提督はBarにいる。
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出撃・礼号作戦!~決戦、集積地棲姫!~
前書き
決戦とか言ってるのに何故か料理回である。
『こちら霞。作戦海域に到着したわ。』
鎮守府を出発して数時間、日も高くなって来た頃に霞からの入電。
「了解、作戦概要は伝えてある通りだ。北のルートを通りつつ、支援艦隊と連携して湾内へ突入。敵の揚陸地点に『巣』を形成し始めている棲姫を破砕せよ。俺の判断が必要な時はまた連絡を寄越せ。」
『了解。じゃ、一旦切るわね。』
ブツッ、という無線の電源を落とす音と共に、執務室に再び静寂が訪れる。夜を徹した輸送作業で未だに夢の中にいる艦娘も多いせいか、大規模作戦中とは思えない程、鎮守府の中は静まり返っている。それに直接現場に赴いて指揮を執っている訳ではないから俺が暇になってしまった。……さてさてどうしたものか。
「差し入れでも作るか。」
暫くの間、攻略部隊には物資を集めた前線基地に寝泊まりしてもらい、戦闘を継続するつもりだった。その為に睡眠施設や簡易の入渠ドックなんかも準備したが、問題は食事だ。一応食糧も運び込んではあるものの、保存性や栄養補給を優先して作られた不味いレーションでは(主に俺のせいで)舌の肥えた連中から不満が出かねない。そしてその不満は士気の低下に繋がって戦果にモロに影響する。指揮官としてはあるまじき思考かも知れんが、実際そうだから仕方無い。
「さて、何を作るかだな。火は起こせるから飯は炊ける……温めてすぐに食える煮込み料理とスープ……これでいこう。」
まずは野菜から。用意したのは大根と南瓜。大根は厚めに皮を剥き、厚い銀杏切りにカット。南瓜は食べやすい大きさの乱切り。大根はもうそのまま20分程下茹でを始めるが、南瓜は鍋に敷き詰めて塩を振り、30分程放置して塩を馴染ませる。水分が出てきた所で、南瓜の高さの半分位まで水を入れ、中弱火で落し蓋をして煮汁が無くなるまで煮る。その間に先に茹でていた大根が柔らかくなってきたので、ここで秘密兵器。投入するのはすっぽんスープ(缶入り)。プルタブ式の缶だから使いやすいし、丁寧にとられたスープだから旨味の大洪水だ。分量としては大根1/3本にすっぽんスープ1缶と白だし少々を加えて、弱火で更に20分。水溶き片栗粉で緩くとろみをつけたら大根は完成。南瓜の方も煮汁が無くなって竹串がスッと通る位まで柔らかくなった。
「よし、『南瓜の塩煮』と『すっぽんふろふき大根』完成……と。」
南瓜の塩煮は多めに作った。コイツを使ってもう2品、簡単な副菜を作ろうと思う。とは言っても潰しながら混ぜるだけ。ボウルの片方にはマヨネーズ適量マスタード少々、もう1つのボウルには市販のでいいから肉味噌を適量。これらをそれぞれ潰しながら混ぜてやれば、『簡単南瓜サラダ』と『南瓜肉味噌』の完成だ。南瓜の塩煮はシンプルでそのまま食っても美味いが、それをベースに色々な料理が作りやすい。冷凍も効くから大量に作って冷凍しておくのもオススメだ。
さ~て、お次は……
「て~とくさんっ♪何してるんですかぁ?」
「うおっ!?か、鹿島か。脅かすなよ……」
調理に集中していたからか、目の前に鹿島がいる事に気が付かなかった。というか、正直この娘苦手なんだよなぁ。龍田みたいに底が知れない『闇』が垣間見えるというか、何というか……。
「てーとくさん!?話、聞いてます?」
少し苛立った様子で鹿島が頬を膨らませている。
「あ、あぁ。すまんすまん、何の話だっけか?」
「もう!……だからぁ、鹿島がお手伝い出来る事。ありませんか?」
あぁ、手伝える事が無いか?って話か。聞くところによると鹿島はかなりの料理上手らしいからな。差し入れの調理補助を頼むか。
「助かるよ、今出撃メンバーに差し入れでも届けてやろうと思ってな。その手伝いを頼めるか?」
「もちろん♪じゃあ、急いでエプロン取ってきますね♪」
んじゃ、俺は鹿島が戻ってくる迄に進められる調理を進めていこう。
野菜の次は肉!ってなワケで、準備したのは豚のスペアリブと鶏の砂肝。スペアリブは500gでの計算で調味料の分量を載せておく。
スペアリブは鍋に水を張り、酒と塩を少々入れて30分程下茹で。その間に砂肝を半分に切り、銀皮(白くなってるトコね)をカット。後で別の料理にするから、銀皮は捨てないようにね。銀皮を外したら食べやすいように切り込みを入れて、下味を付ける為に塩・胡椒をしておく。
「お待たせしました~♪」
パタパタと戻ってきた鹿島はピンクでフリフリいっぱいのハート型エプロンを着ていた。
「どうです?可愛いでしょ?」
「いや、何というか……そういうの、マジで着る奴いるんだな……」
艦娘のエプロン姿って間宮に伊良湖(間宮は割烹着だが)、鳳翔に時雨、長門、後は金剛くらいしか見た事が無かった。そいつらも普通のエプロンだったから、こんなキャピキャピした感じのエプロンを着てるのを生で見たのは初だった。
「酷い!そんな言い方しなくても……」
そう言うと鹿島はクスン、クスンとしゃくりあげて泣き始めてしまった。
「いや、別に可愛くないとか言ってる訳じゃあ……」
慌ててフォローにはいる。実際のところ似合っているし可愛いとは思う。思うんだが、どうにもぶりっ子してる奴が着ていそうなイメージが拭えない。
「いや、似合ってる……と思うぞ?」
「ホントですか!?やったぁ、頑張ってお手伝いしますね♪」
どうやら機嫌は持ち直してくれたらしい。
「それで、私は何を手伝えば良いですか?」
「んじゃ、そろそろスペアリブの下茹でがOKなハズだから、合わせ調味料を作ってくれ。」
スペアリブ500gに対して醤油と酒を大さじ3ずつ、砂糖を大さじ2、コチュジャンを大さじ1弱入れて合わせ調味料は完成。スペアリブの鍋を空けて、スペアリブを一旦取り出したら、今度は鍋にごま油をひいてスペアリブに焼き目を付ける。
俺はその間に砂肝と合わせるマッシュルームをスライスする。砂肝とマッシュルームの分量は……まぁ適当だなw以前にも使ったセラミックの鍋に、砂肝とマッシュルーム、乾燥にんにくのスライスと鷹の爪、塩を入れてオリーブオイルをヒタヒタに。もうわかったよな?……そう、以前作ったアヒージョだ。今回はマッシュルームオンリーではなく砂肝も使う。中弱火で30分程コトコトと煮込めば完成だ。
「提督さん、スペアリブもいい感じですよ♪」
「よしよし。そこまで焼き目が付いたら水を300cc加えて少し煮込んで、その後で合わせ調味料を加えてくれ。」
「は~い♪……でもホント、提督さんってお料理上手ですよねぇ。」
「そうかぁ?俺よりも上手い奴なんて一杯いるし、艦娘それぞれの得意料理だと敵わない奴もいるぞ?大和のアイスとか、加賀の肉じゃがとか……。」
「へぇ~。…あ、因みに私はサンドイッチが得意なんですよ!」
「ほぅ。後で食ってみたいな。」
金剛の夫だからな、煩いぞ?俺は。アフタヌーンティーによく出されるから金剛もサンドイッチは得意料理だからな。
合わせ調味料を加えたら更にスライスした生姜を1片分。落し蓋をして、30分中弱火で煮込む。その後で蓋を取り、チンゲン菜を切らずに1枚ずつ剥がして1株分加え、5分位煮込む。チンゲン菜に火が通ったら完成。
「よし、『スペアリブのコチュジャン煮込み』と、『砂肝とマッシュルームのアヒージョ』完成……っと。」
さぁ、もう少し作ろうか。
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