)という事で、普段よりもギャグテイスト強めであり、主役もロ〇コン提督のアイドル、ほっぽちゃんとなっております。飯テロ要素は少な目ですが、よろしければどうぞ。
艦娘と戦いを繰り広げる正体不明の敵・深海棲艦。彼女達には心は無いのか?否、そんな事はない。人間と艦娘、そして深海棲艦。この奇妙で歪な三角関係は、互いに互いを知らなすぎる余りにいがみ合い、今もなお争っている。これは、そんな争いの中で起こった小さな交流の話……。
「ホッポノ……ヒシモチ…。」
「ヒシモチィ……マタ、トラレタァ~!」
ここは深海棲艦達における大本営のような場所。人間の技術力では到底辿り着く事は出来ない海深く暗い場所。便宜的に《深淵》と呼ばせて貰いましょう。そこで子供が癇癪を起こしたかののように泣き叫んでいる姫級の深海棲艦が一人。名前は《北方棲姫》、通称ほっぽちゃん。姫級の戦闘能力を持ちながらその容姿や精神はまだ幼く、ル級やヲ級といった配下の深海棲艦達が身の回りの世話をしていました。
「あぁ、お労しや姫様……。」
「姫様、あんなに泣いて可哀想…。」
泣き止まない北方棲姫を見てオロオロしているのは、普段から身の回りの世話をしているル級とヲ級の二人。元々『名前』の概念が無い深海棲艦達は、人間が使っている通称を利用しています。
「どうしたんだい?姫ちゃんの奴。さっきからずっと泣きっぱなしじゃない。」
「レ、レ級さん!貴女南方海域に行ったはずじゃあ……!?」
「最近めっきり攻めてくる艦娘共も居なくてさぁ。暇だったからちょっと里帰りにね~。」
ル級に話しかけて来たのは戦艦レ級。姫級に勝るとも劣らない戦闘能力の持ち主で、戦う事に快感を覚えている戦闘狂です。
「じ、実は……姫様の姉上であらせられる港湾棲姫様が作って下さった菱餅を、艦娘共に奪われてしまいまして。」
「……ん?でもそれって確か、2ヶ月位前の話じゃないっけ?」
そう、菱餅は桃の節句……3月にあるひな祭りのお菓子です。
「えぇ、それを艦娘達に奪われてからというもの、姫様は毎日思い出してはああして悔し涙を……。」
よよよ、とハンカチで目元を拭うヲ級。
「いやいやいやいやいやいや!2ヶ月経っても諦めきれないって!どんだけ!?恨み募らせ過ぎでしょ!」
ほっぽちゃん、幼い見た目に似合わず執念深いようです。
「おのれ艦娘共め、こうなったら報復あるのみ!」
「奴等の荷物を我らの手で奪い、姫様の恨みを晴らすのだ!」
ル級がそう吼えると、周りにいたヲ級やイ級、ホ級やヌ級までもがそれに同調して燃えている。ほっぽちゃん、皆からとても好かれているんです。
「仕方無いなぁ、ボクも暇だから手伝ってやるか。」
レ級までもが協力して、人間の貨物船を襲って積み荷を奪うつもりのようです。はてさて、一体どうなってしまうのやら。
ル級達が出撃してから数時間後……。
「て、手強かった……。」
ボロボロになりながらもどうにか無事に帰って来れたようですね、ル級達。
「で、でもレ級さんが手伝ってくれなかったらヤバかったね……。」
そう言っているヲ級の帽子からは煙が上がり、持っている杖はひしゃげています。
「ま、君達が囮になって艦娘共を引き付けてくれたから、ボクが船に飛び込んで積み荷を奪えたんだ。結果オーライだろ?」
唯一無傷のレ級はシシシシシ、と笑っています。
「昔は貨物船襲うのも楽だったんだがな。ここ最近艦娘共の護衛が手強い。」
「そうだね、前はル級や私が行かなくてもちゃんと積み荷を奪えてたもんね。」
どうやら彼女ら、定期的に人間の貨物船を襲って積み荷を奪っていたようです。
「それもこれもあのブルネイの鎮守府の提督のせいだ。」
「ん?そのブルネイの提督とやらの何が問題なの?」
レ級は最激戦区の南方海域にいる為、詳しく知らないようです。
「あそこの鎮守府の艦娘共、何でかいつもキラキラしてんですよ。キラキラしてると避けるし、固いし、攻撃の狙いは正確だし、相手としては最悪なんですよ。」
「ふぅん……何かヤバい薬でも使ってんのかね?」
「そうとしか考えられませんよ、ドーピングですよあんなの。」
「それより、早く開けようぜこの箱。戦利品は確認しないとね~♪」
ル級、ヲ級、レ級の3人はしげしげと箱の周囲を眺めています。
「見た目は普通の木箱だな。」
「中身はなんだろ?」
「おっさんとか入ってないよね?」
「まさか。そんな変態いないでしょ。自分から箱に入りたがるなんて……」
どこか別の世界線で、眼帯した葉巻好きのオッサンがくしゃみしてそうですが、今は放って置きましょう。
「あ!ここに何か書いてあるよ!」
ヲ級が何か書いてあるのを発見。そこには、
『端午の節句用お飾り一式』
と書かれています。しかし……
「……読めないよ~!」
「私も無理だ……!」
「ムッリ~!」
三者三様、人間の文字なんて読む必要も無いため解読出来ず、頭を抱えてジタバタしています。
「もういい!開けて中身を確かめた方が早い!」
「ま、待ってレ級さん!もしも姫様に危険が及ぶような物だったら……」
バキッ。ヲ級の制止が言い終わるか終わらないかでレ級が木箱の蓋を引き剥がしました。中から姿を現したのは……
後書き
いかがでしたでしょうか?文章内の補足をすると、毎晩提督の飯を食べてるせい(お陰?)で艦娘達が常時三重キラ付け状態くらいのコンディション、という訳です。そんなんチートやん……
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