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提督はBarにいる。

作者:ごません
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出撃・礼号作戦!~発令、捷四号作戦!~

 エラいことになった。イタリアからの新型艦娘が深海に強奪される。前代未聞の事態だったが、ここは動くしかない。

「ジィさん、敵の動きは?」

「今探らせておる。恐らくは奪った重巡の深海棲艦化……それが目的じゃろうて。」

 今までも何体か姫級や鬼級の個体の中には、艦娘によく似た姿の者が確認されている。妖精さんの見解では、同じ艦魂が核となっているから似通った姿形をしているのではないか?との事だった。

 愛国心や忠義、そういった正の感情の部分が艦娘に。

 怒りや悲しみ、苦しみ等の負の感情の部分が深海棲艦に。

 まるでコインの裏表のように、艦娘と深海棲艦は生まれているのではないか?と。事実、どこかのブラックな鎮守府の中では艦娘を深海棲艦に変化させる、なんてマッドな研究をしている馬鹿な提督もいたらしい。勿論、既に解体されているらしいが。同じような事を、それも最新鋭の艦娘にするとしたらーー?考えたくもねぇ話だ。

 やがて一時間もすれば幌筵泊地から飛ばしていた偵察機からの情報も集まりはじめる。それを基にして海図を書き、戦略を練る。どうやらZaraを拐った艦隊は足を止め、一定のポイントに停泊しているらしい。

「さて、問題は作成海域が広すぎる事じゃ。」

 書き上がった図面を眺めながら、元帥のジィさんが唸る。確かに、この泊地をスタート地点とするならば、作戦海域が広すぎる。

「なぁ、ここの小島使えるんじゃねぇか?」

 海図を眺めながら俺が指差したのはこの泊地から東北東に進んだ先にある名もないような小島。報告によれば駆逐棲姫が警戒線を張っているらしいが、一度突破して橋頭堡を築ければ、そこをスタート地点として追撃できる。礼号作戦でウチが使った手だ。

「成る程、現状ではそれが最善の手じゃろうて。よしわかった、その輸送作戦は横須賀鎮守府の奴にやらせる。お前さんはブルネイから補充の艦娘を呼び寄せて、作戦に備えてくれ。」

 そう言うと慌ただしく電話をかけ始めるジィさんと三笠教官。さぁて、俺も電話しますかね。




『はい、こちらブルネイ鎮守府……あぁ、提督か。どうした?』

 電話口に出たのは武蔵。

「おぉ、ちと緊急事態でな。今から言う面子を戦闘配備で輸送機に載せてこっちに送ってくれ。面子は……」

『面子は了解した。で?場所はどこだ?横須賀だろう?』

「幌筵だ。」

『幌筵?なんでまたそんな北の外れに……』

「説明は後だ。とにかく急ぎだ、頼んだぞ。」

 俺はそれだけ言うと返答も待たずに電話を切る。そして間髪入れず、別の所に電話をかける。

「あぁ、クルツか?俺だ。昨日言ってた例のアレ、こっちに回してくれ。……そうだ、実戦で使ってテストする。無茶じゃねぇよ、何とかしろよ!任せたぞ、じゃあな。」

 これで準備は整った。後はメンバーが揃うのを待つばかり。その間に横須賀の最精鋭部隊なら見事に橋頭堡を築くだろう。俺達の出番はその後だ。とにかく今は焦らずに待つ事、それが重要だ。




 ただ待っているだけ、というのも暇だ。久し振りにジィさんと一局、と思ったが横須賀鎮守府の提督への指示で忙しそうだ。さてどうしたものか……。そういえば、ゴタゴタのせいで皆昼飯を摂ってない。今出来る事をやるとするか。

「なぁ、幌筵の提督って君か?」

「はっ!なんでありましょうか大将殿!」

 階級章を見ると階級は大佐。目上の奴に話しかけられたら緊張するのは解るが、ガチガチになりすぎだ。

「いや、別に取って食おうってワケじゃあねぇさ。作戦開始まで暇だしさぁ、ちょっと料理でもしようかなぁと思ってね。」

 要するに、道具と食材を提供してもらえないかという話だ。

「ほぅ、久し振りにお前さんの飯が食えるのか?悪くないのぅ。……すまんが、頼まれてくれるか?」

 元帥のジィさん、それを聞きつけて寄ってきた。相変わらずの地獄耳だな。目の前の大佐君がビビって固まっちまうだろうに。

「ひゃ、ひゃいっ!ただ今準備を……!」

 ほらぁ、狼狽えてたじゃねぇか明らかに。しばらく待っていると材料や食材を抱えた艦娘達が戻ってきた。たまには屋外で料理ってのも、風情があって良いじゃねぇか。

「さて、冬の北海道沖だ。間違いなく寒いだろうから煮込みかスープだな。」

 そう言って作り始めようとしたら、

「わ、私達もお手伝いします!」

「あ~、こっちはいいよ。それよりさ、中の厨房とかでおにぎりとか準備してくれ。作戦指揮とかしながら食べやすいようにさ。」

「は、はいっ!」

 俺の気晴らしにやるのに、手伝われちゃ敵わんよ。さてと、まずは……お、じゃがいもに玉ねぎ。さすがは北海道、野菜が豊富だな。んじゃこれでいくか。

 まずはじゃがいもにフランクフルト。大きめゴロゴロになるようにカットして、鍋にバターとオリーブオイルを熱して炒める。じゃがいもは軽く蒸かしてからのほうが火の通りが早くて時間短縮になるんだけどな、今日は生から炒めていく。フランクフルトにもいい感じの焼き目が付いたら食材が被る位の水。そこに砂抜きしたアサリと顆粒のブイヨンを足して更に煮込む。具材に火が通ったら牛乳、塩、胡椒で味を整えれば「お手軽クラムチャウダー風スープ」の完成だ。

 お次は玉ねぎと白菜を使ったスープだな。白菜と玉ねぎは適当に刻んで、バターとサラダ油で炒め、サッと火が通ったらこっちも具材が被る位の水。少し煮立たせて白菜と玉ねぎが透き通って来たらここに鍋キューブの鶏だし・うま塩味を入れて更に煮込む。鍋キューブが無ければ塩と鶏ガラスープの素、それに昆布茶入れれば代用できるぞ。野菜がクタクタになったらミキサーにかけてペースト状にする。それをもう一度鍋にあけて、温めながら生クリーム適量。塩で味を整えれば「白菜のポタージュスープ」の出来上がりだ。




 お次は煮込みだな。大根と豚バラブロックを使って1品。大根は皮を剥いてざく切り。豚バラブロックも食べやすい大きさにカット。鍋にサラダ油を軽くひいて、大根から炒める。豚バラから炒めると大根が油を吸いすぎるからな。大根が少し透き通って来たら豚バラを入れ、カリカリの焼き目が付くように焼いていく。余分な油をキッチンペーパーで吸い取ったら、和風だしと臭み消しの意味合いも込めて多めの酒、具材が寂しかったからウズラの卵を入れたら味付け。使うのは醤油と粒マスタード。割合としては醤油が2でマスタードが1。味付けをしたら落し蓋をして弱火でコトコト。大根に味が染みたら「大根と豚バラの醤油マスタード煮」の完成だ。

 お次も豚肉で一品。シチュー用の豚肉に塩コショウで下味を付けて小麦粉をまぶす。合わせる野菜は玉ねぎ、牛蒡、エリンギ。食べやすいサイズにスライスしたらバターとサラダ油で炒める。豚肉は別に炒めて後で加えて、炒まったら水をヒタヒタになる位まで。アクを取りつつ煮込んだら、火を止めてS&Bの粉末フレークタイプのデミグラスソースを加えて再点火してひと煮立ち。デミグラスソースが無ければケチャップと中濃ソースで代用できるが、コクが今一つ。デミグラスソースが溶けたら「ポークシチュー」の完成だ。




「よっしゃ、出来たぞ~!」

 ちょうどいいタイミングでおにぎりもやって来た。腹が減っては戦は出来ぬ、腹拵えと行こうじゃないか。

「うまっ、うまっ!」

「流石に腕は落ちておらんのぅ。」

「ん~♪やっぱりdarlingの料理は最高ネー!」

 先程までの焦りが募っていた表情だらけだった場に、笑顔が零れ出す。根の詰めすぎは禁物だ。これで少しは解れただろ。 
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