提督はBarにいる。
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提督と艦娘達の夏休み~夏の午後編・1~
さて、夏休みを取得した我が鎮守府。とはいえブルネイ所属の鎮守府のまとめ役を担っているせいで、完全に休みが無くなるワケでもなく……。
「暑い……」
「暑いですねぇ……」
BBQを楽しんだ後、他の鎮守府から送られてくる書類は片付けないワケにはいかず、俺と大淀の2人で汗だくになりながら書類と格闘している。
「明石ぃ~……空調の復活はまだか?」
「まだですねぇ。オーバーフロー起こして、中の基盤が焼けちゃってるのかも……」
汗だくの原因はコレだ。エアコンがぶっ壊れやがった。
「元はといえば提督が最強で運転させ続けるからじゃないですか、もう!」
「悪かったよ……怒ると血圧上がって熱くなるから、頭冷やせ」
大分慣れたとはいえ、北国育ちの俺にとっちゃあ赤道も近いブルネイの夏は暑すぎる。……まぁ、汗で透ける艦娘達のナイスバディを拝めるという点だけは評価するのも吝かじゃねぇが。
「あ゛~……暑い。もう無理」
「……提督、汗で腕に書類が貼り付いてます」
大淀の指摘に右腕を見ると、書類が一枚ペッタリと貼り付いていた。鬱陶しいので腕を振るって落とそうとするが、そんな俺を嘲笑うかのように書類が剥がれない。苛つきながら剥がすと、汗でインクが滲んで読めない。
「もうヤダ……マジで無理…」
力尽きたように執務机に突っ伏す俺。扇風機は回っているが、
「うわ、あの提督さんがダメ人間みたいになってる……」
「扇風機だけじゃなくて、何か身体を冷やせるような物があればいいんですが……」
それだ!突っ伏していた執務机から顔をガバッと起こし、机に付いているスイッチを操作する。瞬間、俺の背後の資料棚が床下に沈み込み、代わりに黒い冷蔵庫がせり上がって来た。
「な、何ですかコレ!?」
「また執務室改造したんですか!」
ギャアギャア喚いている明石と大淀を尻目に、俺はその冷蔵庫……いや、冷凍庫の扉を開く。そこにはギッシリと、俺の手製の『アイスバー』が詰め込まれていた。
~数ヵ月前~
「『アイス専用冷蔵庫』です~?」
「そうだ」
あれは……そう、春先の事だ。妖精さん達を呼び出してアイス専用冷蔵庫を作って貰えないか?と頼んでいたのだ。生まれも育ちも北国の俺は、ブルネイに着任してからこっち、コソコソと大量にアイスを買い込んで、見つからないように独りで涼を楽しむというのが密かな楽しみだった。
しかしそんな行いが食に目敏いウチの連中に見つからないハズも無く、俺のアイスのストックは瞬く間に駆逐艦達と甘い物好きの連中(要するにほぼ全員)に食い尽くされた。その時に誓ったのだ、いつか必ず俺専用のアイスサーバーを作ろうと。
「私達も暇ではないので~」
「それ相応の対価をいただくです」
「糖分の追加配給を要求するです」
いつも執務室の改造を頼んでいる妖精さんとの取引は、実にシンプルだ。彼ら(彼女らかも知れないが)は甘い物に目がない。改装が終わる度に手製のスイーツを振る舞ってきた。
「OK、冷凍庫が出来た暁には手製のアイスバーを振る舞う事を約束しよう」
「「「わ~い!」」」
喜色満面、といった表情で駆け出していく妖精さん達。これで一安心だろう。
「出来たのです」ドヤァ
いや、急いで欲しいとは言ったけどよ……。
「まさか2、3時間で作ってくるとは」
「いつもの業務用サイズ冷蔵庫を冷凍庫にするだけでしたゆえ」
少し気取った喋り方をして、自慢気だ。
「さぁ、早く報酬を払って頂くのです!」
「糖分だ~糖分だ~」
「提督のスイーツパラダイスや~」
早く作れ、とせっつかれてもアイスバーは凍らせる時間がかかる。
「解った解った、ただし今仕込んでも食えるのは明日だぞ?」
「「「「え~」」」」
アイスがそう簡単に出来てたまるか。……さて、落胆の色が隠せない妖精さん達には作り置きのクッキーで今日の所は我慢してもらいつつ、アイスバーの仕込みに移ろう。まずはフルーツの果肉入りのアイスバーから。
《食べ応えバッチリ!果肉入りアイスバー》※レシピの分量は全部4本分です
(みかんアイスバー)
・100%オレンジジュース:400cc
・みかんの缶詰:1/2缶
使うのはアイスバー用の製作容器。最近だとダ〇ソーをはじめとする100円ショップなんかでも売ってるから手軽だぞ。みかんの缶詰のシロップを軽く切り、アイスバー容器に分けて入れ、そこにオレンジジュースを注ぐ。後は棒を刺して冷凍庫で一晩凍らせるだけ。
(アップルパインアイスバー)
・100%リンゴジュース:300cc
・パインの缶詰:4枚
入れるフルーツと使うジュースが違う組み合わせも面白いぞ。缶詰のパインスライスを、半分か4等分位にしてアイスバー容器に。そこにリンゴジュースを注いで、これまた冷凍庫で一晩。リンゴも試したんだが、凍らせるとパサついて美味しくなかったのでオススメは出来ん。
(ぶどうアイスバー)
・100%ブドウジュース:300cc
・ブドウ(種無しの巨峰辺りがオススメ):40g位
ブドウは食べやすい大きさにカット。皮は剥かない方が美味いが、種は取り除こう。後はジュースを注いで棒を刺して、冷凍庫に。補足だが、使うジュースは100%果汁の物をオススメしておく。他のジュースでもいいんだが、味がぼやけやすい。食べ応え重視で果肉を入れてあるが、勿論ジュースだけ凍らせても美味いぞ。お次はヨーグルトを使ったさっぱり爽やかな味のアイスバーを。
《さっぱり爽やか!ヨーグルトアイスバー》※分量は4本分です
(ブルーベリーヨーグルトアイスバー)
・プレーンヨーグルト:2カップ
・ブルーベリー:1カップ
・ハチミツ:大さじ2
上記の材料を全て混ぜ合わせる。この時、ブルーベリーを潰しながら混ぜると鮮やかな紫色に仕上がるぞ。後は他のアイスバーと同じ手順通り、冷凍庫で一晩凍らせるだけ。
(パインヨーグルトアイスバー)
・プレーンヨーグルト:1カップ
・パインの缶詰のシロップ:1カップ
・パインスライス:4枚
上のアップルパインバーで使った残りを流用。ブルーベリーヨーグルトの方は酸味が強めの仕上がりなのでこちらは甘口にしてみた。ヨーグルトと缶詰のシロップを同量混ぜて、食べやすい大きさにカットしたパインは先に容器の中へ。後はヨーグルトを流し込んで冷凍庫へ。ヨーグルトは他にも色々なフルーツとの組み合わせが楽しい。自分なりの組み合わせを見つけるのもいいだろう。
お次は市販のお菓子を利用した、ちょっと風変わりなアイスバーをご紹介。
《意外な組み合わせ!?お菓子入りアイスバー》
(プリンアイスバー)
・牛乳:1カップ
・プリン:2個
まずは市販のプリンを使ったアイスバー。プリンそのものを凍らせても美味いが、個人的には此方の方が好きだな。プリンを軽く潰しながら、牛乳と混ぜてアイスバー容器に入れて凍らせる。プリンは市販の物なら何でもいいが、オススメはプッ〇ンプリンかな。
(オレオ入り濃厚チョコアイスバー)
・チョコ:30g
・純ココアパウダー:10g
・牛乳:100cc
・砂糖(三温糖がオススメ):20g
・インスタントコーヒー:小さじ1
・ラム酒:小さじ1/2
・ゼラチン:5g
・水(ゼラチン用):大さじ1
・生クリーム:100cc
・砂糖(生クリーム用):5g
・バニラオイル:数滴
・オレオ:5枚
ちっとは手の込んだ奴も作るか。ゼラチンは水に浸けてふやかしておき、その間に純ココアパウダー、インスタントコーヒー、牛乳、砂糖20g、ラム酒を鍋にかけ、粉類を溶かしつつ沸騰寸前まで温める。鍋からおろしたらチョコとふやかしたゼラチンを加えて、しっかり溶けるまでかき混ぜる。
チョコ液が出来たら生クリームに砂糖5gとバニラオイルを加えて、8~9立て位まで泡立てる。ホイップ出来たらチョコ液を氷水に当てながら冷やし、とろみがついてくるまで混ぜる。
とろみがついてきたらホイップクリームを加え、含んだ空気が全て潰れてしまわないように気を付けつつ、ゴムへら等で均一になるように混ぜる。オレオを適当な大きさに砕いて混ぜたら、原液は完成。
後はアイスバーの容器に流し込むだけなのだが、ドロリとしている為容器に入れたら底をトントンと持ち上げて平らな所に叩き付けて空気抜きをする。棒を差し込んで冷凍庫で一晩凍らせたら完成。原液が余ったら、冷蔵庫で冷やすとチョコレートムースになるぞ。ムースにしてあるから、アイスバーは溶けても垂れにくいしな。お次は……そうだな、俺流アレンジの『白熊アイスバー』を作るか。
《ちょっぴりオトナ味!白熊アイスバー》
・牛乳:200cc
・練乳:30cc
・フルーツミックス缶詰:1/3缶
・レーズン:50g
・ラム酒:レーズンがヒタヒタになる位
・茹で小豆の缶詰:50g
まずは牛乳を耐熱ボウルに入れてラップをかけて電子レンジで加熱。2分くらいで大丈夫かな?沸騰させる程温めなくてもいいので、大体そんなモンだろう。
加熱した牛乳に練乳を加えてよく溶かす。溶けたら粗熱を取るために放置。その間にフルーツミックスの缶詰の中身を空けて、食べやすい大きさにカット。シロップは使わない。
ここからが俺流アレンジ。レーズンをラム酒に漬け込んで置き、ラムレーズンをこしらえて加える。アルコールの風味も味わいたいなら、漬け込んだラム酒も入れるといいだろう。後は刻んだフルーツと茹で小豆もアイスバーの容器に入れて、練乳入りの牛乳を流し込み、軽く混ぜたら冷凍庫にIN。よし、妖精さんせの支払い分はこんな所だろう。
~翌日~
「うまうまー」
「甘いのです!ひたすら甘いのです!」
「身体もひんやり涼しいです~」
妖精さん達には大好評だ。……しかし、自分の身体よりデカいサイズのアイスバーがどこに消えていくのだろう?謎だ……。それはさておき、その後も暇を見つけてはコソコソと作り置きしていたお陰で、アイスバーのストックはかなりの物だ。コレなら毎日食べても一夏を乗り切れるだろう。暑さに脳みそをやられて、存在をすっかり忘れていた。
~そして冒頭のシーンへ~
「さてさて、どれを食おうかな……と。あ、お前らも食う?」
「「勿論!」」
さぁ、頂こう。
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