世界をめぐる、銀白の翼
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
11eyes ~それは友と明日のために~
黒騎士の襲撃から数時間後の夜
正確にはもう次の日になってから二時間後。
「づがれだ・・・・・」
「待つのもキツイなぁ」
皆が起きて「奴」が来るのを待ち構えていた。
といっても外でではなく、家の中でのんびりしながらだが。
と、そこから数分、美鈴がなにかを感じ取り、頭を上げる。
「敷地内に侵入者・・・・なんだ?・・・・酷く歪んでいる・・・・」
美鈴が敵の情報を読み取ったのを聞き、蒔風がノンビリとお茶を飲みながら話しかける。
「それ以上読み取ると魂とか精神とかそんなんが壊れるからやめときなー」
「こいつが・・・「奴」!?まずい、皆、戦闘に・・・」
「まあ落ち着け、な?」
蒔風がそういうと同時に、邸宅を囲む林の中から轟音と
(のああああああああああああ!!!!??)
誰かの悲鳴が聞こえてきた。
「・・・・え?」
「さっき見回った時にトラップ仕掛けた。こいつは凄いな。流石トラップマスターだ」
ドゴンバガンと轟音が響く中、蒔風達はのんびりと邸宅を出る。
「駆、君にはこの剣を渡しておく」
そう言って美鈴が駆に草壁五宝の一本・雷切を渡す。
「どうやら君が使った方が相性がいいらしい。これは君に渡そう」
「いいんですか?これって・・・・」
「確かに草壁五宝は草壁家の物だ。だが、あの最終戦ですべて砕けた。ここにあるのは菊理君の力で戻った物だから、それを私がだれに与えても問題はあるまい?」
「・・・・ありがたく、お借りします」
そうやって準備ができたところで、「奴」ちょうど林から出てきた。
「はぁはぁはぁ・・・・・」
「どうだった?」
「死ぬわ!!いやまあ余裕ちゃんでしたけど!?」
「無茶すんな」
「いやマジだって。体力だってまだこんなにあるしなッッ!!」
「奴」が飛び出す。
蒔風がその拳を受け止め、上空に放る。
「奴」が空中で体勢を整えながら蒔風に波動砲を撃ち、爆発して煙で包む。
その煙の中から鏃(やじり)が先端についた鎖が伸び、「奴」の四肢を貫き巻き付いてきた。
「ぬがっ!?ぬぬ・・・・アブラクサスか!!」
煙の中から天使が飛びだし、「奴」の身体を拘束する。
だがパワーにおいて格段に「奴」の方が上だ。
ギリギリと鎖が悲鳴を上げる。
しかし、確かに「奴」の動きは止まり、最初からそれが狙いだった。
「おおおォォォォォォおおおッッ!!」
賢久の指の先端に火の玉が圧縮されていく。
その数は三つ。
ビー玉程度まで凝縮された超圧縮の火炎が、叫び声と共に放たれる!
「ローゲ・・・フィンガー!!!」
ゴゴォ!!!
三つの火炎玉が「奴」に命中し巨大な爆発を起こして、蒔風たちの肌をチリチリと熱した。
「すっ・・・・・ご」
「やったか!?」
煙の中から「奴」が落ち、アブラクサスが再び鎖を伸ばす。
だが「奴」はそれを避けて掴み、ブチブチと引きちぎった。
その衝撃に菊理が小さな悲鳴を上げてアブラクサスを下がらせる。
「ったく・・・・蒔風の獄炎弾レベルだぞ・・・・」
そういう「奴」の身体はユラユラと霧を吹き出している。
かなりのダメージだったようで、その息も荒い。
「はっ・・・ははは!!どうした!?・・・・まともな攻撃できるのは田島賢久だけか!?」
「それは・・・どうかな!?」
ゴゴゴゴゴゴッ!!!
美鈴が人型に切られた紙を飛ばす。
それは力の込められた式神であり、彼女の意志に呼応して、炎を生み出し、「奴」を襲う。
「千歳(ちとせ)の儔(ともがら)、火車切広光(かしゃぎりひろみつ)!!!」
その隙に草壁五宝・火車切広光を術で呼び出し、その剣身に力を込めて切りかかる。
「護身破敵とともに、禍災を除かむることを請う―――神隠す十拳(とつか)の如く火産霊(ほのむす)び、火車来々、焔羅に送られん・・・・・」
美鈴の詠唱。
それに伴い、火車切の刀身が赤く灯り、高温の刃となって「奴」に迫る。
「壱の閃!!!」
轟ッ!
「弐の閃ッ!!!」
ギキィ!!!
「参の祓!!!」
ガァン!!!!!
高温斬撃による三連撃。
一撃一撃が必殺級で、しかもその威力は段階で気に上がっていく。
だがしかし、それだけでとれるほど「奴」は甘くない。
「な・・に・・・」
「なかなか。だがありきたりだな。フゥッ!!」
「奴」の気合とともに、足元から黒き波動が噴き出し、美鈴を吹き飛ばした。
そして倒れた彼女に向かって剣を抜き、串刺しにしようと突進する。
だが
「させるか!」
駆が劫の目による情報で先読みし、「奴」の攻撃を弾いていた。
無論、駆に「奴」を止めるだけの力はない。
ないのだが
「先読みの力・・・未来を見る目か。しかも俺の一撃を自分の力の範疇でいなすことのできる大民具、角度まで導き出すか・・・厄介な。でも」
ズォッ・・・・・!!!!!
「ならば、見える恐怖を知れ」
その瞬間、駆の右目が光り、未来(さき)が見えた。
一瞬にして駆を、「奴」の腕が分身したように迫り、突き貫こうとする映像だ。
「あ・・・ぐっ!!!!」
駆はよけようとするが、背後には美鈴がいる。
さらに言えば、駆の動きよりも早く、「奴」の腕が到達する。
逃げられない――――
「奴」の攻撃が、駆のあらゆる逃げ道をふさいだ。
そしてその映像通りのモーションを「奴」が起こし・・・・
ガシュッ!!!!
蒔風が「奴」に殴りかかる形で、それを止めていた。
狙われた脇に魔導八天の内の二本を出し、剣の面で受けたものの、痛みに顔をしかめる「奴」。
「はっ!!!!」
そこに雪子が突っ込み、「奴」に逆手に持った大型ナイフで斬りかかる。
「奴」は蒔風を蹴り飛ばし、雪子の対応に入った。
と同時に、蒔風のほうにガードで出していた剣を二本とも蒔風のほうに放る。
蒔風の額に冷や汗が流れる。
「奴」が蒔風に残したこの件は、奴の召喚獣が刻まれたもので――――
「ケルベロス!!迦桜羅!!!やっとけ!!!」
「やろぉ至近距離でうぉおおお!!?」
「んだよあのバケモン!?」
突如として現れた二体の魔獣に、賢久が驚きの声を上げる。
だが蒔風がその賢久に向かって怒声を上げた。
「賢久ァ!!!!雪子を一人にすんな!!!!全力でフォローしろ!!テメェの火力があれば、「奴」に応対できる!!」
「お、おしわかった!っとオラオラオラァ!!!オレの雪子に手ぇ出すんじゃねぇ!!!」
「いいぞ・・・よし、迦桜羅はオレがやる!!駆は他の者と一緒にケルベロスをおとせ!!!!」
「あ、あれを!?」
「栞君!!できるか!?」
「行けます」
「いい返事だ。蹴散らせ!!!」
ここに、三組の対戦が組まれる。
蒔風が銀白の翼を広げて迦桜羅に空中戦を仕掛け、駆たちは地上でケルベロスの相手を始めた。
ガルォォォッラァァァァァァァァァ!!!!!!!
ドンドンドン!!!!!
ケルベロスが口から三連の火球を打ち出す。
駆は既にそれを先読みし、ゆかに指示を出していた。
「こないでぇ!!!」
ゴァッ・・・パァン!!!!!
ゆかが手を突き出し、拒絶の言葉を放つと同時に、その火球は一瞬で消滅してしまう。
さらにケルベロスの右の首をアブラクサスが鎖で締め上げ、左の首を美鈴が火車切で斬りおとしていた。
ドチャッ、と首が落ち、それでもその目玉はギョロつき、駆を確認して首だけで突っ込んでいった。
「邪魔」
バァン!!!!!
その首の特攻もむなしく、栞による魔術攻撃に消し飛んでしまう。
だが残った首が一個だろうと二個だろうと、ケルベロスにとっては問題ではない。
与えられた使命を全うするために、その首の二本や三本など、惜しくはないと言わんばかりに、駆に向かって突進する。
それに向かって駆けるが走り出す。
狙うはすでに見えている、ケルベロスが到達するその場所!!!
ドシュッ!!!!
ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
飛びだし、アブラクサスによってケルベロスの目の前まで投げだされた駆が、大きな眼球に雷切を突き刺し、雷を放出した。
腕まで突っ込んで、雷切の切っ先は脳にまで達し、電撃によって神経が焼ききれる。
ケルベロスの巨体が動きを止め、消滅を始める。
駆がガッツポーズをとるが、そこに雪子の声が響く。
「駆先輩!!!危ない!!!!」
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少し戻って蒔風。
迦桜羅と空中にて激しい打ち合いをし、幾重にも交差し、その翼が輝きを増す。
キュロロロロロロロオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
迦桜羅が相手をしているのはあの世界最強だ。出し惜しみをしている場合ではない。
全身を炎へと変え、翼で身を包んで一本の槍のようになって蒔風に向かって飛び立つ!!!
「いいぜ、相手になろう。玄武盾!!!!」
バン!!!
特攻を決めたカルタに対し、蒔風も己の全武器最硬を誇る玄武盾を構え、それを迎え撃つ。
回転を加えた突進を真っ向から玄武盾で受け止める蒔風。
接点から火花が散り、地上に降り注ぐ。
そしてその攻撃を受けきり、背後に流す。
だが迦桜羅は止まらない。
Uターンして、蒔風に向かって第二撃だといわんばかりに再突進してくる。
「行くぞ玄武!!!」
叫び、蒔風が玄武盾を迦桜羅に突き出した。
すると盾に刻まれた甲羅の模様が、まるで花びらのようにグパァ、と開く。
玄武盾はただの盾ではない。
その中に敵の攻撃エネルギーを貯蔵し、一気に放出することが可能だ。
そう、それはつまり、最初の迦桜羅の攻撃の威力が、そのままエネルギーとして放出されるということ。
で、あればその威力が互角が妥当なところだ。
だが、蒔風の力が乗った分、そちらの方が上であるのは当然で――――
ドッ!!!ジュゴァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
迦桜羅の身体が消し飛び、夜空に一筋の光線が伸びて行った。
「さてと駆は・・・・ッオ!?」
自身の戦いを終え、蒔風が駆たちのほうへと目をやる。
すると、ケルベロスを撃破した駆に向かって、「奴」が剣の一本をブン投げていて
「ブースト、オンッ!!!!」
させるかと舞あk是が超高速移動で駆けた。
駆の背中に迫るは「奴」の投げた魔導八天のうちの一本。
それを止めるべく、蒔風が駆の目の前に飛び込んで・・・・・
ドシュッ!!!!!
その手の平で受け止めた。
己の手を貫いたそれを抜いて投げ捨て、駆に蒔風が振り向き言った。
「よくやった!!」
「なんとかな!」
そんな言葉を交わしていると、賢久が奴に火球を投げた。
するとそれが「奴」の目の前で一気に大きく広がり、巨大な日のドームは「奴」を覆いつくしてしまった。
だが、そうなったのはモノの数秒。
「奴」はその火炎を腕を振ってかき集め、雪子と賢久に投げ返す。
だが雪子はその場で瞬時に回復し、賢久は発火能力者だ。そもそも炎はあまり効かない。
一進一退の攻防に、「奴」が忌々しそうな声を出して駆に叫んだ。
「だぁ!!うっとおしい!!!!なんなんだお前らは!!!チマチマチマチマと!!!!」
「オレたちは・・・オレたちはただ、約束をしただけだ!!!」
「約束?なんのだよ。蒔風とか?」
「違う。そうじゃない。オレたちがした約束、それは・・・・・」
「行くぞ、駆!!!」
「「「「「「「友と、明日のために、だ!!!!」」」」」」」
【11eyes ~Tumi to Batu to Tugunai no Shoujo~】-WORLD LINK- ~WEPON~!!
WORLD LINKが発動し、皆の力の源、「虚無の魔石の欠片」が駆に集まっていく。
そしてそれは雷切に注ぎ込まれ、途方もない電撃を放ちながら伸びてゆく!!!!!
「準備完了だ」
「させてなるかよ!!!!」
「奴」が駆を止めようと走りだす。
だが、蒔風がそれを許さない。
サギギギギギギギッ!!!!
「奴」の身体を剣で突き刺し、地面に縫いとめる。
「奴」がそれに苦悶し、怨嗟の声を上げた。
「蒔風ェェェエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!」
「オレだって何回貫かれたと思ってんだ。たまには清算させろ」
【11eyes ~Tumi to Batu to Tugunai no Shoujo~】-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~!!
駆の剣に、さらに蒔風の力までもが乗り、その太さを増していく!!!
「消 え ろォォォォォォおオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「なっぐ・・・ガアアアアアアアアアアアルアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
ドシッ!!!ズガァ!!!!!
駆がそれを振り下ろし、「奴」を叩っ切る。
その衝撃と斬撃に、「奴」の身体が霧散して、夜の闇に消えて行った。
「ふぅふぅふぅ・・・・・はぁ~~~~」
「終わった・・・・のか?・・・あ・・・・・」
それが終わると、駆の身体から「虚無の魔石の欠片」が再び皆の身体に戻った。
「今回のWORLD LINKはさすがに単発か。まぁ、あれが永続されたらきついけどな」
とりあえず、戦いは終わった。
戦闘開始から二十二分。
駆達にとってはかなりの激闘。
蒔風にとっては儲けた戦闘だった。
「まあ軽い怪我で勝てた・・・か」
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「そんなこんなで、行かせていただきます」
「手の調子は?」
「問題ないよ。ほれ、ニギニギ」
「じゃあ・・・またな」
「会えることはないと思うけどな。また」
[Gate Open---11eyes ~Tumi to Batu to Tugunai no Shoujo~]
戦いも終わり、けがをある程度治療してもらってすぐ。
蒔風がゲートをくぐって世界から出て行く。
それを見送って彼らは日常に戻る。
平和な日々の続く日々へ。
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毎週金曜日、川神市のとある廃ビルで、金曜集会と呼ばれる会合を開く7人の若者たち。
「モモ先輩、何か面白いこと無いっすか?」
「あったらもうやっている」
「そうだよねーー」
「何か面白いこと無いですかねぇ・・・・・」
この者たちは知らない。
面白いどころか、大変な事が来ると言うことを。
四人の男と、五人の少女。
強いのはむしろ女性陣。
そろいもそろって武士娘!!!
次の世界は荒れそうである。
to be continued
後書き
【11eyes -罪と罰と償いの少女-】
構成:"フォルス"50%
"LOND"50%
最主要人物:皐月駆
-WORLD LINK- ~WEPON~:すべての欠片の力を駆に集結
-WORLD LINK- ~FINAL ATTACK~:蒔風の力も上乗せし、斬り倒す
アリス
「次回、いきなり果たし状!?」
ではまた次回
ここが勝負 勝負の時なのだ
だから真剣(マジ)で 立ち向かえ乙女
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