昔取った記念日
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イヴのお空はびっくりで済ます
君達は砂糖菓子で人を殴ったことがあるだろうか。
君達は、神か天使かと見紛うような絶世の美人に出会ったことがあるだろうか。
菜砂楽 イヴは絶世の美少女である。彼女が街を歩けばひったくりは歩みを止め、結婚詐欺師は涙を流しうつむく。君が小さい頃に飛行機雲をずっと眺めていた時のことを思い出していただきたい。そのとき君は、飛行機雲を長めに眺めていただろう。
イヴはこの世界に足りないものがあると考えた。彼女が読んだ本では、雨が降ると学校が遅刻して、パンを加えたまま人とぶつかると、ぶつかった2人は学校に遅刻する。イヴは全身を修道院のシスターさながらに包み、そして塀を歩いたが、誰もがプレインとプレインを当たり前のように眺めるだけである。
イヴはくじ引きをした。イヴはガラガラに手をかけながら、1等でも2等でもない、6等でも5等でも4等でもないものを期待した。
3等の玉は銀色だ。イヴはそれを無視した。
イヴは健康の為にうがいをしながらくじ引きを回すと、店員がベルをチリンチリンと鳴らした。
おめでとう。私はコスチュームプレイが好きなんだ。くじ引きの人の良さそうなおじさんが瞼をニュッとしたその時、
わっ
わっとした。
イヴは気づいたら飛行船の中にいた。飛行船のあちらこちらにはイヴの顔と持ち物が貼られた紙がある。今日の持ち物は別のものだった。イヴは気まぐれだが、愛用のポーチには人並みに親しみを持っていた。だが、イヴは気まぐれである以前に人間だった。イヴは飛行船のスイッチを入れた。スイッチを入れると飛行船は目に見えなくなる。恐らくどれだけ繊細なセンサーにも引っかからない。しかし、飛行船のエンジン音までは隠せなかった。エンジン音を特殊な装置で1000分の1にしたが、飛行船特有のペンキに消臭剤を書けたような匂いは、空飛ぶ警察犬に見抜かれてしまう危険性があった。
イヴはだがそこでひとまずの休息を得て、テレビのニュースチャンネルを適当に見流して、5回目の天気予報で眠りについた。
イヴは目を覚ました。イヴは疲れていた。イヴが苦手な物はブロッコリーと作り笑顔だ。イヴは以前、多くのマスコミにマイク代わりにブロッコリーを突きつけられた時、ショックで気絶してしまったことがある。気を失った後は周りのみんなの介抱もあって快方に向かったが、それでもあの事件は落ち着かないイヴの精神に消えない楔を更に打ち付けた。
イヴが目をつぶると、イヴが目をつぶるだけの時間があることになる。イヴはああ、と気づいた。イヴはいい家で育っている。築何十年の、家賃何億円の家だ。
イヴは倒れそうになった。イヴが起き上がると、女の集団の1人が大丈夫ですかと尋ねてきた。
イヴはわがままではないが献身的でもない。無難にありがとうとたたむとツンとした顔でそそくさと立ち去った。
イヴは立ち幅跳びのことを思い出した。イヴは両親がこっそり開発した超跳躍君1224号を知らずに履いて、自己ベストを記録したことがあった。その日の夕食は寿司だった。イヴは初めて子供の皿でない寿司を食べた。
イヴは降った雪で巻物を作ると、ココロの中で涙を流す振りをながら抱きしめた。
こういうこと、こういうことなんだろう。イヴは断片的な記憶から、雪で出来た巻物を持ち帰ろうとして、やっぱり壁に投げつけた。雪は崩れてバラバラに伸びながら飛んだ。
ああ
としていると、婚約者に出会った。
彼はイヴの姿を見ると滅多に人の来ない廃工場の場所を教えた。
イヴは尋ねた、今日は何の日か知ってる?と
彼は答えた、もうそろそろ年賀状を出さないと元旦に届かないですマドモアゼル。
イヴは彼にキスをした。
後書き
最後は無理矢理ハッピーエンドにしました。
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