魔界転生(幕末編)
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第77話 戊辰戦争 終結
龍馬は未だに馬から降りた状態で土方に対峙していた。
「抜かんのか?貴様が抜かずとも俺はお前を斬るがな」
土方は刀を少し斜めにした正眼で構えた。
「まぁまぁ、相手しちゃうけ。わしも、一応、北辰一刀流免許皆伝ぜよ。勝負を申し込まれ尻込みするほど落ちぶれてないきに」
龍馬もまた刀を抜いた。
「そ、それは・・・・・・」
土方は龍馬の刀を見て驚愕した。
「そうぜよ。一目観ただけでよくわかったね」
龍馬は不敵に笑った。
「何故、貴様がそれを持っている?近藤さんの愛刀・虎鉄を」
龍馬が抜いた刀はまがい物ではなかった。
上野戦争時との時、近藤と対峙したの同じ様に禍々しい妖気を放っている剛刀。
「貴様、それをどこで手に入れた?」
土方は目を細め龍馬を見つめた。
「まぁ、話は長くなるっちから、理由はどうでもいいぜよ。さぁ、始めるぜよ、土方君」
龍馬もまた正眼で構えた。
二人の間に一陣の風がふいたかように見えた。と、同時に龍馬がまず土方に襲い掛かった。
それは、虎鉄の刃の長さもさることながら、その妖気を利用するに持って来いだからだ。障害物もなくただ広い大地。間合いを広く使える。
龍馬は刀を地と水平に振りぬいた。が、土方はそれを典太で受けた。そして、次は縦に一文字に振りぬく。それも、土方はかわす。と同時に、その俊足で間合いを詰めて行った。が、龍馬は、足を払うように下から斜め右上に剣を振った。
虎鉄の妖気が襲い掛かるが、土方は逆方向に飛び退きかわした。
(ちっ、近づかなくてはこっちの剣も触れぬ)
土方は、怪物たちを倒した時のように思案し行動を起こそうと集中した。
「さすが、新撰組副長・土方歳三ぜよ。妖刀と化した剛剣・虎鉄の攻撃をかわすとはのぉ。じゃけぇ、そろそろ時間も無くなって来たから、この一撃で終わらせることにしちゅ」
龍馬は右腕一本で虎鉄を上段に高々と構えた。
(あの構えは、噂の片手上段。かつて、長州の桂を一撃のもとに破り去ったという坂本龍馬の必殺の剣)
土方は警戒を劣らなかった。何故なら、虎鉄の妖気も最高潮に高まっているし、たとえ典太で受けたとしても受け切れるどうか自分にも自信がなかったから。
それほどに、脅威を感じていた。が、その場にいてもやられるのを待つしかない。では、自分の俊足を信じるしかないと土方は腹をくくった。
典太を肩に担ぐような構えで龍馬にじりじりと近づいていった。ぴりつくような緊張感が二人を包む。そして、再度二人の間に一陣の風が吹いた。
「うおおおおおおおお!!」
二人の気合を込めた声が大地に木霊した。
土方が足の裏を滑らせるように間合いを詰め始めた。が、その土方を消し去る事が出来る位の気を以て、龍馬は大上段から虎鉄を振り下ろした。
(ここしかない!!)
土方は間一髪でそれをかわし、龍馬の懐に入った。
「もらった!!」
土方は勝利を確信した時、一発の銃声を聞いた。その刹那、足に強烈な痛みと同時に後方に吹っ飛ばされていた。
「だから、言ったじゃろう?時間がないきに」
にやりと笑っている龍馬の左手には拳銃が握られていた。
「坂本、卑怯な!!」
痛みを堪え、ゆっくりと土方は立ち上がり龍馬を睨んだ。
「すまんの、土方君。おんしゃとは、ここでさよならじゃ。悪く思わんでつかぁさい」
龍馬の顔からは笑みが消え、土方の左胸と眉間に一発づつ弾丸を放った。
土方はまともに銃弾を食らい、後方に吹っ飛んで絶命した。
それを確認することなく、龍馬は土方に背を向け、馬に乗り込もうとした。が、その時、強烈な殺気を感じた。
(まさか、土方が生きている?いや、確実に急所を打ち抜いた筈)
龍馬は恐る恐る後ろを振り返った。そこには、全身が黒い服で覆われた男が立っていた。
「おまん、あの時の!!」
龍馬はその男を知っていた。そう、三途の川にいた船頭だった。
龍馬は慌てて懐の拳銃を取り出し構えたが早いか、その男は刀を抜き龍馬の左肘から斬り飛ばした。
龍馬は驚愕の表情を浮かべたが、素早く虎鉄を抜いて斬ったが、それは男の編み傘をかすっただけだった。
男は無言で龍馬の眉間目がけて刀を突き刺した。それは、龍馬の頭蓋を貫き脳に達し、後頭部から切っ先が飛び出た。
「ちゃちゃちゃ、やられたぜよ・・・・・・」
龍馬は断末魔を残した。が、その時、編み傘から除く男の顔をかすかに見ることができた。
その男の左目には刀のつばのような形をしたもので覆われていた。
「お、おまん、一体、だ、だれぜよ?」
そう言い残すこと、龍馬は後ろに大の字に倒れ、砂となって消え失せていった。
龍馬を倒した男は龍馬の死を無ることなく風と共に消えて行った。
土方が死んで数日後、蝦夷政府は白旗をあげた。
自刃しようとしていた榎本は仲間の説得に応じ、薩摩の黒田と会談した。
これにて、長きにわたる戊申の戦いは終結した。
時代は、すでに明治になっていた。
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