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選挙

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第九章

「これから」
「こっちは資金は細心の注意を払いましたが」
「その辻本先生みたいな人にも突っ込まれますし」
「だから注意していましたが」
「言っている本人はどうか」
「それが問題ですね」
「うん、それがどうなるかな」
 西岡は辻本の当選を見て言った、それはこの時だけのことで。
 この日は彼もスタッフ達も休んだ、それもじっくりとだ。そのうえでこれからのことに備えたのだ。今は疲れを癒して。
 西岡は再び政治家、県会議員としての活動をはじめたが。 
 辻本、彼女はというと。
「やっぱり政治資金が突っ込まれましたね」
「外国人からの献金があったみたいです」
「あと老人ホームで色々もの配ったり」
「やばいことしていましたね」
「それが指摘されていますね」
「マスコミは取り上げていませんが」
「ネットでは話題です」
 マスコミは辻本と仲のいい者もいるので取り上げてはいないがだ。
「全国的に話題になっていて」
「追い詰められているみたいですね」
「あっちの事務所にも電話が殺到して」
「大変みたいですよ」
「自分が言うからにはね」
 他の者にだ。
「身を慎まないとね」
「駄目ですよね」
「選挙では特に」
「すぐにわかりますから」
「突っ込まれますから」
「そうだよ、僕は言われることがわかっているから」
 その辻本か彼女の様な者にだ。
「最初から注意していたけれどね」
「それがかえってよかったですね」
「そして地道に選挙活動をしましたし」
「細心の注意を払って」
「そうしたのがよかったですね」
「そうだね、本当にね」
 実際にとだ、西岡はスタッフ達に応えた。
「よかったよ」
「古いやり方もですね」
「選挙ではいいですね」
「辻本先生みたいなやり方で当選しても」
「これもいいですね」
「そうも思ったよ、とにかくね」 
 西岡はまた言った。
「当選した、それならね」
「はい、また頑張りましょう」
「議員として」
「県議会にまた行って」
「そのうえで」
「そうしようね、そういえばあの先生はね」
 ここでまた辻本のことを話した西岡だった。
「マスコミ受けする政策ばかり言っていたけれどね」
「実際は、ですよね」
「然程動いてなくて」
「パフォーマンスばかりで」
「それよりも他の人への攻撃に熱心でしたね」
「結局そうした人はああなるのかな」
 今の様にというのだ。
「そうなるのかな」
「そうかも知れないですね」
「そうした人だから政治資金の集め方もいい加減で」
「それが出てですね」
「ああなりますね」
「まああの人はこれから大変なことになるだろうけれど」
 それでもというのだった。
「僕は僕のやるべきことをやっていくよ」
「はい、そうしていきましょう」
「普段から」
「目立たない政策でも提言していって」
「実現していきましょう」
「それが政治だからね」
 それ故にと返した西岡だった、そして自分が車で県議会に向かった、だがこの時彼はまだ知らなかった。辻本は資金だけでなく多くの疑惑や不祥事が出てそのうえで逮捕にまで至ることを。そしてそのことに呆れることも。彼はまだ知らなかった。そしてその時にあらためて政治家とはどうあるべきかを考えることも。


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                2016・6・15 
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