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赤ちゃんが欲しい

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第一章

                 赤ちゃんが欲しい
 サラーフ=ムワッヒドはサウジアラビアにおいて王家程ではないがかなりの資産を持っており世界でも知られた資産家だ、オイルビジネスだけでなく様々な仕事を行い金は溢れる様に持っている。
 屋敷というよりは宮殿と言っていい場所に住み四人の妻だけでなく多くの愛人達も持っていてまるでハーレムだ。
 その妻と愛人達の間に多くの子供をもうけている、それで今もだった。
 この前迎え入れた十九歳の愛人、アーイシャが懐妊したと聞いてだ、彼はゆったりとした椅子に座ったまま笑顔で言った。
「それは何よりだ」
「何よりといいますが」
 その彼にだ、ムワッヒド家に代々仕えている執事長のターリフ=ハムディが丸々と恰幅のいい身体に黒い口髭を生やした身体と同じく丸々としているが目鼻立ちはしっかりとしていてサウジの正装をしている主にいった、ハムディは痩せた端整な青年である。
「旦那様、お子様は」
「うむ、これで九十八人目か」
「九十八人ですね」
「四人の妻に多くの愛人達がいる」
 合わせて三十二人である、アーイシャを入れて。
「十五で最初の子をもうけてな」
「今ではですね」
「九十八人だ」
 そこまでいるというのだ。
「多いものだな」
「それでもですか」
「嬉しいものだ」
 愛人が自分の子を懐妊したことがというのだ。
「やはりな」
「お子様は何人いてもですか」
「いい」
 ムワッヒドは笑って言った。
「五十になるが心からそう思う」
「左様ですか」
「ははは、九十八人ではなくな」
 陽気にだ、ムワッヒドはこうも言った。その黄金と宝玉で飾られた宮殿の様な屋敷の中で。
「より欲しいな」
「では」
「百人だ」
 その大台だというのだ。
「百人の大台を目指すぞ」
「あと二人ですか」
「そうだ、わしは励むぞ」
 子作りにもというのだ、家の仕事だけでなく。
「子供は幾らいても多過ぎることはない」
「ですが」
 鋭利な表情になってだ、ハムディはムワッヒドに言った。
「世間では旦那様をとかく言っています」
「世界中でだな」
「時代遅れのハーレムを持ったスルタンだの世界一の女好きだの」
「確かにわしは女好きだ」
 自分で認めた、それも平然と。
「しかし節度は保っておるぞ」
「コーランに従い」
「人の女には手を出さぬ」
 彼氏がいる女や人妻にはというのだ。
「そこは守っておるしだ」
「奥方様や愛人の方々にも」
「そうだ、一度迎えたならな」
 それこそというのだ。
「最期まで面倒を見ておるな」
「はい、確かに」
「捨てたりせぬし養っておる」
 実際にそうしている、彼は全ての妻や愛人達にも裕福な暮らしをさせている。言うまでもなくその夥しい数の子供達にもだ。教育も受けさせている。
「離婚もせぬな」
「コーランでは離婚は許されていますが」
「わしは好きではない」
 イスラムでは簡単に出来る離婚はというのだ、ただしイスラムでは別れたその妻の面倒を一生みないといけないことも書かれている。実はムハンマドは当時としては相当なフェミニストであり女性のことを考えていたのだ。 
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