提督はBarにいる。
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出撃・礼号作戦!~横須賀・大本営~
「ねぇねぇ提督さん、横須賀ってどんな街?アタシ初めてなんだよねぇ~♪」
「瑞鶴、提督は普段の激務でお疲れなんだから休ませて差し上げないと……」
え~、どうも提督です。只今俺と嫁艦's、それと観艦式に参加するメンバー一行は、大本営が準備した輸送機に乗って空の上、もう間もなく本土上空に入ろうとしてます。なんでこんな事になったかと言えば……
「はぁ!?観艦式ィ?」
『そうだ、イタリアから送られてきた新型の重巡のお披露目も兼ねてな。』
そんな通信が入ったのは集積地棲姫を撃破し、礼号作戦を完遂したと報告書を纏め、大本営に送って数時間後の昼下がり、今回の作戦はどうだったとかくっちゃべりながら、午後の茶会を楽しんでいる時だった。通信の相手は作戦開始を告げられたのと同じく軍令部の染嶋。どうやら俺への言伝て役か何かにされているらしい。
※俺の料理のお陰か、集積地棲姫は戦意高揚した艦隊にアッサリとやられてしまった模様。
「ま~た何でこんな時期に……。呉やらラバウルやらはまだ復旧してすらいねぇんだろ?」
『いや、呉以外の鎮守府は被害も小規模だったから復旧している。呉も今仮設だが鎮守府再建の工事中だ。』
「ま、それはいいや。……んで、何で俺に白羽の矢が立ったワケ?」
『それが……イタリア大使からのたっての希望でな。“是非とも参加する艦隊は、今回の侵攻作戦の司令官の艦隊に”ってな。』
成る程ねぇ、新型の情報は提供してやると言われてるし、国際情勢を鑑みるに友好国との関係悪化は避けたい、と。
『その上、今回の指名は元帥閣下の指名でもあるんだよ。』
「叔父貴……じゃなかった、元帥閣下が?」
『あぁ、それに迎えはもうやったって……』
そう言う染嶋の言葉を遮るように、上空から鈍いエンジン音が響いてきた。窓を眺めると、二式大艇が水面に滑らかなランディングをする所だった。あぁ、返事はYESかハイしかないんですね、わかります。
んで、手早く荷物を纏め、俺達は一路空の人となったワケよ。乗る時に席順をくじで決めて、瑞鶴が引いた時点でお察しだよな。留守は大和と武蔵に任せてある。…と言っても遠征と演習をこなす位のモンだから安心だが。
“間もなく『横須賀軍港』にランディングします。ベルトを締めて着陸に備えて下さい”
パイロットからの無線が機内に入る。初の本土にはしゃいでいる者、いつも通りの者、初の飛行機に恐怖している者……様々いるが、もう少しの辛抱だ。
「ふぅ。やっぱブルネイに比べると寒いな。」
大艇から降りて内火艇に乗り換え。ようやく地面に降りて第一声がこれだ。生まれは東北だが、やはり普段過ごしているブルネイが温暖な気候だと横須賀の冬ですら寒く感じる。
「わぁ~……ここが本土…ここが横須賀ですか!」
初の本土の土を踏んだ面子はキャイキャイとはしゃいでいる。
「私はテートクの付き添いで何回か来ましたけどネー。」
そう自慢げに語る金剛、それくらいにしとけ。加賀が弓引いてるから。今回連れ立って来たのは以下の面子。
《嫁艦's》
金剛・比叡・榛名・霧島・赤城・加賀・翔鶴・瑞鶴・長門
《観艦式参加メンバー》
高雄・愛宕・隼鷹・飛鷹・足柄・那智
一応観艦式の参加メンバーは急拵えだがちゃんとした理由がある。高雄と愛宕は観艦式への参加経験がある為に採用。隼鷹と飛鷹はまず間違いなく行われるであろう晩餐会でのドレスコードとか、立ち居振舞い関連で他の奴等のサポート役も兼ねて連れてきた。残りの二人は誰でも良かったんだが、本土に行くと聴いた途端に鼻息荒く足柄が、
「私も英国の観艦式に参加経験あるわよ!私を出さないなんてあり得ないわっ!」
と怒鳴り込んできた。……まぁ恐らくは本土のイケメンでも引っ掛けようって魂胆だろう。それで良いのか、熟れた狼……基い、餓えた狼よ。那智はそのお目付け役だ。
「ブルネイからはるばるとようこそお越し下さいました。」
埠頭には不釣り合いな黒塗りの高級車。どうやら出迎えらしい。
「いやいや、元帥閣下のご指名とあらば。」
社交辞令的な挨拶を交わし、車に分乗する。
「とりあえず、今日の予定は?」
「この後提督と秘書艦殿には元帥閣下と面会して頂きます。その後、20:00より観艦式に参加する艦娘を交えての晩餐会となっております。」
やっぱりな、連れてきて正解だったぜ隼鷹と飛鷹。……てか、パーティ用のドレスなんてあいつら持ってるのか?無ければ見繕わせねぇと。
手短な会話を済ませて後は車に揺られていく。戦争初期に焼き払われたこの街も、戦前の姿をほぼ取り戻しつつある。20分程走って車は大本営の敷地に入った。
「思ったよりも……小さいんですね?」
「まぁな。ここは殆ど事務方の詰所みたいなモンだ。ウチみたいな大規模設備は要らんのさ。」
赤城の質問に答えながら、簡単にではあるが解説しよう。
国内外を問わず、鎮守府は数多く存在している。その戦力を一極集中させては良い的だ。その為、『所属』は横須賀鎮守府でも『所在地』は静岡、なんて事例はザラにある。その中でもその地域の元締めのように機能している場所を示して『泊地』だとか『警備府』なんて呼び名が付けられている。今回の破壊工作で狙われたのも、この中枢部だな。かく言う俺もブルネイの元締め的な立場を仰せつかってはいるんだが
、何分めんどくせぇし半分以上は優秀な部下が処理してくれている。どうしても俺の採可が必要な物だけ俺に回ってくる様なシステムになっている。
「え~、今晩20:00より大本営主催の晩餐会が開かれる。軍人とは言えお前達艦娘は見目麗しい女性だ。ドレスコードは必要不可欠。」
「だから~、テートクのポケットマネーでドレスアップしてくるデース!」
俺達は元帥閣下のご機嫌伺いに行かないといけないからな、そう言って加賀にクレジットカードを預けた。
「集合は19:00だ!それまでは自由行動、羽目を外しすぎないようにな。以上、解散!」
俺に一瞬敬礼したかと思うと、脱兎の如く走っていきやがった。全く、現金な奴等め。
「さぁて、行きますか?」
「ンフフー、行きましょう!」
俺と金剛はそれを見送ると、腕を組んで本庁舎へと歩みを進めた。
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