グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第74話:男と女の勝手な都合
前書き
明けましておめでとうございます。
本年も あちゃ の作品を御贔屓賜りますよう、宜しくお願い致します。
(グランバニア城)
ユニSIDE
ウルフ閣下の浮気情報を共有しようとビアンカ様にだけ話した所、何やら怖い顔で他言してないかを聞かれました。
つい先程私も知ったばかりだし、他者においそれと話せる内容でも無いから、勿論口に出したのは今が初めてだけど……
「誰にも言ってないのなら取り敢えずは問題ないけども……その情報は今後も心の中にだけ仕舞っておきなさい」
「は、はぁ……」
私はビアンカ様が何を心配なさっているのかが解らず、曖昧な返事しか出来ない。
「解ってないようだから説明するけど……」
私の態度を見たビアンカ様は誰も居ない物置部屋であるのに、更に顔を近づけて小声で話し出す。
「前の上級メイドが如何なったのか憶えてるでしょ?」
忘れる訳も無い。とんでもない人物を上級メイドへと推薦してしまったのだから。
「リュカとウルフ君はね、ワザと偽情報を流す事によって、その情報を得た人物が如何な行動に出るのかを観察し以後の対応を考えてるのよ」
そうでしょうね。マオにも金庫の情報を断片的に流して、行動を制御してたみたいだし……
「今回貴女はどの様にしてウルフ君の浮気相手を推察したの?」
「はい。ビアンカ様もいらっしゃいましたが、以前リュカ様等とティータイムを楽しんでいた時に、ウルフ閣下の浮気相手のスリーサイズを教えられたのです」
「マオを罠にかける最終段階の時ね」
「はい。話の流れでウルフ閣下の暗証番号が浮気相手の番号なのではとリュカ様が暴露したのです。その時のスリーサイズは一時的に忘れていたのですけども、先程新人等を紹介してもらった時に、リュカ様から例のスリーサイズを再度拝聴したのです。あの新人宮廷画家の一人のスリーサイズとして」
「つまり……どの情報もリュカから聞いた事になるわよね」
「はい……そうなりますね」
「しかも断片的に聞き出して、それを貴女が繋ぎ合わせた事になるわよね?」
「……そ、そうなります」
「誘導されてる気がしないかしら?」
えぇぇぇぇ!?
言われればそんな気がしますけども、私なんかを誘導しても意味がないんじゃないですかぁ!?
「驚いてるみたいだけど、貴女を罠にかける気はリュカに無いと思うわよ。でもね……貴女の忠誠心を試すつもりは往々にしてあるんじゃないかしら?」
「ど、如何いう事ですか忠誠心って!?」
「忠誠心ってのは大げさだけども、貴女の考えを把握するのが目的って事かしらね」
「わ、私の考え?」
私はリュカ様に逆らう気も、グランバニアの不利益になるような事をする気もありません!
「世の中の歴史を紐解くと、権力者の妻が権力者以上に権力を振りかざして、国家を衰退させてきた事があるのよ。私はそれを理解してるし、私に国政を操る事なんか出来ないと解っているから、可能な限り政には関わらないようにしてます。でもね、私を操って国家を牛耳ろうと考える者が存在しないとは言えないでしょ」
「そ、そうですけど……私はビアンカ様を利用しよう何て考えてません!」
「解ってるわよユニ。でも今回の情報は国家の中枢に居るウルフ君の足り場を弱らせるのに十分な威力を持っているの……それを私にだけ知らせるってのは如何に思われるのか?」
「でもそれは……」
「そうよね、それは考えすぎよね。リュカもその事は理解してると思うわ。貴女に危険は無い……と、でも私を利用しようと考える者達が、貴女を操って私を利用しようと考えるかもしれないわよね。貴女は私に重要な情報をリークした……私はそれを快く受け取った」
「……………」
私は何も言えなくなった。
今回の情報源は全てリュカ様だったから、私を介してビアンカ様を操ろうとした者の意思は存在しない。でも、今後その様な事を考える者が現れないとは言い切れない。
「リュカはユニの事を信頼してウルフ君の部下にした。ユニの事を信頼してるからウルフ君を国家の重鎮にした。口ではウルフ君に文句を言っても、彼を最大限バックアップすると思い、貴女を今の地位にしたのよ。例え信頼してる私相手でも、ウルフ君のスキャンダル情報を口に出しちゃダメよ」
「も、申し訳ございませんでした……」
「ユニ、落ち込まないで。今回の件はリュカには絶対に知らせないから。リュカは貴女がスキャンダル情報を墓場まで持って行くと思うわ。家族以外で最も信頼出来る人物だと」
「あ、ありがとうございます!」
「今後は気を付けてね……リュカもウルフ君も、常に皆の思考を気にしてるから。何時何時試されるかは解らないのよ」
ビアンカ様は私の頭を優しく撫で励ましてくれると、そのまま物置部屋を出て行かれました。
本当に気を付けなければ……
マオの時以上にリュカ様の信頼を裏切る事になってしまうわ!
ユニSIDE END
(グランバニア城・王家プライベートエリア)
ビアンカSIDE
「何すか? 忙しいんですけど俺!」
ユニがスキャンダル情報を知らせてきたので、それを牽制した後……大至急ソロを見つけて、首にウルフ君宛の手紙を括り付けて彼の下へ行かせて、人気の無い物置部屋まで彼を呼び出した。
「アンタの浮気相手が誰なのか、ユニにバレたわよ!」
「オメーの旦那が余計な事を言うからだろ! 流石にユニさんだって気付くわ!」
た、確かにリュカの所為でもあるけれど、それを言われると腹が立つ。
「アンタが浮気なんかするからでしょ!」
「オメーの旦那を棚に上げて何言うか!?」
あぁもう、このガキ腹立つわね!!
「と、兎も角……ユニが私に知らせてきた事はリュカに黙ってるから、これ以上あの娘の立場を困らせるような事はしないで!」
「その事に俺の意思は存在しておりません。宮廷画家に招いたのも、浮気情報を暴露したのも、全て国王陛下の一存です。迷惑な国王ですよ……王妃の顔を見てやりたい」
ど、如何してくれよう……
生意気すぎてメラゾーマで黒焦げにしてやりたいわ!
でもこの男マホカンタ使えるし、力じゃ勝ち目ないし鬱憤だけが溜まってくるわ。
「話は以上ですか?」
「違うわよ……リュカには知らせず、アンタにだけ教えて対応をさせてるんだから、少しは感謝しなさいっての!」
「感謝感激雨霰ですよ。今度お礼にセクシーなパンツでも送らせて下さい」
「要らないわよアンタからのパンツなんて!」
辟易と溜息を吐きながら生意気度を上昇させる若き宰相閣下……
「この間アンタとアンタのスタッフに嫌がらせをして以来、リュカが怒ってエッチしてくれないの! アンタから妻を許してやるように口添えしなさいよ!」
「え!? リュカさんがビアンカさんとエッチしてないの? ヤベェ……世界が崩壊するんじゃねーの?」
「うるさい。良いからちょっとは口添えしてよ! 私だって反省してるんだから……」
「反省してる奴が、上から目線で命令してくるのかよ?」
あぁもう……口喧嘩じゃ絶対コイツに勝てないわ。
リュカも先日やり込まれたみたいだし、口喧嘩じゃ世界最強なの?
もう何も言えない私は、彼に対して指を何度も指し付け、怒りの念派を送り付けながら、その場を後にした。
我が家が平凡な一般家庭だったら絶対に娘に暴露してるとこなのに!
ビアンカSIDE END
(グランバニア城・国王執務室)
リュカSIDE
(コンコン)
「ちょっと良いっすか?」
自分の執務室で大人しく仕事してると、頼れる部下のウルフが尋ねてきた。
ちゃんと仕事してるゾ! サボってないゾゥ!
「オメーが余計な事言うから、ユニさんが俺の浮気に気付いた」
「ほほぅ……その事を周囲に言い触らしてるのかな?」
多分それは無いだろう。あの娘はグランバニアの不利益になる事は絶対にしないから……
「ユニさんがそんな事する訳ねーだろ!」
ほらね。そんな事は織り込み済みだよ。
「じゃぁ何でお前は気が付いたんだよ……あの娘に知られたって事を!?」
ウルフにだけコッソリ言って、チクチク嫌味を言ってるのかな?
「態度だよ、態度! 先刻ピクトルさんを紹介してからの、ユニさんの態度で理解したんだよ! 俺のスキャンダルを言い触らしてやりたいけど、グランバニアの汚点になっては困ると思って苦しんでるんだよ!」
「え、苦しんでるの!? マジで?」
「当たり前だろ。先刻ビアンカさんがこの前の事をユニさんに謝ろうとして、彼女だけを物置部屋へ呼び出したんだけど……コッソリ覗いてたんだけど、ビアンカさんに打ち明けようかすら悩んだ様子だったからね! 良い娘だよユニさんは」
「……で、ビアンカには言ってないのかな?」
「言ってないよ。唯々苦しんでたよ」
……………予定外だったなぁ。
ビアンカにだったら言って、ウルフの弱みを共有すると思ってたんだけどなぁ……
「それで……その事が僕に何だっての?」
「彼女の忠誠心は本物だから、以後は利用するなっての! 可哀想だろぅ」
なるほど……そういう事か。あとで謝っておこう。
「あ、それと聞いたゾ(笑)」
「何をだね、宰相閣下?」
ウルフは急にニヤケ顔をして話題を変えてきた。
「ビアンカさんがユニさんに謝ってたのを盗み聞きした時に、最近夫婦の営みを拒まれてるって言ってたゾ(笑)」
「あぁ……その事ね。拒んでるって言うか、皆に迷惑かけたお仕置きだよ」
「嘘吐いてんじゃねーよ。あれだろ……もう年増に興味ないんだろ!? サンタローズの愛人宅にも、ラインハットの愛人宅にも、最近行く頻度が下がってるのは、近場に人間よりも老化が遅いエルフやホビットの愛人が居て、何時までも若々しいから年増女の所には行く気になれないんだろ!? 解ってるよそんな事……俺も同じ男だからね(笑)」
「な……ち、違ーよ! お前ふざけんなよ!」
何言ってんだコノヤロウ!
ビアンカはまだまだ若々しくて超美女だし、フレアさんやマリソルなんかもピッチピチだ!
「安心しろよ。出来る部下たる俺は、自然に噂を流して、王妃陛下の夜のお相手を募っておいてやるよ(笑) 若くて体力が有り余ってる兵士等の中からね!」
「テ、テメーふざけんなコラ! 殺すぞオイ!」
「大丈夫、大丈夫。国王陛下の御心のままに……」
ニヤケ顔のまま間違った忠誠心を見せ付けるウルフは、そのまま俺の執務室から去って行った。
あの野郎……ふざけた事を……
こ、こうしては居れん!
今日中に処理しなきゃならない仕事は終わらしてあるし、今すぐビアンカの下に行って押し倒さねば!
人が見てる前で営めば、あの馬鹿が変な噂を流しても広まる事は無いだろう!
くそっ!
部下に浮気相手をバラしてやったら、こんな仕返しが来るとは予想外だった!
アイツを舐めちゃダメだ……着実に成長してやがる。
頼りにはなるが厄介極まりない。
リュカSIDE END
後書き
あのウルフが、ここまで成長するとは作者の私にも予想不可能でした。
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