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IS 輝き続ける光

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与えられる試練

「……」
『バディ、逆探知に成功した。発信源はアメリカ本国からのアクセスだな』
「お前にしては時間かかったな、手間取ったかバディ」
『ああ。7か国のサーバーを経由していたのでな、少々手間取ってな。だがコンプリートだ』
「流石俺のバディ」

本来授業中の時間帯だが閃輝の姿は教室になかった。IS学園の敷地内にある木の下で寝ころびつつ昼寝を楽しんでいた。サボっている訳ではない、事前にしっかりと精神衛生を保つ為に休むと山田先生に届け出は出している。女子だらけのクラスでは精神がイカれる、ISを動かせる唯一の男子なのだからこの程度のわがままは許してもらわないと割に合わない。

昼寝をしている最中に顔の真横においてあるセブンの携帯型端末が報告を入れてくる。どうやら自室の自分のパソコンにハッキングを仕掛けてきた犯人を特定したらしい。普段なら僅かな時間で逆探を終わらせる筈だが今回は7か国のサーバーを経由していた為か3分も掛かってしまっていた。因みに閃輝のパソコンにはまともなデータは一切入っていない、あるにはあるがそれもセブンが趣味で作ったダンスのモーションデータぐらいだ。

「っつっても入ってるのお前が作ったモーションだけじゃねえかよ」
『バディ何を言うか、私にも権利というものはある。これは私のプライバシーに関する重大な侵害である』
「AIにプライバシーねぇ……にとりが聞いたら爆笑しながら喜びそうなお話しなこって」

実際セブンやサードはほぼ人間と言っても可笑しくは無いだろう。同じように考え感じて物事をいう、心もあるだろう。それはAIを作ったにとりさえ想像だもしなかった事だった。しかし彼はセブンの事を機械だと一度も思ったことはない、初めて顔を合わせた時から相棒即ちバディだと思っている。

「解ったよセブン、お前の好きにしていいぞ。結局俺のパソコンに侵入した時点で敵対してるのは確定的なんだからよ」
『バディからの承認を確認した。では本社を通じてそれ相応の裁きが下るようにしておこう』
「おうやれやれ~」

セブンの淡々とした作業を聞きつつも閃輝は空を見上げてみる、幻想郷の空とは違う外界の空。一見すると同じようだが閃輝には酷く空が薄汚れているように見えた、自らも空を飛び空を愛する一人のだからこそ感じる何か、この空は腐っているに近いと。自分の外界嫌いも関係しているのかもしれないがこの空はあまりにも汚い、幻想郷の空がどれほど正常で美しい事か改めて思い知らされる。

『バディ送信完了した、むっ誰か来るぞ』
「だな」

携帯端末を胸元に収める、見られても問題はないだろうが自我を持ったAIなど外界には存在しない。大きな騒ぎになって本社にいるにとりや紫に迷惑を掛ける事になってしまうのでそれは避けるに越したことはない。セブンの通り誰かがこちらに向かっている、視線を向けてみると青髪の少女がこちらへと歩いてきている。

「少しよろしいかしら、霧雨 閃輝君?」
「余り宜しくない。こっちは女子に囲まれてるストレス解消の為に此処にいるんだ、なんでそれをわざわざ邪魔されるのを許可する必要があるんだ」
「そう邪険にしないで貰いたいわ、モテないわよ?」

そういいつつパッと開いたセンスにはモテないわよ?と書いてあった、妙に腹立たしい。ムカつく女だ、だがあまりにも幼稚な女だ。内心に隠している思いを全く隠せていない、自分に接触し情報を引き出してこちらに引き入れたいと思っているのが駄々漏れだ。普通の人間なら問題ないだろうが、胡散臭さで世界一な八雲 紫に比べれば……こうしてみると改めて幻想郷の人材のスペックが可笑しいかよく解る。

「モテる?この学園の人間にか、俺のDNAやらを欲しがっている女達にか。なら良かった、俺はモテないでいい」
「言い過ぎでなくて?」
「いいや正当な評価だ、極々一部にはまともな奴もいるがそれ以外は全員同じだ。アンタとも馴れ合う気はない、更識 楯無。話し合う気があるなら本名で来るんだな」

立ち上がりながら煽るように楯無の隣を通り過ぎながら呟いた一言に彼女は眼を見開いた、そして言葉を発しようとしても驚きで声出せなかった。なんとか呼吸を整えて改めて叫んだ。

「何を言っているの!?私は楯無、それが本名よ?!」
「まあそう思ってんならそれでいいさ、ぶっちゃけアンタの名前が本名でも偽名でも如何でも良いからな」

本心である。偽名であろうと元々関わろうとする気はない、純粋に煽る目的で言っただけなのだから。ひらひらと後方へと手を振ってそのまま閃輝は去っていく。

『バディ良いのか?下手に煽って強硬手段にでも出られたら面倒だぞ?』
「それはそれでいいさ、後は狩れば良いだけだ」
『やれやれ。君はゼロワンとも気が合いそうだな』
「おいおいあいつと一緒にするなよ、あいつは闇兄しかバディにしねえって」

「だらっしゃあい!!……閃輝の野郎俺の悪口でも言ってやがんのか……?」
『俺の事かもな』
「だったら賭けるか?」
『俺は一体何を賭ければいい』
「……あっ」
『バディ、もう少し考えろ』


閃輝が楯無に接触を受けた翌日、遂にクラス別クラス代表戦が行われようとしていた。クラスの結束力と友好を高めようという取り組みで行われるこの行事。優勝クラスには1週間デザート食べ放題のパスが渡されるらしく女子たちはえらくやる気になっている。

「全くもって元気ですわねぇ私、学園のデザートはカロリー高めで食べる気起きないのですが……」
「だったら負ければぁ?あたしなんかもっと悲惨よ、やる気なかったのに代表候補だって解ったら掌返すように私に代表変更させられたのよ?もうやる気0よ」

他のクラスはやる気十分で最早殺気立っているのに1組と2組の代表である妖怪達はやる気が皆無であった。セシリアは優勝賞品にがっかりして興味が失せ、鈴は代表について聞いたら既に決まっているから引っ込めと言われたのに自分が候補生だとわかると掌を返して代表を強引に自分に変更されて自分のクラスに辟易していた。

「俺と咲夜さんが辞退したからって自分でやるって言ってただろお前」
「それはそれ、これはこれですわ」
「こいつは……」
「ねえ閃輝ぃ~私1組に行きたいぃ~」
「俺に言うな、学年主任に言え」
「主任ってあの織斑でしょ?嫌よ口もききたくない」

テーブルの上でぐでぇとしている鈴、朱雀である彼女としてはクラスの女子たちの態度が全くもって気に入らない。朱雀はどんな生物なのかは詳しく書物なのには載っていないが彼女曰く、朱雀とは自尊心が高く己の一族と実力を誇りにしつつ決して驕らないという精神を持っているらしい。嫌いなのは自らの思想を持たずに寄生する思想らしい。自らの力を持たず他人の力を頼って生きる、その考えが嫌らしい。

「だからってなんでお前1組の待機ピット来てんだよ」
「だって咲夜の入れる紅茶最高なんだもん」
「光栄ね」
「全くもってその通りですわ……流石吸血鬼のメイド」
「この程度出来なければお嬢様の怒りを買うわ」

咲夜の入れた紅茶を飲みつつのんびりとしている、このままだと本格的に代表戦そのものを放棄しそうな勢いだ。さて如何するべきかと思った時、巨大な爆発音が響いた。衝撃でカップを落としそうになりつつも何が起きたのかと騒ぐ。

「今やってるのって3組と4組よね、こんな爆発起こせるような武装積んでるの?」
「いえ今の明らかに可笑しいですわ。IS搭載型ミサイルに換算して80発以上を同時点火でもしない限りあり得ない衝撃です」
「咲夜さん、管制室へ」
「了解」

走り去っていく咲夜を見送る閃輝は何か心の中で騒めく何かがあった、その正体が一体何かは理解出来なかったが行かねばならないという気持ちが走っていた。そして先ほどの衝撃でピット内のノイズだけが走っていたモニターが一瞬だけ映った、そこにあったのは……



人間のように直立歩行をしているが長い牙に翼のような異形の物、邪悪なものを凝縮したかのような化け物が映っていた。


―――いきなり大蛇ですか……彼も飛ばしますねぇ。閃輝君、頑張ってそいつを倒しなさい。師としての命令です。

「あいつを……倒す」 
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