提督はBarにいる。
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オトコ持ちのから騒ぎ!?・その2
「さてさて、お次はわらび餅を作ろうか」
「でもdarling、わらび餅って蕨粉から作って高いんじゃ……」
「そりゃ本蕨粉使えば高いけどな。今日びそんな貴重なモン使ってるのは老舗の料亭とか、そういう高級店だけだっつの」
実際、わらび餅とはその名の通り、山菜の蕨(わらび)の地下茎からでんぷん質を取り出し、それを餅のような状態に加工した和菓子である。しかし蕨から取れるでんぷん質は限り無く少なく、10kgの蕨の地下茎から70gしか取れない。その上、加工に2週間以上かかるという大変に手間のかかる代物なのだ。そこで和菓子職人達は知恵を絞り、葛粉を代用にする事を発見した。……え、それでは葛餅では無いのかって?加工の仕方が違うのでいいんです。
「しかし葛粉も高いからな。今回は更にお手軽に、片栗粉でわらび餅を作る」
「蕨粉の代用で葛粉を使うけどそれも、高いから片栗粉で代用……代用の代用ってそれ既に別の物じゃあ…」
「金剛」
提督が金剛の両肩をガシッと掴む。
「美味けりゃいいんだよ」
「アッハイ、ソウデスネ……」
そうして金剛は深く考えるのを止め、調理に集中する事にした。
《片栗粉で作る!お手軽わらび餅》
・片栗粉:50g
・砂糖:30g
・水:250cc
・きな粉:適量
※みつの材料
・きび砂糖(または黒糖):60g
・水:50cc
「まず先に味付け用の『みつ』を作るぞ。鍋にきび砂糖とそれよりちょっと少ない水を加えて火にかける」
「水の方が少ないのは何故デスか?」
「粘り気と濃度の問題だろうな、多分。和菓子のプロでもないから知らん」
火にかけて温まって来ると、砂糖の塊が溶けてトロトロになってきた。
「焦げ付かないように混ぜつつ、沸かさないように火加減を調整しろよ?焦がすと苦くて食えたモンじゃないからな」
その苦々しい顔を見るに、過去に失敗した事があるらしい。提督でも失敗するのかと少し可笑しくなった金剛がクスリと笑う。
「なんだ?俺の顔に何か付いてるか?」
「いえ、別に何でもないヨ?砂糖は溶けたけど、次はどうするの?」
「みつは粗熱取ったら完成だ。お次はわらび餅本体を作る」
そう言うと提督は鍋に片栗粉、砂糖、水を入れてよくかき混ぜ、それから火にかけた。
「火加減は中火から弱火の間、絶対に焦がさないように絶えず木べらでかき混ぜ続けろ」
しばらくかき混ぜ続けていると、水が僅かに粘りを帯びてきて、それはやがて透明なゲル状の塊になっていく。
「よしよし、いい感じだ。更にかき混ぜていけば1つの塊になってくるから、固まってきてからも1分位混ぜて水分を飛ばせ」
鍋の中の様子を確認した提督は、スプーンと氷水を準備し始めた。
「よ~し、火を止めていいぞ。お次はスプーンを2本使ってわらび餅を一口大に丸めて、氷水に落として冷やす」
「素手じゃダメなの?」
「チャレンジしてもいいが、死ぬほど熱いぞ?」
「HAHAHA、まさかそんな訳……うぁっつぁ!」
さ〇まさんかお前は、とツッコミを入れたくなる位に見事な否定からのリアクション芸だった。金剛は涙目になりながら、流水で手を冷やしている。
「だから言ったろうに……アホ」
と、提督は冷やかな視線を送っている。ともかく、冷やしたわらび餅は盛り付けて、きな粉とみつをかければ完成である。
「大丈夫か?手は」
「こんなの平気デース!さぁ、次は何を作るんですか?」
「まぁ、大丈夫ならいいが……お次は洋菓子。あんこ入りのベイクドチーズケーキを作るぞ」
《和と洋のコラボレーション!あんこ入りチーズケーキ》
・クリームチーズ:100g
・グラニュー糖:30g
・卵:1個
・コーンスターチ:大さじ1
・ヨーグルト:70g
・生クリーム:80cc
・こしあん:160gくらい
・ビスケット:8枚
「あんことチーズってそもそも合うの?」
「あんことバターが定番化してきてるだろ?乳製品との相性は案外悪くねぇのさ」
そう言いながら提督は計量したクリームチーズを軽くレンジでチンしていく。本来なら冷蔵庫から出して室温に戻しておくらしいのだが、今回は突発的な話だったので応急措置だそうだ。
「柔らかくなったクリームチーズを泡立て器を使ってほぐしてクリーム状にする。そこにグラニュー糖を加えて更に練る……金剛、卵割って溶いておいてくれ」
「OK、任されたヨ」
提督の指示に応じながら、金剛は卵を割って溶いていく。グラニュー糖とクリームチーズが馴染んだら、溶き卵を数回に分けてチーズ生地に加えて混ぜ合わせる。
「お次はヨーグルトと、生クリームを50cc加えて更に混ぜてやる」
「生クリーム残ってるけど?」
「これは別の物に使うんだよ。いいからさっさと混ぜる」
ブゥ、と口から不満を漏らしながら混ぜ合わせていく金剛。対して提督は反応せずにこしあんをボウルに移して、そこに先程残しておいた生クリームを合わせた。こしあんの塊を潰すようにしながら生クリームと混ぜていく。出来上がっていくあんこクリームとでも呼ぶべき代物は、それだけでも美味しそうだ。そのままパンや餅に付けても美味いだろう。
「そっちは混ざったか?」
「う、うん。こっちはOKネ」
まさか作ってる最中の材料が美味しそうだからくれ、とは言えず金剛は黙り込んだ。
「んじゃ、コーンスターチを茶漉しでふるって入れて、また混ぜてくれ」
「りょ、了解だヨー」
あんこクリームが仕上がったらしい提督は、耐熱ガラス製の器を4つ用意し、そこにビスケットを2枚ずつ砕いて入れている。そこに先程のあんこクリームを4等分しつつ敷き詰めている。
「よし、チーズ生地を4等分にこいつに流し込んでくれ。その後は耐熱トレイなんかにお湯を張って、そこにこいつを置いて……と」
「後は170℃に余熱したオーブンで40~50分、焼き色を見ながら焼き上げれば完成だ」
このお湯を張って焼き上げるやり方を『湯煎焼き』といい、焼き上げるタイプのプリンやスフレ等を作る時に用いられるやり方である。耐熱容器の深さの半分位に達する辺りまで水を入れてやる事で、オーブン内に水蒸気を発生させ、蒸し焼きにする事でしっとりとした仕上がりになる。……まぁ、最近のオーブンにはスチーム機能なる物が付いている物もあるので、湯煎焼きをしなくとも同様の焼き上がりにすることも出来る。
「さて、もう1つの洋菓子は……生チョコにするか」
「え、チョコレートと緑茶って合うんデスか?」
「これが意外とマッチするんだよなぁ。抹茶とか煎茶の爽やかな苦味とチョコレートのまろやかな甘さが互いを引き立てるんだ。実際、俺の知り合いのお茶の先生なんか、お茶請けにガトーショコラ出したりしてるしな」
《家でお手軽!材料3つで生チョコレート》
・製菓用チョコレート:200g
・生クリーム:100cc
・ココアパウダー:適量
「材料はこの3つだけだ。金剛はチョコレートを細かく刻んでくれ。俺はその間に生クリームを温める」
そう言いながら提督は鍋に生クリームを入れ、焦がさないようにかき混ぜながら温めていく。
「沸騰寸前……鍋の縁に泡がフツフツと沸いてくる位まで生クリームを温めたら、刻んだチョコレートを入れて溶かしながら練る」
しっかりとチョコレートが溶けてトロトロの状態になったら、ラップを敷き詰めたバットにチョコレートを入れて、表面をゴムべら等で均して一晩冷やす。翌日ラップごと取り出して適当な大きさに切り、ココアパウダーを全面にまぶしたら完成だ。
「ん~♪どれも緑茶に合いますネ!」
「だろ?作り方は覚えたんだ、明日のお茶会の分は自力で作るんだな」
「うん、ありがとねdarling!」
感謝の意味も込めて頬にキスをすると、不意打ちだったからか提督の顔が僅かに紅潮していた。
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