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提督はBarにいる。

作者:ごません
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嗚呼、懐かしの烏賊尽くし・その3

 さて、グラーフにイカ料理を振る舞うのはいいがどうしたものか。恐らくそのままの姿で出しても、潜在意識的な物で食べようという気にならないだろう。ならば、形を残さずに出してやるか。


《イカのお好み焼き風フライ》

・真イカ:1杯

・はんぺん:1/2枚

・紅しょうが:適量

・キャベツ:1/4玉

・塩:小さじ2

・胡椒:少々

・玉ねぎ:1個

・小麦粉、卵:適量

・酒:適量

・パン粉:適量

※その他、味付け用にウスターソース、マヨネーズ、青のり、花鰹等は適量

 まずはタネ作りから。イカの足と内蔵を胴から外し、中の透明な骨を抜き取る。

「アトミラール、イカというのは骨の無い軟体動物ではないのか?」

「あぁ、これか?これはイカの貝だった頃の名残でな。正確には『貝殻』なんだよコイツは」

「なんと!イカというのは貝の仲間だったのか、似ても似つかない姿なので知らなかった……」

「大元はオウム貝が祖先らしいけどな。詳しくは知らん」

 骨を取り除いたら胴とエンペラはぶつ切りにしてフードプロセッサーに入れてミンチに。イカってのは熱を加えると皮の辺りから強い旨味(と強烈な紫の色素)が出るからな。味を強くするなら皮は外さない方が美味いぞ。ゲソは食感を残す為に粗微塵切りにして、キャベツ、紅しょうが、玉ねぎも微塵切りにしておく。

 イカの胴体がミンチになったら、はんぺんを加えて更にフードプロセッサーで練る。はんぺんは白身魚の練り物だからな、イカとの相性も良いし優秀なつなぎになる。はんぺんとイカミンチがよく混ざったら、ボウルに移す。この時にかなり粘りが出てるからな、頑張って綺麗に移そう。そこに刻んだ野菜とゲソ、塩、胡椒を加えて手で捏ねる。

「司令、アタイにやらせてくれよ!」

 皿洗いを終えて手持ち無沙汰だった朝霜の立候補。手伝いなら大歓迎だ。

「なら頼む。ムラが出ないようにしっかりと捏ねてくれ」

「あいよっ!」

 威勢のいい返事だ。俺はその間に小麦粉、卵、臭み消しの酒を加えてバッター液を作り、パン粉も支度して揚げ油を温め始める。紅しょうがと酒で十分だとは思うが、臭みが気になるようならおろししょうがを適量加えてくれ。

「司令、練り上がったぜ!」

「どれどれ。……うん、上々だ。中々手際が良いなぁ朝霜」

「朝霜姉さんはお店をやるのが夢なんですよ…フフ」

「ちょっ、バカ!恥ずかしいから言うなって言ったろ!?」

「ちょうど良いじゃねぇか、朝霜と早霜で共同の店を出したら面白いと思うぞ?」

 なんて会話を交わしていたら、揚げ油から湯気が立ち上ぼり始めた。……いかんいかん、揚げ物のキモは揚げる温度だからな、一旦弱火にして、朝霜が捏ねたタネを小判型に成形。後はバッター液とパン粉を付けて、油に静かにIN。十分に熱せられた油から、ジュワアアァァァ……と美味そうな音が響く。

「あら~?あんまり跳ねないんですね?」

 そうカウンター席から尋ねてきたのは愛宕だった。俺のイカ談義を聞いて居ても立ってもいられなかったらしく、開店直後にやって来て、《韓国風イカばくだん》と『村尾』のロックで一杯引っ掻けていた。

《提督特製!韓国風イカばくだん》※分量3人前

・ひきわり納豆:2パック

・山芋5cm位(もっと多くてもOK)

・オクラ:5本

・イカ刺し80~100g位(量によって味を調節)

・きゅうり:半分

・【韓国風漬けマグロ】:200g材料は↓

・マグロブツ:200g

・コチュジャン:大さじ1

・醤油:大さじ1.5

・すりごま:大さじ1

・ごま油:小さじ1

・※その他刻んだ沢庵なんか入れても美味いぞ。

 漬けマグロさえ作っておけば、後は全ての材料を細かい角切りにカットして混ぜるだけ。韓国海苔に巻いて、ご飯に載せて。……あぁ、卵黄載せてグチャグチャに混ぜても美味いな。


……話が逸れた。フライが油はねしない、って話だったな。

「そりゃそうだ、イカの揚げ物っつっても、油が跳ねやすいのは天ぷらと唐揚げ、フライは跳ねにくいのさ」

「へ~、何でですか?」

「天ぷらも出してやるつもりだから、そん時にな」

「んもう、ケチ!」

 そんな会話を交わしている内に、フライが良い色になってきている。油から揚げてサッと油を切り、ウスターソースに両面を潜らせる。衣がベチャッとならない程度に、あくまで軽くな。何なら、潜らせないでかけてもOKだ。後は上にマヨネーズと青のり、花鰹をかけたら完成。

「へいお待ち、『イカのお好み風フライ』だよ」

「で、では頂こう!」

 店内が静まり返る。皆が固唾を飲んでグラーフに注目している。フライを箸でつまみ上げ、控え目に小さくかじりついた。サクリ、と軽い衣の歯応えが響く。サクリ、サクリと咀嚼していくグラーフ。

「……海を感じるな」

 ポツリ、とグラーフが言った。

「魚のフライは色々と食べた。タラやサーモンのフライは私も好物なんだ。しかし、それとは明らかに違う味だ」

 再びフライにかじりつくグラーフ。今度は先程よりも大きめに、青のりや花鰹も口に含んだ。口の中は今頃、海の薫りが充満している事だろう。

「魚とは全く違う。甘くて、モチモチしていて、コリコリしている。とても美味しいよ、アトミラール」

 おぉ……とざわめく他の客達。

「これは日本酒よりもビールだな。アトミラール、アサヒを頂けるか?それと、フライのお代わりも」

 味の強いイカフライに、スーパードライ。間違いなく、合う。

「あぁ、勿論だ。……まだタネはあるからな、どんどん喰ってくれ!」

 グラーフの注文を皮切りに、イカフライとビールの注文が殺到する。フライの成形に回った朝霜に代わって、今度は早霜が注文を取りに行く。流石は姉妹、いい連係プレーだ。

「アトミラール、イカの料理はまだまだあるんだろう?」

「あぁ、期待してろ」

 さて、次は何を作ろうか。 
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