聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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740部分:第十二話 炎の魔神その一
第十二話 炎の魔神その一
炎の魔神
カミュは赤い玄室の中に入った。そこにはもう相手がいた。
「ベリアルだな」
「ベリアルのレダ」
彼は自分から名乗った。
「私のことは覚えているな」
「ロシアでの闘いのことは忘れる筈がない」
カミュもまた彼に対して言葉を返す。
「私は今まで、今の命の中で」
「ふむ」
レダはカミュの今の言葉に目を向けた。そこから何か気付いたようであった。
「貴様もまた気付いているのだな」
「気付いているというのか、私が」
「そうだ。気付いているな」
そのカミュに対して問うた言葉だった。
「貴様も私も。今の命で闘っているだけではない」
「それはわかっている」
カミュもまたレダに返した。
「私は永遠の戦いの中にいる」
「その通りだ。そして私ともだ」
「そうだな。戦っていたな」
「そうだ」
まさにそうだと。レダはまたカミュに対して述べた。
「我々はあの聖戦でも戦った」
「あの時私はライブラの武具を持ちそのうえで貴様と闘ったな」
「覚えているな。それではだ」
さらに話すレダだった。
「全てはわかっているな」
「貴様とだけではない」
カミュも言う。
「私は狂闘士達だけでなく冥闘士、そして海闘士達とも戦ってきた」
「貴様等黄金聖闘士全員はな」
「そうだったな。戦いは私が輪廻転生を繰り返す度にそうなっていた」
「そういうことだ。それがわかったな」
「気付いた。それでわかった」
カミュは普段通り落ち着いた言葉で答えた。
「我等全てそうだ」
「そういう意味で貴様等は皆同じなのだ」
「我々は。そうだな」
「そうだ、同じだ」
彼はまた言った。
「同じなのだ。聖闘士は生まれ変わる」
「そして狂闘士はだな」
「何度でも蘇る。アーレス様がそうして下さる」
「面白い話だ。特にベリアルよ」
「私がどうした?」
「貴様がアーレスの下にいるのはだ」
言うのはこのことだった。
「思えば面妖なことだな」
「面妖だというのか」
レダもまたカミュのその言葉に応えてきた。
「それは」
「貴様は堕天使とされている」
これはレメゲトン等にある話だ。聖書や失楽園にもある。
「それもかなり高位のな。それこそ神に従わないまでのだ」
「案ずるな。私は確かに魔神だが」
「うむ」
「八大公の一人。しかしだ」
「しかし?」
「人でしかない」
他ならぬレダの言葉である。それであった。
「所詮はだ」
「人か」
「そうだ、私は人だ」
またカミュに対して言ってみせたのである。
「アクエリアス、貴様と同じ人だ」
「そういう意味ではか」
「そういうことだ。私は人であり天闘士となったが」
こうした意味では彼もまた他の狂闘士達と同じであった。狂闘士のはじまりは誰もが天闘士である。アーレスにつきそれにより狂闘士となったのだ。
「そこで私を待っていたのは孤独だ」
「孤独だったのか」
「私は戦いを愛していた」
ここでも彼は他の狂闘士達と同じである。
「それが受け入れられなかったのだ」
「戦いによって何をするつもりだった」
「全てを変える」
「全てをか」
「そうだ、全てを変えることを望んでいた」
こう言うのである。
「戦いによって。停滞し腐敗していくだけの世界をだ。それを果てしない戦いによって動かしそのうえで全てを変えていきたかったのだ」
「それでなのか」
「だが。私の考えはだ」
レダの言葉が一旦止まった。
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