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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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686部分:第九十八話 出陣その五


第九十八話 出陣その五

「あの城は」
「我等は天使ではない」
 シオンはこのことは確かに話した。
「しかしだ。彼等を退けなければだ」
「この世はアーレスのものになってしまう」
「力が支配する世に」
「何度も言うが勝つ」
 これは幾ら言っても言い過ぎるということはなかった。
「いいな」
「参りましょう、教皇」
 シャカが声をかけてきた。
「今より本当の戦いのはじまりです」
「このまま正門より入る」
 シオンは彼等の中心に位置して言った。
「いいな」
「では」
「今より」
「そして突破する」
 まさに実力行使だった。それによってというのだ。
「まずはさ」
「了解です」
「ならば」
 ここで出て来たのあアイオロスだった。
「私が先陣を」
「いや、ここは私が行く」
 しかしサガもここで言うのだった。
「私に任せてもらおう」
「サガ、御前が行くというのか」
「そうだ、ここは私がやらせてもらう」
 こう言って引かない。彼も意地があるかの様にである。
「それでいいな」
「残念だが今度ばかりはそうもいかぬ」
 アイオロスも引かない。彼も微かに意地を見せていた。
「私もまたやるべきことがある」
「だからだというのか」
「そうだ。だからだ」
 やはりこう言うのであった。
「御前は下がっているのだ」
「そのつもりはない。御前に下がってもらいたい」
「あくまでそう言うのだな」
「何度でも言うがな」
 二人は対立とまではいかなかったがそれでもお互いに引く素振りは一切見せない。そうして互いに意地を張っているそのうちにだ。
 他の黄金聖闘士達がそれぞれ名乗り出ようとしたその時だった。シオンが一歩前に出てそのうえで彼に対して言ってきたのだった。
「それには及ばない」
「えっ、教皇」
「何故ですか、それは」
「では誰を選ばれると」
「ここは」
「私だ」
 またしても一言であった。
「私がやらせてもらう」
「教皇が先陣だと仰るのですか」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」 
 また言うのであった。
「私が行かせてもらう。いいな」
「いえ、それは幾ら何でも」
「教皇御自身が先陣とは」
「そうです」
 サガとアイオロスだけではなかった。他の者達もこう言って彼を止めるのであった。彼等にしては教皇の先陣なぞ考えられなかった。
 だからこそ誰もが止めようとする。しかし彼はここでこう言ったのだった。
「御前達の危惧には及ばぬ」
「といいますと」
「やはり」
「行かれるのですか」
「見ているがいい」
 こう言うだけであった。
「私の戦いをな」
「・・・・・・わかりました」
 最初に応えたのはシャカだった。目を閉じたままで静かに頷いてみせたのであった。それが何よりの返答であった。
「それではです。教皇の御考えのままに」
「済まぬな。それではだ」
「そうだな。シャカが言うのならばだ」
「我々も意地を張り過ぎた」
「全くだ」
 サガとアイオロスも冷静さを取り戻した。そのうえでの言葉であった。
「では教皇、ここは」
「御願いします」
「是非」
「うむ。そうさせてもらう」
 シオンも静かに応える。そうしてであった。
 今シオンを先頭にしてトラキアの巨城前に来た。大きく壮麗だが赤く禍々しさを漂わせた門であった。ルビーと赤い大理石で築かれた柱を左右に置くその門には既に多くのインプ達がいた。彼等は一行を見てすぐに身構えたのであった。
「来たか黄金聖闘士!」
「そして教皇までか!」
「来たというのだな!」
「その通りだ」
 応えたのはシオンであった。
「通らせてもらうぞ、今からな」
「ふざけたことを言う」
「全くだ」
「そんなことができるものか」
「ここはアーレス様の聖地」
 あの三叉の槍をそれぞれ手に持ってだ。そのうえで次々に門から出て来た。そのうえでシオンを見据えて言うのであった。
「貴様等が入られる筈がない」
「我等のこの手でだ」
「倒してやろう」
「それにだ」
 さらに言う彼等だった。
「黄金聖闘士だけでなく教皇までいるとなるとだ」
「倒しがいがある」
「貴様等を全て倒せばそれで聖域は終わりだ」
「ならばだ」
 聖域がまさに教皇と黄金聖闘士をその中心としていることをわかっていてであった。そのうえでの彼等の今の言葉であった。
 そうしてだ。今まさに飛び掛らんとする。だがシオンはまだ冷静なままだ。身動き一つしない。
「来るのだ」
「言われなくともだ!」
「覚悟するがいい!」
「その首我等が貰い受ける!」
 口々に叫んで襲い掛かる。今シオンの首を取らんとする。
 しかしであった。そのシオンは。
 まだ動かなかった。微動だにしない。
 だが小宇宙が高まる。その中でシオンは。何かをしようとしていた。


第九十八話   完


                 2010・3・4
 
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