ガンダムビルドファイターズ ~orbit~
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絶望のロンド 後編
医務室から出て誰もいないことを確認し、すぐに会場の外へと向かう。
「どこに行くつもりだ?まだ今日の日程は終わってないぞ? 」
会場の入り口にはサオトメが立っていたが、俺は気にせず素通りしていく。
「カグラ。目を背けるなよ」
止めることもせず、すれ違い際に一言だけ言われた。まるで、何かを察しているかの様な言葉だった。
「……………なににだよ……」
小さく呟きながら、ある場所に向かって走る。
ーーー--
「…………これで、今日の日程は終わったか。カグラの奴は起きてこねーし、一旦様子でも見てくっか? 」
「「………………」」
お、重っ……………空気重っ。
「ワタシもいってイイ? 」
「お、おう。じゃあアキザワ部長。サクラ先輩。俺達はカグラの所に行ってくるッス」
「……分かった」
「勝手にするがいい」
三年生二人組から冷たく言い放たれ、精神的ダメージを負いながら医務室に向かう。
「………レイ、キノウよりもヨウスがヘンだった」
「ああ。アマネの事もあっしな。きっちり話をしてもらわねーと」
医務室の近くまでくると、扉が開いていることに気づく。あれ?もしかして入れ違ーか?
医務室の中に入り、前回運ばれたベッドの所に行くと、カグラの鞄が置いてあった。
「居ねーな。荷物もあるし、トイレにでも行ってんのか? 」
「……スコしマってミヨ」
「ああ、そうすっか」
そして、待つこと十分…………。
「…………コナイ」
「来ねーな…………ちょっとトイレも確認してくっか」
そう言ってトイレに行くと、個室の扉も全て開放されており、誰の姿も無かった。
「いねーな…………念のため連絡入れてみっか」
スマホを取り出して電話をかけるが、一向に出る気配が無い。
「出ねーし…………」
大きくため息を吐き、医務室へと戻る。すると、セシリアちゃんがカグラの鞄をあさくっていた。
「なにやってんだセシリアちゃん!?人の鞄だぞ!? 」
制止すると、セシリアちゃんはすぐにあさくるのをやめ、困った表情をする。
「…………なんかデンワのオトがキコえたカラ」
「電話の音?…………っまさか! 」
急いで鞄の中をあさくると、中からスマホを取り出す。電源を入れて通知を確認すると、俺から電話がかかってきている。
「あのヤロー…………どっかに行きやがった! 」
「ココにはイナいの? 」
「ああ、十中八九な。理由はなんとなく分かっかから、とにかく探しに行くぜ」
「ウン……」
「そういうと思ったよ」
医務室の扉から声が聞こえ、振り返るとハルカゼコーチが立っていた。
「いやー。初めてこんな登場したよ。基本僕はやられる側だからなぁ~」
「え~と…………どうしてハルカゼコーチがここに来てんスか? 」
「あー、そうそう。一応報告しようと思ってね。マヒルさんが来たから、ひとまず外に出ようか」
「「 !? 」」
ーーー--
「アマネ! 」
「マヒル……! 」
ハルカゼコーチに言われてすぐに外に向かうと、アマネとアキザワ部長とサクラ先輩がいた。
「二人共…………心配かけたわね」
「んな事はいい!それより大丈夫なのか!? 」
「ダイジョウブ……? 」
「大丈夫、少しふらつく程度よ。それで、大会はどうなったの? 」
「…………負けたよ」
「…………そうですか。そういえば、カグラ君はどこにいるの? 」
「……カグラはいねーよ。探そうと思ったところで、ハルカゼコーチにお前が来たからった言われて来たんだ」
「やっぱりカグラ君なのね………」
「やっぱり?アマネ マヒル。貴様は何か知っているのか? 」
「ええ。話すと長くなるんだけど…………」
そして、アマネは何があったか話し始めた。昨夜誰かに誘拐されたこと。その後起きたら何度も気を失わされたこと。最後に目覚めた時には、拘束も解かれ、近くに小さな手紙が入っていたこと。
「その手紙には、交渉成立。そう一言だけ書かれていたわ」
「交渉成立?どーいうことだ? 」
「…………なるほどね。つまりこういうことだよヒメラギ。
アマネを返してもらう代わりに、何かを要求された。そして、カグラは朝から様子が変だった。
昨日の事を気にしていると思ったけど、それは違った。カグラこそが、その交渉を持ちかけられたんだ。
そして、その内容は今日のカグラの行動を見れば一目瞭然。試合に負けることだったんだ」
「戦ってみた限り、相手は何も知らない様子だった。現に、あの武士道みたいな戦いをする男がいたからな」
「けど、なんでそんなことを…………」
「はいはい。名探偵みたいな推理をしているところ悪いけど、ちょっといいかな? 」
手を叩きながらハルカゼコーチは会話に入り、俺達に見えるようにあるものを出してきた。
「これ、レイ君の足下に落ちていたやつね。形状からしてイヤホンだから、多分試合中も通話してたと思うよ。
ひとまず、その件についてはこっちでなんとかするから、君達は君達のしたいようにしていいよ。じゃ、今日は解散」
イヤホンをポケットに入れ、ハルカゼコーチは会場の中へと戻っていった。
「…………俺達はどうするよ? 」
「…………私は、カグラ君の事を捜してみるわ。一応、お礼は言っとかないといけないし」
「ワタシもサガす……」
「アキザワ部長達は? 」
「…………頭を少し冷やすために、少し散歩でもしていく」
「俺も…………かな」
アキザワ部長とサクラ先輩はそれだけ言い、すぐに帰っていった。
「うし!俺達はカグラを探すか!アイツの鞄を届けなきゃいけねーしな」
「手分けして探しましょう。私はまずカグラ君のいる孤児院に行くわ」
「じゃあ、俺は住宅街の辺りを捜してみる」
「ワタシは………カンでサガす」
「…………セシリアちゃん。道に迷ったら電話しろよ? 」
「ダイジョウブ…………ハヤくサガそう」
「そうね。じゃあ、見つけ次第連絡を入れるように。いいわね? 」
「おう!」
「ワカッタ……」
各自がカグラを探しに行く数十分前、孤児院にて。
「あっ、お帰りなさいレイ君。昨日から様子が変でしたけど、大丈夫ですか? 」
「…………ああ。レイナ。昨日言ってた話、今でも大丈夫か? 」
「?はい、大丈夫ですけど。どこで話します? 」
「出来んなら、子供達に聞かれねぇ所で頼む」
「分かりました。では私の部屋へ行きましょう」
そう言ってすぐにレイナの部屋へと移動し、椅子に座って対面する。
「それで、話ってなんですか?レイ君にとって、重要な話なのでしょう? 」
「…………ああ。知ってる範囲でいいから、教えて欲しいことがあんだ。……………出来るなら、隠さずに話してくれると助かる。
俺の…………記憶喪失になった日のことや…………そして、その前の出来事を、話してくれ」
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