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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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ピンチとチャンス

 
前書き
会社の忘年会でお肉当たったぞ~!!

シリル「また太っちゃうね!!」

いやいや、言うほど増えてないし!! 

 
第三者side

白い雪が吹き荒れる極寒の地。その場所で向き合っている青年と少年。

「「・・・」」

互いに敵を見据え、一切の隙を見せない。そのそばでは猫耳を生やしたオレンジ色の髪をした少年がせっせと雪を盛っており、まるでそれぞれが別世界にいるようである。

「ハァッ!!」

最初に動いたのは長髪の、顔に模様が描かれている男。彼は腕を上に突き上げるようにすると、レオンの足元から光が放出される。

封印の氷地獄(コキュートス)

それを見た氷の神は避けようとは一切しない。平然とした姿のまま腕を横に振るうと、地面から打ち出されようとしている強大なエネルギーの塊をあっさりと凍らせる。

「パワーはそれなりにあるようだな」
「その辺には自信があるよ」

激しくぶつかり合うような戦闘ではなく、まだ相手の実力を探っている状態の二人。両者ともに仕掛けるタイミングを探っているのか、なかなか動きを見せない。

(向こうは冷気耐性があるのか?ないならしびれを切らして突っ込んできそうなもんだけど・・・)

敵に隙がないため迂闊に動けず、そんなことを考えていることしかできない。自分も吐く息が白く、気温が低いのは分かりきっているが、寒さには耐性があるためギリギリまで状況を伺うことができる。

「・・・」

しかし、一方の相手にも動きがないことに不思議を感じずにはいられない。使っていた魔法が氷属性ではなかったように少年は感じたため、この状況下で仕掛けてこないメリットを把握できないのだ。

「えっほ、えっほ」

静かな駆け引きが続けられるその脇で、どんどん雪を積み上げていきかまくらの土台を作っているラウルの足音だけが響き渡る。どちらが先に集中を切るか、そこが勝負の鍵を握っていた。




















ウェンディside

私とサクラが肩車しても全然届きそうにないほど大きな体をした男性を見上げ、いつでも動き出せるようにしておきます。エルフマンさんを彷彿させる彼は、自身よりもさらに巨大なカマをガッシリと掴みこちらを見下ろします。

失われた魔法(ロストマジック)の天空魔法にオーソドックスな魔法陣使用型か」
「「!!」」

すると、私たちを見据えた男性はそう言います。まさかさっきまでのわずかな時間で私たちの魔法を見極めたってことですか?すごい観察力です。

「治癒力はいいものを持っているが、それは自分にかけることはできるのか?」

ガッシリと握られたカマを横に倒していく彼を見て、攻撃が来ると直感的に感じます。それに対抗しようと構えを取りますが・・・

ザシュッ

「え・・・」

私の左腕から血が飛び散りました。

「ウェンディさん!!」

何が起きたかわからず斬られた箇所を抑えて顔を歪める。イネスさんの方を向くと、彼はカマを担ぎ直しているところで、私たちは驚愕することしかできません。

「早いですね、あの人」
「うん。全然見えなかったよ」

意識していたはずなのに、気が付いたら攻撃を受けていました。それも、予想外のところからではなく真っ正面からの攻撃だったので、相手の速さがどれだけすごいものか簡単に理解できます。

「見た目のわりにすごいですね!!」
「おい、聞こえてるぞ」

なぜか嬉しそうな表情で敵を見ているサクラを見て苦笑いするわたしとイネスさん。無邪気というか、ノー天気というか・・・

「でも大丈夫です!!私も速くなりましたから!!」

彼女はそう言うと腕を激しく振るって魔法陣を書き上げていきます。シリルとトレーニングしたこともあり、あっという間にそれを書き上げたらしく、腕を止めたところで周りに文字が浮き上がってきました。

「ほう」
「いっけぇ!!」

それを見て感心したように声を漏らした敵。サクラは彼に向かって腕を押し出すと、魔法陣から無数の武器が放出されました。

「フンッ」

全方面からの攻撃にどのように対処するのかと見ていると、イネスさんは重たそうな武器を軽々と持ち上げ、やみくもに振り回し始めます。

(いや、ちゃんと武器を的確に壊しているの?)

適当に振るっているのかと思っていましたが、どのスイングも計算されているようで無数の武器が次から次へと叩き落とされていきます。

「こんなところか」

やがて地面にカマを突き刺し一つ息を付く目の前の男性。その周りには落とされた武器が飛び散っており、しばらくすると行き先を失った無数の武具は消滅する。

「ムムム・・・動きが良すぎる・・・」

あれだけの攻撃を凌いでも息一つ乱れることのない敵には驚愕するしかありません。彼は首をコキコキと鳴らし、重たい武器を持ち上げ槍のように構えます。

「サクラ!!来るよ!!」
「はい!!」

距離が詰まっているとあの武器の威力の餌食になってしまう。でも、あれなら少し離れれば届くことはないんじゃ・・・

ダンッ

そう思っていると、彼は地面を強く蹴り一瞬のうちに間合いを詰めてきました。

「フンッ」
「きゃあああああああ!!」

目と鼻の先にやってきた彼の武器に凪ぎ払われる。運良く刃の直撃は免れましたけど、それでもこの威力。私は近くの木々に飛ばされてしまいました。

「このっ!!」

文字が少なめの魔法陣で速度を重視したサクラ。彼女は私に攻撃して後ろがガラ空きの相手の背後に回り込み攻めに出ます。

「フッ!!」

しかし、彼はそれを読んでいたらしく、振り切ったばかりのカマを背中を守るように腕だけで後ろに突き刺します。それにより炎の魔法を放ったサクラのそれは、容易く防がれてしまいました。

「俺は一対多でも一対一でも戦えるように指導を受けている。そんな戦いでは、俺には勝てない」

感情を高ぶらせることなく淡々と言葉を発する彼に、背中を流れる冷たいものが感じます。この人、私たちより遥かに戦い慣れてる・・・!!

















シェリアside

「天神の・・・怒号!!」

空気を吸い込み一気に放出させる。一直線に迫ってくる黒い風を前に、坊主の彼はジャンプで飛び越える。

「甘いわ!!」
「!!」

しかし、それは恐らく悪手となるでしょう。体の自由が聞かない空中。そこに自ら飛び込んできた敵に突撃するのは、(エーラ)を持った白髪の少女。

「ハァッ!!」

体を一回転させて飛び蹴りを打ち込もうとするシャルル。これを逃げることができるのは、彼女と同じく(エーラ)を持つ者か、よほどの身体能力がある人だけ・・・

「よっ」
「え?」

そう思っていると、彼はシャルルの突き出した足に手をかけ、二段ジャンプのような形で彼女を飛び越える。

「墜ちなよ」

それも、下になったシャルルの腹部に拳を入れ、あたしの攻撃へと突き落とすおまけつきで。

「きゃあああああああ!!」
「シャルル!!」

放っていたブレスをやめてすぐさま彼女に駆け寄る。敵は勢い余ったようで、近付いてくるあたしも飛び越え後方へと着地していた。

「ごめんシャルル!!大丈夫!!」
「えぇ・・・なんとか・・・」

口から流れる血液を拭いながら、肩を掴んでゆっくりと立ち上がる少女。直撃したように見えたけど、中心じゃなくて端の部分だったからそこまでのダメージはなかったのかも。

「仲間割れか?面白いな」
「あんたのせいでしょう!!」

決してシャルルを狙って攻撃したわけではない。彼の機転により彼女に攻撃が当たってしまっただけ。向こうもからかって挑発しているのはよくわかるんだけど、やっぱりそれに乗ってしまうところがある。

「天神の舞!!」

男を包み込むように台風のような風を巻き起こし、空へ打ち上げようとする。だけど、彼は横に体をずらしながら回避してあたしたちに突っ込んでくる。

(シャルルは動けない。ここで受け止める!!)

ケガをしたシャルルを治す暇も、彼女を抱えて避ける余裕もない。ここは敵の攻撃に対抗するしかない。そう腹を決めて魔力を集中させます。

「毒爪!!」

爪のような形をした武器で引っ掻くように切りかかってくる。たぶんトビーと同じような攻撃だと思うから、ガードして防ぐのはダメ。

「天神の北風(ボレアス)!!」

いつものように大きなモーションからじゃなく、できるだけ無駄を省いた形から魔法を繰り出す。

「判断はいいよ。けど・・・」

相手も突っ込んでいるから避けることはできないと思っていたけど、急ブレーキをかけてあたしの攻撃を回避する坊主頭。そいつはすでに間合いに入ってきており、対応することができない。

「喰らいな!!」
「きゃあ!!」

脇腹を切りつけられて思わず転倒する。でも、傷は全然深くない。これくらいなら何も問題――――

グラッ

「あれ?」

問題ないとすぐに起き上がろうとした時、視界が揺れて尻餅を付く。その間にも敵は迫ってきているのに、体が思うように動かない。

「オラ!!」
「あう!!」

避けることすらできずに再度攻撃を受けてしまい倒れる。すると、さっきよりも視界の揺れが大きくなっていることに気が付き、この原因が彼の爪にあることに気が付いた。

「何、その武器」
「あぁ、これか?」

余裕の表れなのか、ご丁寧に武器を見せて説明しようとする坊主頭。それには苛立ちを感じるけど、うまく動けなくてどうすることもできない。

「これは毒爪。その名の通り毒を塗り込んである武器だ。一回でも十分ダメージは与えられるが、塗れる毒にも限りがあるからな。お前くらいなら・・・あと二回もすれば仕留められるか?」

予想していた通り、トビーと同じ種類の攻撃だったらしく、警戒を薄くしていたことに悔いる。でも、トビーよりこの人の方が動きが戦い方がうまい。あたしたちの攻撃が、全然当たっていないんだもん。

「まぁ、その様子じゃこの戦いもおしまいかな?」

いまだに立ち上がれない私に跨がり、毒が塗られた爪を構えて見下ろしてくる。

「俺の名はマリキス。あの世で思い出しな」

そう言ってトドメを刺そうと腕を降り下ろしてきたマリキス。何とかしようと腕に魔力を集めようとしたけど、間に合うようには思えない。

「ヘディ~ング!!」
「なっ!!」

諦めかけたその時、横からものすごい速さで飛んできた何かが、マリキスの頭に自らの頭をぶつけて押し倒す。

「セシリー!!」
「たっだいま~!!」

その正体はシリルと一緒に村の偵察へと行ったはずのセシリー。予想外の救援に思わず笑みが溢れる。

「って!!あんたシリルは!?」

すると、そこでシャルルがあることに気が付きました。それは、彼女と一緒にいたはずのシリルがどこにもいないということです。もしかしてあたしたちが戦っていることに気が付いて二手に分かれて来てくれたのかな?

「シリルはアイーアの町であったカラスっていうのと戦ってるの~!!僕は隙を突いて逃げてきた~!!」

その時に偶然やられそうになっているあたしたちを見つけて助けてくれたらしい。でも、この間の変な武器を使うのもいるのか、これで三人は行動していることがわかるね。

「へぇ、カラスと当たっちまったのか。可哀想な奴もいたもんだ」

セシリーの頭突きを受けて赤くなっている頬を擦りながらそういう坊主。それを聞いて全員の視線が一斉にそちらに向く。

「可哀想って・・・どういうこと?」

彼の言葉が引っ掛かり、直接聞いてみる。それを聞いたマリキスは立ち上がってこちらを見据えながら答えます。

「今、ここにいるメンバーの中ならあいつが一番強いぜ。俺たちでも歯が立たないくらいな」
「「「!!」」」

それを聞いた瞬間顔の筋肉が強張ったのを感じる。こいつでも十分な実力があるのに、それよりも強い人なんて・・・シリル、大丈夫かな?

















第三者side

ドゴォン

仲間の心配をよそに戦っている少年と青年の戦うその場所では、大きな爆音が響いていた。

「水竜の(アギト)!!」

両手を握り合わせそれを降り下ろすシリル。対してカラスは自分の武器を一直線に少年に向けて投げ込み打ち返そうとする。

「いけ!!」

しかし、シリルはそれを足で弾くとそのまま飛び掛かるように技を仕掛ける。

「このっ!!」

降り下ろされた両腕を間一髪で防いだカラス。彼はそれを基点に攻め立てようと、新たな戦法を見せてくる。

「ほれ」
「ぐっ!!」

足でシリルの腹部を蹴り後方へと重心を動かせる。それを利用し一度投げた武器を引き寄せ後ろから攻撃を行う。

「ガッ!!」

バランスが崩れていたこともあり避けることができなかった少年は、前に腹から倒れる。

「これなら・・・どうだ!!」

倒れているシリルに蹴りを放とうと足を引く。その際、上に避けることができないようにと武器を二本合わせ前に突き出しておく。

「危なっ!!」

立ち上がると武器の餌食。かといって何もしないと蹴りを受けてしまう。どうしようか迷った末、少年は目の前に迫ってくる足を両手で真剣白羽取りのようにキャッチした。

「マジか!?」

足を取られて逃げられないカラスは、振り払おうとしても強くやるとバランスが崩れ転倒するため、なかなか振り払うことができない。

「こっちに来い!!」
「うおっ!!」

シリルもカラスの掴んだ足を引き寄せ転倒させる。今度は立場が入れ替り、シリルが上から見下ろす形になる。

「水竜の鉄拳!!」

先程のカラスとは異なり、上から打ち下ろす拳で対応しようとするシリル。だが、カラスは起き上がるのではなく、前転して攻撃を繰り出した少年の脇をすり抜けて事なきを得る。

「クソッ!!」

せっかくの好機で空振りに終わったことに感情を爆発させるシリル。だが、カラスもうまく攻められないことに苛立ち始めており、どちらも目付きが鋭くなってきていた。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
そろそろ、誰かのバトルに区切りをつけたいと思ってます。一番展開が進んでるのはシリルでしょうかね?まだストーリーも始まったばかりだから、もう少し引っ張ってもいいのかな? 
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