Blue Rose
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第三十五話 欧州の美その五
「法皇はな」
「もっと酷いわよね」
「無茶苦茶だったんだよな」
「そう思うわ、私も」
「けれどその法皇が芸術の保護者だったりして」
「その辺りの事情はね」
「ややこしいな」
一概に善悪とは言えない、腐敗している者が芸術を育み清廉な者が芸術を破壊する。このことについてだ。
二人は思うことがあった、そんな話をしつつ芸術品を観て回ったが。
龍馬は観て回りつつだ、こうも言った。
「絵が多いな」
「この美術館はね」
「ああ、全体的にな」
「そうした傾向なのね」
「彫刻はな」
こちらの芸術品はというと。
「あまりないな」
「絵が多くて」
「そうした美術館なのか」
「ここの学芸員さんの好みかしら」
首を傾げさせてだ、優花は言った。
「それでね」
「絵が多いんだな」
「全体的にね」
「絵が好きな人には嬉しいな」
「そうよね」
「じゃあ御前にとってな」
美術の中で絵が好きな優花に対して言った。
「いい場所だな」
「楽しめてるわ」
「それはいいな」
「ええ、何か観ていると」
美術館の中を回りつつだ。
「幸せな気持ちになれるわ」
「そうか、じゃあここに来てよかったな」
「そうね、じゃあ美術館の後は」
「お昼だな」
「イタリア料理ね」
「それ食いに行こうな」
あらためて優花に言った。
「パスタとかな」
「パスタね」
「後はな」
「コース?」
「そうだよ、そのパスタもな」
イタリア料理の代名詞の一つとなっているこの料理についてだ。
「スープ扱いで」
「そうそう、パスタは欧州じゃね」
もっと言うとイタリアではだ。
「メインじゃなくて」
「スープみたいなものなんだよ」
「だからメインの前で出るのよね」
「日本じゃうどんとかお蕎麦とかな」
「そんな感じだけれど」
麺類として食べられている、日本の感覚では。
「あちらではスープなのよね」
「そうなんだよな」
「じゃあそのパスタも」
「食べに行こうな」
「二人で」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「いや、今あらためて思ったけれどな」
笑いながらだ、龍馬は優花に話した。
「こうして一緒に酒飲んで宮殿とか美術館回って昼食も摂って」
「そうしていたら」
「デートだよな」
「完全にそうね」
優花もくすりと笑って龍馬に応えた。
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