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秘密のデート

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第一章

                 秘密のデート
 三橋亜理紗は赤髪を伸ばし頭の上の方でツインテールにしている。二重の目は気が強そうだが可愛らしい感じで細い眉は八の字だ。小さめの顔で身体つきは小学六年生に相応しい。この日亜理紗はフリルのついたミニスカートと赤いシャツ、白と赤のストライブのハイソックスという服装だった。その服装でだ。
 家を出る時にだ、弟の慎吾に言われた。自分より一つ下の弟に。
「派手じゃない?」
「そう?」
「それもかなりね」
「ちょっとね」
 言ってきた弟にむっとした顔で返した。
「今日はこうした服がいいから」
「そうなんだ」
「そう、だからよ」
「ブレスレットまでして」
「気付いてたのね」
「そりゃ気付くよ」
 弟はむっとした姉にさらに言った。
「ネックレスもしてるし。随分お洒落して」
「悪い?」
「悪くはないよ」
 慎吾もそれは否定した、小柄な姉よりずっと大きくしかも太った身体で。髪の毛は黒く短い。
「別にね」
「ならいいでしょ」
「けれど妙に引っ掛かるんだよね」
「引っ掛かるって何がよ」
「いや、そんなにお洒落して」
 そしてというのだった。
「何があるのかなって」
「あんたには何も関係ないでしょ」
「僕に関係なくても」
 それでもと言う慎吾だった。
「お姉ちゃんには凄く関係あるよね」
「鋭いわね」
「そうかな」
「ぬぼうっとした感じなのに」
 弟のその外見からの言葉だ。
「いつも思うけれど」
「僕は別に」
「そうよ、私には大いに関係あるわよ」
 亜理紗は弟に居直った口調で答えた。
「だからこのファッションなのよ」
「やっぱりそうなんだ」
「そうよ、どういう関係かは言わないけれど」
「デートとか?」 
 亜理紗が言うぬぼうっとした口調でだ、慎吾はこんなことも言った。家の廊下でムキになっている姉に対して。
「ひょっとして」
「うっ・・・・・・」
 弟の今の言葉にだ、亜理紗は言葉を止めた。止まってしまった。
 そしてぎくりとなった顔でだ、ようやくこう言った。
「そ、それは」
「違うの?」
「あんたには関係ないわよ」
 ぎくりとなった顔のまま言い返すのが精一杯だった。
「全然ね」
「それはそうだけれど」
「とにかくね、この服で行くから」
「何処に?」
「それも関係ないでしょ」
「ううん、まあ確かに僕には関係ないしね」
「大人しく夏休みの宿題とゲームをしておきなさい」
 弟にあらためて言った。
「いいわね」
「そうだね、じゃあね」
「そうよ、全く変に勘がいいんだから」
 弟ながらそれが癪だった、自分には全然似ていないが。
「余計なこと考えて言わないの」
「何か気になったから」
「気にしないの。じゃあ行って来るわね」
「車と痴漢には気をつけてね」
「車には当然気をつけるし痴漢にはね」
 鞄から二段式の特殊警棒を出して述べた。 
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