提督はBarにいる。
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変わりダネ!おにぎり特集②
「ねぇ提督。」
「なんだ?鈴谷。」
作業の手は休める事なく、鈴谷が口を開いた。俺も手元から視線を外さずに応える。
「鈴谷としおいちゃんっておにぎり習いに来たんだよね?」
「そりゃそうだろ?お前らがそう言ったんだ」
自分から言い出したくせに何を言っているのか。
「じゃあさ……何でお店の手伝いしてるワケぇ!?おかしくない?」
と、いきなり声のトーンを荒げてきた鈴谷。鈴谷の作業している手元に握られている物。それは、
「何でおにぎりに『イカフライ』が必要なのさっ!」
「私も疲れたよぉ~、提督ぅ~。」
鈴谷に任せていたのは、乾き物の定番駄菓子、イカの姿フライを適当な大きさに砕く事。そしてしおいには塩ゆでした枝豆を剥いて貰っていた……それも、大量に。
「あのな、俺だって店の手伝いを騙くらかしてやらせるほど落ちぶれてねぇっての。イカフライも、枝豆もれっきとしたおにぎりの具材だ。」
最近のおにぎりの流行りは、白飯の中心に具材を入れて握るのではなく、ご飯に具材や調味料を混ぜ込んで混ぜご飯に仕立て、それを握っておにぎりにするのが手間要らずで流行っている。勿論、ちゃんと具材を入れるタイプのおにぎりも教えるが、まずは混ぜご飯のおにぎりを教えるつもりだったのだ。かくいう俺はかっ〇えびせんを半分に折ってボウルに移し、ベビーチーズを賽の目に刻んだり、細々とした作業をしている。やがて3人の作業が終わる頃に、炊き上がりを示すアラームが鳴った。しかしここから30分程蒸らしの時間がある。……なので、白飯のおにぎりの具材も準備してしまおう。
「さ~て、蒸らしてる間に中に入れる具材の仕度だ。まずは今までありそうでなかった組み合わせの具材だ。」
《ありそうで無かった!ツナ明太マヨ》
・ツナ缶:1缶
・明太子:1本
・マヨネーズ:適量
・七味や黒胡椒、山椒など:お好みで
調理は至って簡単、明太子の端を切り落として中身を扱き出して、油を切ったツナ缶とマヨネーズで和える。1度味見して辛味が欲しかったらお好みで七味や黒胡椒、山椒なんかを混ぜてやれば完成だ。
「うわぁ、色はあんまり美味しそうじゃないね……。」
しおいが見てくれの感想を素直に述べる。まぁ確かに、ツナマヨの中に明太子のピンクのつぶつぶが混じっているのは、馴れない人からすれば気持ち悪く見えるだろうな。
「ま、大事なのは味だ。……ほれ、保温してあった米で悪いがこれに乗っけて味見してみな。」
俺はそう言いながらご飯をよそってやり、2人に手渡した。2人は恐る恐るご飯にツナ明太を載せ、口に運ぶ。
「あっ、美味しい!」
「うん、普通のツナマヨよりもピリッとしてプチプチ感もあって美味しいよコレ!」
「だろ~?ツナマヨもあって明太マヨもあるんだ。合わない方がおかしいんだって。」
俺もそう言いながら一口。……うん、個人的にはもう少し七味を入れたいが、そこまで行くともう個人の趣味の領域だ。色んな人が食べるにはこのくらいの分量がベストだろう。
お次は炒飯やラーメンのトッピングにも使える『豚高菜』を紹介しよう。作って密封しとけば冷蔵庫で1週間位は保つから、作り置きにもオススメだぞ。
『提督特製・豚高菜!』
・高菜醤油漬け:110g
・豚挽き肉:130g
・酒:大さじ1
・醤油:小さじ1
・みりん:大さじ1
・鶏ガラスープの素(顆粒):小さじ1
・塩コショウ:適量
・ごま油:適量
まずはフライパンにサラダ油を敷き、豚挽き肉を炒める。火が通ったら臭み消しの酒を加え、塩コショウを軽く振って下味を付けておく。そこにある程度汁気を切った高菜を加え、汁気が無くなるまで炒めていく。
「あぁ~いい匂いぃ~……♪」
「醤油の焦げる匂いって、犯罪的にお腹空かせてくるよねぇ~。」
犯罪的、ときたか。でも焦がし醤油はそのくらいの破壊力は持ってるかもな、言われてみれば。焼きもろこし、焼おにぎり、ステーキに炒飯……。その香ばしい香りがアクセントになっている料理は多い。
高菜の汁気が無くなって来たら、鶏ガラスープとみりんを加えて更に炒め、一旦味見。塩気が足らないようなら醤油を少しずつ加えて調整しよう。仕上げの風味付けにごま油を回しかけたら完成だ。
「ハイよ、『豚高菜』お待ち。」
待ちきれなかった、と言わんばかりにご飯に載せる2人。口に入れた途端、
「お、おいひいぃぃ~!」
「マジで美味いよコレ!あ~、食べ過ぎて太っちゃうかも~!」
と、頬がユルユルに緩んでいく。よく美味い物を食べると「ほっぺが落ちそうだ」という慣用句があるが、こんな様子を見て言ったんだろうなぁ、なんて事を考えながら俺も一口。うん、これでも悪くないが、刻んだ鷹の爪を加えたり白いりごまを加えても辛味と香ばしさが加わって良いかもしれんな。
お次はどうするか……あぁ、そういやこの間比叡が買いすぎたからってセブンイレブンの『アレ』があったっけな。アレを使って一品作るか。俺は早速冷蔵庫から取り出す。
「あれー?提督、それなぁに?」
冷蔵庫から何かを取り出すのを見ていたしおいが尋ねてきた。
「これか?セブンで売ってる『サラダチキン』だ。こいつでおにぎりの具を作ろうと思ってな。」
《簡単!美味しい!サラチキ昆布》
・サラダチキン:1パック
・昆布の佃煮(甘口がオススメ):30~40g
※おにぎりの具にする場合
・醤油:小さじ1
・砂糖:1つまみ
調理は簡単、食べやすい大きさに裂いたサラダチキンと昆布の佃煮を和えるだけ。おにぎりの具にする時は醤油と砂糖で味を濃くしよう。
「うん、クセになりそうな味。」
「すっごく美味しい!って感じじゃ無いけどご飯にはピッタリだね。」
なんて事をやっていたら、蒸らしの時間もそろそろいい感じだ。
「しおい~、炊飯器から釜ごとご飯を出してくれ。」
「は~い。」
「鈴谷は塩としゃもじを準備な~。」
「オッケー!」
炊き上がりの具合を見るのに、一摘まみご飯を味見。……うん、硬さも丁度いいな。
「鈴谷~、軽く塩をしながらご飯を切るように混ぜて全体的にほぐしてくれ。」
「ほいほ~い。……でも提督、なんでご飯に塩を混ぜるの?」
「そうだよ、普通は手に水と塩を付けて握るんじゃないの?」
普通におにぎりを作る時はそっちの方がポピュラーだ。
「まぁ、簡単に言やぁ塩加減に失敗しないように、かな?」
手に塩を付けて握ると付けすぎたり、逆に薄かったりが出てくるが、予め塩をまぶしてしっかり混ぜておくと塩加減に失敗がない。それに、ほぐしてやる事でご飯が握る前に固まってしまうのを防ぎ、ふっくらとしたおにぎりになる。
塩を少しずつまぶして混ぜ、味見して調整しながらほぐしていく。
「よし、塩加減はこんなもんだろうな。後は濡れ布巾を被せて乾燥しないようにして、そろそろおにぎり作りの本番と行こうか!」
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